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本編
3
オレは昔から『逹臣くんって存在感ないよね』と、よく言われるくらいの陰キャだった。
陰キャと言っても、“陽の者とそこそこ仲良くなれるタイプの陰キャ”である(早口)。
で、何が言いたいかというと。
魔王の城…と思われる場所へひとりで来たんだけど…。マジで誰もオレがいることに気付かねぇ!!!
存在感のなさ!便利だけど寂しい!!
…というか、この城あまり人(魔族)がいねぇのな。
この城がある魔界?へ来るのに、途中で通った洞窟はさすがに魔族だらけだったんだ。
で、そんな危ないところで銀髪に褐色肌の女の子が道に迷って困っててさ。
だから声をかけて近くの村へ連れて戻ることにした。
しかも宿屋の部屋まで送り届けたんだよ。ちゃんと2部屋とってさ。オレ、紳士!
ところが夜になって、『さ、寝よっ』てベッドに入ろうとしてたら、ドアがノックされたんだよ。
なんと廊下にはスケスケの服?布?下着?を身につけただけの女の子が…。
『助けていただいたお礼をしたい』って、あれよあれよという間にベッドに押し倒されてさ、キスされたら……どんどん力が抜けて…『やばい死ぬっ』てなって押し飛ばしたんだけど。
窓から逃げていったその女の子、
“サキュバス”っていう魔族だった!
宿に置いてあった魔族図鑑で調べたら“男の精気を吸い取る夢魔”って書いてあった。“最悪の場合は死に至る”って。“精気を吸われると快感を覚える”らしいけど、オレはただ気持ち悪いだけだった。
で、再び洞窟の中。
そして、再びその女の子と遭遇。
「はは…」
こんなところにいる訳ないじゃんね…?
武器ひとつ持ってないし、捕まえられて来たって感じでもなくて、洞窟の奥に元気そうな女の子がひとりでいるって、罠に決まってるじゃんね…?
「もう騙されないからなぁ~!!」
これまで女たちに騙されてきた全ての恨みを込めた剣で斬りつけると、ギャーッて断末魔の声を上げながら光る塵になって消えた。
◇
そして現在に戻る。
『魔王…いない?』ってなった後ね。
広い廊下に戻って、別の細い通路へ進んで、再びたくさんあるドアをひとつひとつソーッと開けて回ったわけ。
ところが、だぁれもいないの。
んで、最後にやっと見つけたのがこの部屋。
カリカリカリ…と紙にペンを走らせる音。
インク壺にペン先を浸しているのか、熟考しているのか、時折その音は止む。
目の前には机の上に積み上げられた書類の山。
その隙間から見えるのは、長いまつ毛を伏せて何かを滑らかな筆運びで書き続けている美貌の男。
お仕事中…?
この人が魔王…かな?
角とかは無いんだな。
仕事の邪魔したら悪いかな…?
黒くて長い髪がサラサラしてて綺麗だなぁ。
「…何の用向きか?」
ペンを止めないまま美声が発せられる。
「…あんたが…魔王…様?」
あまりの迫力に、思わず“様”をつけちゃった。
「あぁ。そなたは人間か?」
忙しく動いていたペンが止まり、ようやくこちらに向けられたのは、夏の青空みたいな瞳。
きれー。宝石みたい。
ボワッ。
変な風が頭を通り抜けた気がした。
魔法?
なんともない?…けど?
目が悪い人が遠くを見る、みたいに眉を顰めた男。
「“とらっく”、“ねっと”とは何だ? 指輪を売る?…ということは、“ねっと”とは商店の名前か?」
魔王様は、“この世界ではあり得ない単語”を口にすると、驚きに息が止まっていたオレを見て、首を僅かに傾げた。
しかも『指輪を売る』って言った?
「はっ…!…ええっと…。トラックというのは大型の車で、大量の荷物を運ぶことができます。ネットは、インターネットの略で…、」
「“いんたーねっと”とは?」
「えっと、サーバに上げた情報へパソコンやスマホ、タブレットなんかを使って誰でもアクセスできるネットワーク…」
「“さーば”、“ぱそこん”、“すまほ”、“たぶれっと”、“あくせす”、“ねっとわーく”とは?」
あーもう、キリがねぇ!!!
「魔王様。トラックやネットって単語が分かってるならオレの頭ん中を覗けるんでしょ? 見ていいですから!」
さっきまで、この世界に飛ばされる直前のことを思い出してたからかな?
