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第63話 暗躍する者
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私の探索に引っかかる者は居なかった。それでも結界に対する攻勢はあったのでそれを確認して対象者を見つけられたのは御幸だったと思う。
対象者は5名も居た。今まで木山さんが無事だったのはご本人の強烈な意志による所が大きいと分かった。何せ不幸の呪いなんてものはご自身から無意識に発している【私は幸せ】オーラでかき消してしまうのだ。私も異世界でもみた事のない、初めて見るタイプの人だ。
私は四国に旅立つ前に対象者を減らそうと2人の人物に接触した。幸いにして赤坂署管轄内に住んでいた2人にはマサシの協力を得る事が出来た。午前中にマサシを訪ねてみると、1人は既に赤坂署の刑事課が目をつけていたようだ。
「フミくん、その手黒貴俊はうちの刑事課が張り付いてるんだ。強姦事件の加害者としてね。但し証拠が出ないんだよ…… 体液とかの。それに襲われた女性の証言により似顔絵を描いてるけど毎回毎回、何故か証言がちがってるんだ…… 手口からして間違いなく手黒の犯行の筈なんだけどね」
そう言ってマサシは悔しがっている。私はそれを聞いて恐らくは【生活魔法】の清潔と、【認識阻害】を悪用していると考えた。【認識阻害】は顔自体を曖昧にするパターンの他に、他人から見ると毎回ちがう顔を見せるパターンがある。そこで私はマサシに言った。
「多分だが、魔法と技能に目覚めていると思う。その手黒の能力を封じ込めてみよう」
「頼めるかな、フミくん。でもこれ以上の被害者は出したくないんだ」
「分かってる。封じ込めた後に私と一緒に後をつけてくれる刑事さんは居るかな? 現行犯逮捕出来るようにするよ」
「それは…… うーん…… ホントはダメなんだけど、僕が一緒に動くよ。フミくんの能力をあまり知られない方がいいからね。あ、心配はしなくていいよ、これでも術科の成績は良かったからね。って言っても10数年前の話だけど……」
マサシがそう言うので、私は心配するなと伝えた。
「大丈夫だ、女性に襲いかかる瞬間に動けなくするから、そこを逮捕したらいい。けど署長自らが動けるのか?」
「うん、さっそく今から準備するよ。昼には一緒に動けるようになるから、昼にまた来てくれるかな」
マサシにそう言われ私は分かったと言って一旦赤坂署を後にした。
そのまま名前の出なかったもう1人の元に向かう。コチラは犯罪行為には手をそめてないが怪しげな商売をしていた。
【呪 祟り屋】
という看板を掲げている。この男が木山さんに呪いを送っていたのは確認してある。使用する事で技能の威力は上がる。この男の呪いも段々と強くなったのだろう。木山さんには弾かれているが……
私は【不可視】と【隠密】を使用して男の家に潜入した。
「ブツブツブツブツ…… 何故だ!? 我が呪殺がなぜ効かない! アヤツも神の手を借りているのか!? いや、それならば我が神が教えてくれる筈だ…… しかし…… うむ、先ずは我が神に確認しよう……」
潜入した家の中にいた男はそう言うと、扉を開き奥の部屋に入っていく。私はそれには続かずにこの部屋で奥の部屋の様子をうかがう事にした。
「我が問いに応えたまえ!! 神よ、なにゆえ我が呪殺が木山美登利に効かぬのか?」
男の問いに応える言葉が私にも聞こえた。部屋は防音仕様になってるようだが、物理的なものなので私には関係なく聞こえる。
『其方の力量不足ゆえ…… もっともっと力を使い、力量を上げよ!!』
ふん、どうやらカオリちゃんから聞いたアイツのようだな。陰でコソコソと暗躍して地球から異世界に戻る力をためようとしてるようだが、そんな事は絶対にさせないぞ。
そう、私とカオリちゃんの婚約話が出た日に、私はカオリちゃんが飛行機の中で日本に戻ったらと言っていた話を教えて貰っていた。
