寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

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071話 ダウテ家の秘剣

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 僕とトウリさんの模擬戦の結果は結論から言えば僕の勝ちで終わったよ。

「ハイナイト伯爵様、手加減するのは失礼に当たると考え、我が最強の秘剣にてお相手致します!」

 そう言うとトウリさんが刀をはすに構えて右足を半歩下げた。

「秘剣【朧刃ろうじん】」

 その言葉と同時に四方八方からおぼろやいばが僕を襲う。僕はそのほとんどが残像だと確信して、真の一刀が襲い来るのに集中したんだ。
 そして、僕の頭頂部を目掛けて振り下ろされる一刀に反応すると見せかけて下段からの地摺じずりの刃を受け止め、返す刀を峰にしてトウリさんの小手を打ち刀を落とさせた。
 そのまま刃を返してトウリさんの喉元に薄皮一枚だけ切って切っ先を当てる。

 周りはシーンとしている…… そこでハッと気づいたセンジさんが大声で叫んだ。

「そっ、それまでっ!! ハイナイト伯爵様の勝ちでござるっ!!」

 僕は勝利宣言を受けてから、喉元に当てていた刃をゆっくりと引き五歩下がった。刀は構えたままだよ。そうしたらトウリさん自身が言った。

「参りました、我が秘剣を初見に関わらず見事になされたハイナイト伯爵様の勝ちにございます」

 それを聞いてから僕は刀を鞘に収めたんだ。みんなはそんな僕を見て感嘆の声を上げてくれている。
 けど、みんなには言えないけど僕の内心はこうだったんだよ。

(危なかったよ~、山勘が当たって良かった! 初見だっけど何とか刃に込められた刀気を読めたから躱す事が出来たけど、ここ数日忙しい中でもトモジ爺ちゃんと訓練してなかったら負けてたよね…… 本当に紙一重だったよ……)

 そう、僕はスキル進化の為に自分よりも強い人との訓練が有効だと学んだからお互いに忙しい身だけどトモジ爺ちゃんに時間を作って貰って訓練をしていたんだ。そのお陰で、【刀技(MAX)】が【刀術(5)】に進化していたんだ。もしも今日まで訓練を何もしていなかったらトウリさんの秘剣に間違いなく斬られていただろうと思う。

 ホッとした僕は体の力を抜いたんだけど、目の前にトウリさん、ヒヨリさん、センジさん、オリョウさんが跪いているのに気がついたんだ。4人を代表してトウリさんが僕にこう言ってきたよ。

「ハイナイト伯爵様、我ら4人心より伯爵様に忠誠を誓います。我が妻ヒヨリとセンジ、オリョウは隠密としてそれなりの腕前でございます。また、伯爵様に負けてしまいましたが、私は剣の腕とそれなりに戦略を練る事が得意でございます」

 僕はその言葉に頷いて、フェルが差し出してくれた紙にこう書いたんだ。

【先ずは安全なウチの領地に行って、落ち着いてから仕事について考えようね。生活基盤を整えてから確りと働いて貰う事にするよ】

 僕の書いた文を読んで4人は感動と呆れの両方を感じたようだよ。

「そのようにお優しいお言葉を賜り、我らは困惑しております。が、伯爵様の言うとおりに致します」

 そう言うと4人は僕に頭を下げたんだ。そして、僕はルソン陛下とアカネ様に4人は僕が預かりますと伝えて了承を貰ってから、村人たちに住む場所や茶畑の場所の用意は出来てるから行こうと身振りで示したんだ。みんな笑顔で有難うございますって言ってくれたよ。

 そしてルソン陛下のご好意でみんなで転移陣を使用する事になったんだけど、こんなに多勢でも大丈夫なのかな?
 僕の疑問にアカネ様が答えてくれたよ。

「トーヤくん、心配あらへんで。ウチのフィリップもかなり魔力が上がってん。せやからこの転移陣も改良して最大で100人をいっぺんに送れるようになったんよ! どや、凄いやろっ!?」