トラックとか指輪とかって。
「うむ…。頭に思い浮かべてくれるか」
椅子から立ち上がった魔王様がでっかい机をぐるっと回ってこちらに来た。
背ぇ高っ!
美人!
「失礼する」
左手で自身の前髪を掻き上げると、オレのも右手で上げてくる。
なんだろ、いい匂い…。
顔が近付いて…、
おでことおでこが、あたっ…当たって?!
ひょえぁわっ!!!
「騒がしいやつめ。“とらっく”と“いんたーねっと”について、詳細を頭の中に思い浮かべぬか…」
めっ、て軽く叱るみたいなお顔も美しすぎて目が潰れるぅー。
「はい…」
イエッサー!
「…なるほど。そなたの世界は興味深いな」
ふぅ…、と髪を掻き上げ、息を吐いたその気怠げな姿に胸がドキドキする。
遠くからでも頭の中は覗けるんだけど、ふわふわしたイメージみたいなもの…なんだって。
額を合わせて覗くと、より鮮明に見える…らしい。
「頭の中を覗かせてもらった礼として、そなたの望みを叶えてやりたいが…」
望み?
そんなもの…叶えられる筈がない。
だって…ここは異世界で。
「…ふむ。望みは…“元の世界へ帰りたい”“両親に会いたい”…だったな」
そっか。頭の中、全部見られてたならオレの望みなんて筒抜けだよな。
「もう一度だ。そなたが最後にいた場所と時間を詳しく思い浮かべよ。そなたの世界とこちらの世界を繋げてみせよう」
んなこと出来るの、魔王様?!!!
「トラックは私が何とかしてやるから、橋から飛び降りる直前のことを頭へ思い浮かべよ」
何とかって。
「私もそなたと共に行く。そちらの世界はとても興味深い」
「え…。この城、魔王様がいなくなっても平気なんです?」
「…平気ではないが。そなたは私を殺しに来たのであろう?」
あ…。そうだった…。
「忘れておったのか…。仕方ないやつだ」
ふっ、と笑う魔王様。
お美しい…。
「まぁ、この時より5分後、この場所へ、私のみが戻れば良い」
なるほど?オレと一緒に向こうの世界に行って、あっちで観光を十分に楽しんだら、魔王様だけ5分後のこの場所へ戻ってくる…ってことかな?
魔王様連れて行っちゃって本当にいいのかな?
…うん。
でも、魔王様が一緒に来てくれたら心強いや。
「では」
再び麗しいお顔が近付いてくる…。
「はひっ!お願いします!」
あーヤバい、ヤバ…、
「早う頭に思い浮かべよ。正しき場所、時間へ辿り着けるかは、そなたの記憶にかかっておる」
恐れ多くも魔王様と額を合わせ、目を瞑り、あの日の記憶を掘り起こす。
すると、
ピカーッと瞼越しに眩しい光。
かと思えば、ゴゴゴゴゴ…という恐ろしい音。
慌てて瞼を開けると目の前には大きなトラック!!
運転手さん! 居眠りしてる!!!
お疲れ様です!!
「わぁぁ!!!」
死ぬ!!
ピタ、
という音はしないのだけれど。
まさにそんな感じで、目の前まで来ていたトラックが止まった。
たぶん魔王様の魔法かなにか。
さっきまでの爆音が聞こえない。
エンジンが止まってる?
いや、時間が止まってるみたいに動かない。
「さ。そなたの家へ案内せよ」
何事も起きてないみたいに、魔王様はオレにそう命じるのだった。
◇
まずは魔王様をアパートへ連れて帰り、服を着替えてもらうことにした。
このままでは超美形な外国人コスプレイヤーが爆誕してしまう。SNSに上げられたらあっという間だ。
オレも“ザ・村人の服”って感じだし…。
腰からファンタジーな剣とナイフを下げてるし…。
警察に見られたら捕まるやつ!!
『そなたは隠密魔法が使えるようだ。他の者には見つからぬ。安心せよ』って魔王様に言われたけど、違うから!オレ、存在感がないだけだから!!