そこで聞いた話は想像を絶する話だったが、聞けば納得のいく答えが返ってきたので私は信じざるを得なかった。
まさか長年に渡り日本人を謀っていたとはな……
だが、その野望も私が打ち砕いて見せる。先ずは貴様が尖兵として利用しようとしている者たちを潰していく。
「フム、まだ我の力量が足りぬのか…… ならばまた依頼を受けるか…… 5件ほど保留にしてあったモノを受ける事にしよう。フフフ、これは良いな神の名の元に人を呪殺出来るのだから…… そして我は裕福になるし、フフフ…… ファーッハッハッハーッ!!」
馬鹿笑いを始めた男の能力を視た私は、根本的な部分、技能【呪い】の根幹部分を封じ込めた。しかし、そこで私はヤツに見つかってしまった。
『ヌっ! 力の片鱗を感じたぞっ!? そこに居るのは…… 己、いつの間に我が駒に近づきおった!! フフフ、だが、まあ良い、今回は見逃してやろう…… この駒も何かあればこうして呼び出しおるからそろそろ不要品にするつもりであったしの……』
私に向かって言うだけ言ってヤツは消えた。カオリちゃんの言うとおり、ヤツはまだ私に勝てるとは思ってないようだな。しかし【不可視】と【隠密】の併用でも見破られたから、新しい技能を覚えないとダメだな…… クソッ、私に【無】のスキルがあれば…… と好きなラノベのスキルを思い浮かべながら少し悩んだ。そんな時間あるかな? いや、小学校の時の校長先生が言ってたじゃないか!
【必要な時間とは作るモノだ!!】と。
よし、時間を作って技能を作って覚えよう。私はそのまま男の家を出た。
男はとある政治家からの依頼を受けると電話している最中だった。
余談だが、後日この男は政治家からの依頼のほかその後に受けた依頼も失敗し、詐欺師として警察に捕まったそうだ。そしてその時に調べられた事がもとになり、多くの著名人や政治家たちがその社会的地位を無くした。人を呪わば穴二つとはよく言ったものである。
昼に私は赤坂署近くの公園にいた。そこにラフなスーツを着たマサシがやって来た。
「待たせたね、フミくん。さあ、行こうか」
「その前にマサシ、魔力を視る方法を教えておくよ。どこかいい場所はないか?」
私がマサシにそう提案したら、目を輝かせてマサシが言った。
「ホントかいっ!? 第2のエロフ師匠の教えだね!! よし、それなら僕のとっておきの場所があるからそこに行こう!」
マサシよ、確かに元を辿ればエロフ師匠の教えではあるが、教えるのは私なんだぞ…… そう思いながら私は走り出しそうな勢いで歩くマサシについていく。たどり着いたのは平凡なアパートで2階の1室の鍵を開けてマサシが入った。私を手招きする。
「さあ、ココだよ、フミくん。入ってよ」
私も中に入る。すると、そこには壁1面だけじゃなく窓も潰して本棚が並び、ラノベとコミカライズされた書籍がズラーッと並んでいた。
「こっ、ここは?」
私が驚いてそう聞くと
「家に置くには憚られる書籍を置く為の倉庫だね。あと、両隣も借りてあるんだ。まだ増えそうだからね」
とマサシが自慢気に言った。私は本棚に目を走らせる。
「ウオッ! コっ、コレはっ!? 所詮印鍵理さんの【竹馬の友は乳○の妻になりました】の同人書籍じゃないか!? マっ、マサシ! 売ってくれ! コレを私に売ってくれ!!」
そう言うとマサシは首を横に振る……
「フミくん、僕がどれ程の時間を費やしてソレを手に入れたと思ってるんだい。ソレを売るぐらいなら僕は署長を辞めるよ!」
クッ! やはりダメか…… しかし、ならば私には必殺技がある。
「分かった…… ならば頼みがある、マサシ。この背表紙だけでも触れても構わないか?」
私の頼みにマサシはそれぐらいならと頷いてくれた。私は内心でマサシに悪いなと謝りながら、背表紙に触れ、【生活魔法】の複写を使って本を私の収納内にマサシに内緒で創り出したのだった。
それからも私はその他の本棚にも目を光らせて今や絶対に手に入らないだろう稀覯本をかたっぱしから複写したのは言うまでもない……
「フミくん…… また連れてきて上げるから本題に戻ってよ……」