 ふぇー! それは凄いです!? 僕のビックリ顔を見てアカネ様が満足そうに笑った。

「フフフ、トーヤくんでもビックリしてくれるんやねぇ。ウチのフィリップも喜ぶわ~」

 いや、それはビックリしますよ。100人ですよ、100人! 前世では100人乗っても大丈夫が売り文句の倉庫メーカーがあったけど、フィリップ様は【100人居ても送れます!】 なんですから。

「まあ、そないに興奮した顔まで! フフフ、また遊びに来てや、トーヤくん、フェルちゃん。私もトーヤくんの所の温泉に遊びに行くからその時はよろしゅうに、な!」

 その言葉を合図に僕たちは転移したんだ。もちろん、僕の領地の方にだよ。そして先ずは村人たちを案内して貰う為にヤーコに来て貰うと、ヒヨリさんとセンジさんオリョウさん夫婦がヤーコを見て身構えたんだよ。

「「「モズのヤーコ!! 何故、ココに!!」」」

 ヤーコは身構える3人を前に懐かしそうに言ったよ。

「はい~、ご無沙汰しております。千手せんしゅのヒヨリさんに聞耳ききみみのセンジさん、それに読唇どくしんのオリョウさんですね、はい~。私は今はトーヤ様専属の侍女をしております、はい~。【モズのヤーコ】は廃業してます、はい~」

 そんなヤーコの返事に一気に緊張感が抜けた3人。その顔はなぜだか分からないけど妙に納得した顔をしている。
 トウリさんだけ訳が分からない顔をしているよ。

「どうしたんだ、3人とも? コチラの侍女の方は知り合いなのか?」

 トウリさんが3人にそう聞くと同時にフェルがヤーコに村人を案内してあげてと告げる。

「はい~、フェル様。畏まりました~。皆様、私について来て下さい。はい~」

 そうして村人を案内してヤーコが居なくなると、センジさんがトウリさんにヤーコについて語っていた。僕も興味津々で聞耳ききみみをたてたよ。あ、センジさんのお株を奪っちゃったね。

「トウリ様、先程の女性は【モズ】の二つ名を持つナニワサカイ国随一の諜報員です。いや、でしたが正しいですね。今やハイナイト伯爵様にお仕えしてるようですから。彼女は私達、脛巾はばき組の者にとっては恐ろしい敵でした…… いつの間にやら下忍たちや草が消されてしまうのです。証拠は何も無いので、棟梁とうりょうは彼女の仕業とは決めつけてませんでしたが、私とオリョウは一度だけ他県で仕事をしている彼女を見た事があります。そして確信したのです。下忍や草を消したのは彼女だと…… その時はヒヨリも一緒におりましたので、ヒヨリにも彼女とは一対一で相対するなと伝えていました。とても恐ろしい女性です。が、そんな彼女を仕えさせているハイナイト伯爵様とフェル様に私たちは更なるおそれを抱きます……」

 そう話を締めくくって僕とフェルに頭を下げるセンジさん。
 ヤダなぁ…… 僕もフェルもとても心優しい人間だよ、センジさん。僕はそう思いを込めてセンジさんを見つめたよ。親衛隊の人たち曰く、【天使の眼差し】でね。

「クッ、俺にはその趣味は無い筈だが……」

 アレ? 何か思ってのと違うセリフがセンジさんから聞こえたよ。

「あぁ~、私もショタコンのは無い筈なんだけどねぇ……」

 オリョウさんまで! 

「お前さん、安心しておくれ。私は何とか耐えたよ……」

 って、ヒヨリさんまで息も絶え絶えにしてるよ。トドメはトウリさんだったよ。

「グハッ!! その眼差しは危険過ぎです! ハイナイト伯爵様!! 刀を喉元に突きつけられるよりもダメージが……」

 いや、そんな筈ないでしょっ!!

 僕の心の突っ込みはスルーされて、フェルから

「トーヤ…… 後で部屋でジックリとお話しましょうね……」

 そう言われて僕は背中にダラダラと冷や汗をかいたんだ……
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