なんか変なテンションもあって興奮してるせいか、ちょっぴり悲しくなっても泣かずに済んだ…。
「足……長いッスね」
オレのスウェットパンツを穿いてもらったら、七分丈になった…。
タンス(クローゼット)の肥やしになってたフリーサイズのTシャツは、オレが着るとクソダサいのに、魔王様が着るとオシャレアイテムに早替わりした…。
ごめんなTシャツ。これまで着こなしてやれなくて…。
その日はもう夜だったから、翌朝実家へ向かうことにした。
冷蔵庫は空っぽだったから宅配ピザを頼んだんだけど、魔王様はトマトとモッツァレラチーズのピザと、照り焼きチキンピザがお気に召したようだった。
最近高いよね…ピザ。
カード決済だから金額は見ない!あとでプルプル子犬みたいに震えることになるだろうけど、魔王様がこの世界で食べる最初のご飯って思ったら手は抜けない!いや、オレは作ってないし、お金を出して届けてもらっただけなんだけど!
あ、橋の上で落としたバッグは無事回収できた。スマホやノートPCや財布もそのままで安心した。魔王様、本当にありがとうございます!
食後の魔王様は家電に夢中。
魔界に電気はないけど、冷蔵庫のような道具はあるらしい。棚の上の方に魔法で凍らせたスライムを置いておくそうだ。あの世界にスライムいたんだ?見たかった。
電線で発電所から電気が送られてきてるって話したら、すぐ外に出て『あれか』って電柱と暗い空を走る電線を見上げて驚いてた。
ほぼ表情は動かないんだけど、目が輝いてるから分かる。
アパートに着いてすぐ、手洗いうがいをしてもらったんだけど、捻れば水がでる蛇口やハンドソープのボトルにも驚いてた。
『手洗い、うがいの大切さ』を説いたら『菌、ウィルスとは?』って聞かれて、改めて聞かれると上手く説明できなかったので、パソコンで見せたら、魔王様はパソコンそのものに食いついた。
さっそくインターネットの使い方を覚えたよ。
『マスクの作り方』とか『上下水道の仕組み』とかも調べてた。
手から魔法で水を出せるという魔王様の方が凄いと思うんだけど。メモを取らなくても見たもの読んだものを全部覚えちゃうし。
ベッドを譲ろうとしたら、抱きかかえられて2人で眠ることになっていた。
やばい。
いい匂い。
緊張で眠れな……
眠れた。
気が付いたら朝だった。
むしろ、いつもより熟睡できた気がする。
朝食は、実家から送られてきていた米をレンジで炊いたものと、フリーズドライ味噌汁を探し出してお湯を注いだもの。
魔王様の驚きが止まらない。
確かにフリーズドライの技術ってすごいよね。
野菜シャッキシャキ。
そのうち『工場見学したい』って言い出しそう。
陰キャと言っても、“陽の者とそこそこ仲良くなれるタイプの陰キャ”である(早口)。
で、何が言いたいかというと。
魔王の城…と思われる場所へひとりで来たんだけど…。マジで誰もオレがいることに気付かねぇ!!!
存在感のなさ!便利だけど寂しい!!
…というか、この城あまり人(魔族)がいねぇのな。
この城がある魔界?へ来るのに、途中で通った洞窟はさすがに魔族だらけだったんだ。
で、そんな危ないところで銀髪に褐色肌の女の子が道に迷って困っててさ。
だから声をかけて近くの村へ連れて戻ることにした。
しかも宿屋の部屋まで送り届けたんだよ。ちゃんと2部屋とってさ。オレ、紳士!
ところが夜になって、『さ、寝よっ』てベッドに入ろうとしてたら、ドアがノックされたんだよ。
なんと廊下にはスケスケの服?布?下着?を身につけただけの女の子が…。
『助けていただいたお礼をしたい』って、あれよあれよという間にベッドに押し倒されてさ、キスされたら……どんどん力が抜けて…『やばい死ぬっ』てなって押し飛ばしたんだけど。
窓から逃げていったその女の子、
“サキュバス”っていう魔族だった!
宿に置いてあった魔族図鑑で調べたら“男の精気を吸い取る夢魔”って書いてあった。“最悪の場合は死に至る”って。“精気を吸われると快感を覚える”らしいけど、オレはただ気持ち悪いだけだった。
で、再び洞窟の中。
そして、再びその女の子と遭遇。
「はは…」
こんなところにいる訳ないじゃんね…?
武器ひとつ持ってないし、捕まえられて来たって感じでもなくて、洞窟の奥に元気そうな女の子がひとりでいるって、罠に決まってるじゃんね…?