マサシに言われて時計を見たら、この部屋に入って2時間が過ぎていたのだった……
スマン、マサシよ……
対象者は5名も居た。今まで木山さんが無事だったのはご本人の強烈な意志による所が大きいと分かった。何せ不幸の呪いなんてものはご自身から無意識に発している【私は幸せ】オーラでかき消してしまうのだ。私も異世界でもみた事のない、初めて見るタイプの人だ。
私は四国に旅立つ前に対象者を減らそうと2人の人物に接触した。幸いにして赤坂署管轄内に住んでいた2人にはマサシの協力を得る事が出来た。午前中にマサシを訪ねてみると、1人は既に赤坂署の刑事課が目をつけていたようだ。
「フミくん、その手黒貴俊はうちの刑事課が張り付いてるんだ。強姦事件の加害者としてね。但し証拠が出ないんだよ…… 体液とかの。それに襲われた女性の証言により似顔絵を描いてるけど毎回毎回、何故か証言がちがってるんだ…… 手口からして間違いなく手黒の犯行の筈なんだけどね」
そう言ってマサシは悔しがっている。私はそれを聞いて恐らくは【生活魔法】の清潔と、【認識阻害】を悪用していると考えた。【認識阻害】は顔自体を曖昧にするパターンの他に、他人から見ると毎回ちがう顔を見せるパターンがある。そこで私はマサシに言った。
「多分だが、魔法と技能に目覚めていると思う。その手黒の能力を封じ込めてみよう」
「頼めるかな、フミくん。でもこれ以上の被害者は出したくないんだ」
「分かってる。封じ込めた後に私と一緒に後をつけてくれる刑事さんは居るかな? 現行犯逮捕出来るようにするよ」
「それは…… うーん…… ホントはダメなんだけど、僕が一緒に動くよ。フミくんの能力をあまり知られない方がいいからね。あ、心配はしなくていいよ、これでも術科の成績は良かったからね。って言っても10数年前の話だけど……」
マサシがそう言うので、私は心配するなと伝えた。
「大丈夫だ、女性に襲いかかる瞬間に動けなくするから、そこを逮捕したらいい。けど署長自らが動けるのか?」
「うん、さっそく今から準備するよ。昼には一緒に動けるようになるから、昼にまた来てくれるかな」
マサシにそう言われ私は分かったと言って一旦赤坂署を後にした。
そのまま名前の出なかったもう1人の元に向かう。コチラは犯罪行為には手をそめてないが怪しげな商売をしていた。
【呪 祟り屋】
という看板を掲げている。この男が木山さんに呪いを送っていたのは確認してある。使用する事で技能の威力は上がる。この男の呪いも段々と強くなったのだろう。木山さんには弾かれているが……
私は【不可視】と【隠密】を使用して男の家に潜入した。
「ブツブツブツブツ…… 何故だ!? 我が呪殺がなぜ効かない! アヤツも神の手を借りているのか!? いや、それならば我が神が教えてくれる筈だ…… しかし…… うむ、先ずは我が神に確認しよう……」
潜入した家の中にいた男はそう言うと、扉を開き奥の部屋に入っていく。私はそれには続かずにこの部屋で奥の部屋の様子をうかがう事にした。
「我が問いに応えたまえ!! 神よ、なにゆえ我が呪殺が木山美登利に効かぬのか?」
男の問いに応える言葉が私にも聞こえた。部屋は防音仕様になってるようだが、物理的なものなので私には関係なく聞こえる。
『其方の力量不足ゆえ…… もっともっと力を使い、力量を上げよ!!』
ふん、どうやらカオリちゃんから聞いたアイツのようだな。陰でコソコソと暗躍して地球から異世界に戻る力をためようとしてるようだが、そんな事は絶対にさせないぞ。
そう、私とカオリちゃんの婚約話が出た日に、私はカオリちゃんが飛行機の中で日本に戻ったらと言っていた話を教えて貰っていた。
そこで聞いた話は想像を絶する話だったが、聞けば納得のいく答えが返ってきたので私は信じざるを得なかった。
まさか長年に渡り日本人を謀っていたとはな……
だが、その野望も私が打ち砕いて見せる。先ずは貴様が尖兵として利用しようとしている者たちを潰していく。