「もう騙されないからなぁ~!!」
これまで女たちに騙されてきた全ての恨みを込めた剣で斬りつけると、ギャーッて断末魔の声を上げながら光る塵になって消えた。
◇
そして現在に戻る。
『魔王…いない?』ってなった後ね。
広い廊下に戻って、別の細い通路へ進んで、再びたくさんあるドアをひとつひとつソーッと開けて回ったわけ。
ところが、だぁれもいないの。
んで、最後にやっと見つけたのがこの部屋。
カリカリカリ…と紙にペンを走らせる音。
インク壺にペン先を浸しているのか、熟考しているのか、時折その音は止む。
目の前には机の上に積み上げられた書類の山。
その隙間から見えるのは、長いまつ毛を伏せて何かを滑らかな筆運びで書き続けている美貌の男。
お仕事中…?
この人が魔王…かな?
角とかは無いんだな。
仕事の邪魔したら悪いかな…?
黒くて長い髪がサラサラしてて綺麗だなぁ。
「…何の用向きか?」
ペンを止めないまま美声が発せられる。
「…あんたが…魔王…様?」
あまりの迫力に、思わず“様”をつけちゃった。
「あぁ。そなたは人間か?」
忙しく動いていたペンが止まり、ようやくこちらに向けられたのは、夏の青空みたいな瞳。
きれー。宝石みたい。
ボワッ。
変な風が頭を通り抜けた気がした。
魔法?
なんともない?…けど?
目が悪い人が遠くを見る、みたいに眉を顰めた男。
「“とらっく”、“ねっと”とは何だ? 指輪を売る?…ということは、“ねっと”とは商店の名前か?」
魔王様は、“この世界ではあり得ない単語”を口にすると、驚きに息が止まっていたオレを見て、首を僅かに傾げた。
しかも『指輪を売る』って言った?
「はっ…!…ええっと…。トラックというのは大型の車で、大量の荷物を運ぶことができます。ネットは、インターネットの略で…、」
「“いんたーねっと”とは?」
「えっと、サーバに上げた情報へパソコンやスマホ、タブレットなんかを使って誰でもアクセスできるネットワーク…」
「“さーば”、“ぱそこん”、“すまほ”、“たぶれっと”、“あくせす”、“ねっとわーく”とは?」
あーもう、キリがねぇ!!!
「魔王様。トラックやネットって単語が分かってるならオレの頭ん中を覗けるんでしょ? 見ていいですから!」
さっきまで、この世界に飛ばされる直前のことを思い出してたからかな?
トラックとか指輪とかって。
「うむ…。頭に思い浮かべてくれるか」
椅子から立ち上がった魔王様がでっかい机をぐるっと回ってこちらに来た。
背ぇ高っ!
美人!
「失礼する」
左手で自身の前髪を掻き上げると、オレのも右手で上げてくる。
なんだろ、いい匂い…。
顔が近付いて…、
おでことおでこが、あたっ…当たって?!
ひょえぁわっ!!!
「騒がしいやつめ。“とらっく”と“いんたーねっと”について、詳細を頭の中に思い浮かべぬか…」
めっ、て軽く叱るみたいなお顔も美しすぎて目が潰れるぅー。
「はい…」
イエッサー!
「…なるほど。そなたの世界は興味深いな」
ふぅ…、と髪を掻き上げ、息を吐いたその気怠げな姿に胸がドキドキする。
遠くからでも頭の中は覗けるんだけど、ふわふわしたイメージみたいなもの…なんだって。
額を合わせて覗くと、より鮮明に見える…らしい。
「頭の中を覗かせてもらった礼として、そなたの望みを叶えてやりたいが…」
望み?
そんなもの…叶えられる筈がない。
だって…ここは異世界で。
「…ふむ。望みは…“元の世界へ帰りたい”“両親に会いたい”…だったな」
そっか。頭の中、全部見られてたならオレの望みなんて筒抜けだよな。
「もう一度だ。そなたが最後にいた場所と時間を詳しく思い浮かべよ。そなたの世界とこちらの世界を繋げてみせよう」
んなこと出来るの、魔王様?!!!
「トラックは私が何とかしてやるから、橋から飛び降りる直前のことを頭へ思い浮かべよ」
何とかって。
「私もそなたと共に行く。そちらの世界はとても興味深い」
「え…。この城、魔王様がいなくなっても平気なんです?」
「…平気ではないが。そなたは私を殺しに来たのであろう?」
あ…。そうだった…。
「忘れておったのか…。仕方ないやつだ」
ふっ、と笑う魔王様。
お美しい…。
「まぁ、この時より5分後、この場所へ、私のみが戻れば良い」
なるほど?オレと一緒に向こうの世界に行って、あっちで観光を十分に楽しんだら、魔王様だけ5分後のこの場所へ戻ってくる…ってことかな?