「フム、まだ我の力量が足りぬのか…… ならばまた依頼を受けるか…… 5件ほど保留にしてあったモノを受ける事にしよう。フフフ、これは良いな神の名の元に人を呪殺出来るのだから…… そして我は裕福になるし、フフフ…… ファーッハッハッハーッ!!」
馬鹿笑いを始めた男の能力を視た私は、根本的な部分、技能【呪い】の根幹部分を封じ込めた。しかし、そこで私はヤツに見つかってしまった。
『ヌっ! 力の片鱗を感じたぞっ!? そこに居るのは…… 己、いつの間に我が駒に近づきおった!! フフフ、だが、まあ良い、今回は見逃してやろう…… この駒も何かあればこうして呼び出しおるからそろそろ不要品にするつもりであったしの……』
私に向かって言うだけ言ってヤツは消えた。カオリちゃんの言うとおり、ヤツはまだ私に勝てるとは思ってないようだな。しかし【不可視】と【隠密】の併用でも見破られたから、新しい技能を覚えないとダメだな…… クソッ、私に【無】のスキルがあれば…… と好きなラノベのスキルを思い浮かべながら少し悩んだ。そんな時間あるかな? いや、小学校の時の校長先生が言ってたじゃないか!
【必要な時間とは作るモノだ!!】と。
よし、時間を作って技能を作って覚えよう。私はそのまま男の家を出た。
男はとある政治家からの依頼を受けると電話している最中だった。
余談だが、後日この男は政治家からの依頼のほかその後に受けた依頼も失敗し、詐欺師として警察に捕まったそうだ。そしてその時に調べられた事がもとになり、多くの著名人や政治家たちがその社会的地位を無くした。人を呪わば穴二つとはよく言ったものである。
昼に私は赤坂署近くの公園にいた。そこにラフなスーツを着たマサシがやって来た。
「待たせたね、フミくん。さあ、行こうか」
「その前にマサシ、魔力を視る方法を教えておくよ。どこかいい場所はないか?」
私がマサシにそう提案したら、目を輝かせてマサシが言った。
「ホントかいっ!? 第2のエロフ師匠の教えだね!! よし、それなら僕のとっておきの場所があるからそこに行こう!」
マサシよ、確かに元を辿ればエロフ師匠の教えではあるが、教えるのは私なんだぞ…… そう思いながら私は走り出しそうな勢いで歩くマサシについていく。たどり着いたのは平凡なアパートで2階の1室の鍵を開けてマサシが入った。私を手招きする。
「さあ、ココだよ、フミくん。入ってよ」
私も中に入る。すると、そこには壁1面だけじゃなく窓も潰して本棚が並び、ラノベとコミカライズされた書籍がズラーッと並んでいた。
「こっ、ここは?」
私が驚いてそう聞くと
「家に置くには憚られる書籍を置く為の倉庫だね。あと、両隣も借りてあるんだ。まだ増えそうだからね」
とマサシが自慢気に言った。私は本棚に目を走らせる。
「ウオッ! コっ、コレはっ!? 所詮印鍵理さんの【竹馬の友は乳○の妻になりました】の同人書籍じゃないか!? マっ、マサシ! 売ってくれ! コレを私に売ってくれ!!」
そう言うとマサシは首を横に振る……
「フミくん、僕がどれ程の時間を費やしてソレを手に入れたと思ってるんだい。ソレを売るぐらいなら僕は署長を辞めるよ!」
クッ! やはりダメか…… しかし、ならば私には必殺技がある。
「分かった…… ならば頼みがある、マサシ。この背表紙だけでも触れても構わないか?」
私の頼みにマサシはそれぐらいならと頷いてくれた。私は内心でマサシに悪いなと謝りながら、背表紙に触れ、【生活魔法】の複写を使って本を私の収納内にマサシに内緒で創り出したのだった。
それからも私はその他の本棚にも目を光らせて今や絶対に手に入らないだろう稀覯本をかたっぱしから複写したのは言うまでもない……
「フミくん…… また連れてきて上げるから本題に戻ってよ……」
マサシに言われて時計を見たら、この部屋に入って2時間が過ぎていたのだった……
スマン、マサシよ……
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