魔王様連れて行っちゃって本当にいいのかな?
…うん。
でも、魔王様が一緒に来てくれたら心強いや。
「では」
再び麗しいお顔が近付いてくる…。
「はひっ!お願いします!」
あーヤバい、ヤバ…、
「早う頭に思い浮かべよ。正しき場所、時間へ辿り着けるかは、そなたの記憶にかかっておる」
恐れ多くも魔王様と額を合わせ、目を瞑り、あの日の記憶を掘り起こす。
すると、
ピカーッと瞼越しに眩しい光。
かと思えば、ゴゴゴゴゴ…という恐ろしい音。
慌てて瞼を開けると目の前には大きなトラック!!
運転手さん! 居眠りしてる!!!
お疲れ様です!!
「わぁぁ!!!」
死ぬ!!
ピタ、
という音はしないのだけれど。
まさにそんな感じで、目の前まで来ていたトラックが止まった。
たぶん魔王様の魔法かなにか。
さっきまでの爆音が聞こえない。
エンジンが止まってる?
いや、時間が止まってるみたいに動かない。
「さ。そなたの家へ案内せよ」
何事も起きてないみたいに、魔王様はオレにそう命じるのだった。
◇
まずは魔王様をアパートへ連れて帰り、服を着替えてもらうことにした。
このままでは超美形な外国人コスプレイヤーが爆誕してしまう。SNSに上げられたらあっという間だ。
オレも“ザ・村人の服”って感じだし…。
腰からファンタジーな剣とナイフを下げてるし…。
警察に見られたら捕まるやつ!!
『そなたは隠密魔法が使えるようだ。他の者には見つからぬ。安心せよ』って魔王様に言われたけど、違うから!オレ、存在感がないだけだから!!
なんか変なテンションもあって興奮してるせいか、ちょっぴり悲しくなっても泣かずに済んだ…。
「足……長いッスね」
オレのスウェットパンツを穿いてもらったら、七分丈になった…。
タンス(クローゼット)の肥やしになってたフリーサイズのTシャツは、オレが着るとクソダサいのに、魔王様が着るとオシャレアイテムに早替わりした…。
ごめんなTシャツ。これまで着こなしてやれなくて…。
その日はもう夜だったから、翌朝実家へ向かうことにした。
冷蔵庫は空っぽだったから宅配ピザを頼んだんだけど、魔王様はトマトとモッツァレラチーズのピザと、照り焼きチキンピザがお気に召したようだった。
最近高いよね…ピザ。
カード決済だから金額は見ない!あとでプルプル子犬みたいに震えることになるだろうけど、魔王様がこの世界で食べる最初のご飯って思ったら手は抜けない!いや、オレは作ってないし、お金を出して届けてもらっただけなんだけど!
あ、橋の上で落としたバッグは無事回収できた。スマホやノートPCや財布もそのままで安心した。魔王様、本当にありがとうございます!
食後の魔王様は家電に夢中。
魔界に電気はないけど、冷蔵庫のような道具はあるらしい。棚の上の方に魔法で凍らせたスライムを置いておくそうだ。あの世界にスライムいたんだ?見たかった。
電線で発電所から電気が送られてきてるって話したら、すぐ外に出て『あれか』って電柱と暗い空を走る電線を見上げて驚いてた。
ほぼ表情は動かないんだけど、目が輝いてるから分かる。
アパートに着いてすぐ、手洗いうがいをしてもらったんだけど、捻れば水がでる蛇口やハンドソープのボトルにも驚いてた。
『手洗い、うがいの大切さ』を説いたら『菌、ウィルスとは?』って聞かれて、改めて聞かれると上手く説明できなかったので、パソコンで見せたら、魔王様はパソコンそのものに食いついた。
さっそくインターネットの使い方を覚えたよ。
『マスクの作り方』とか『上下水道の仕組み』とかも調べてた。
手から魔法で水を出せるという魔王様の方が凄いと思うんだけど。メモを取らなくても見たもの読んだものを全部覚えちゃうし。
ベッドを譲ろうとしたら、抱きかかえられて2人で眠ることになっていた。
やばい。
いい匂い。
緊張で眠れな……
眠れた。
気が付いたら朝だった。
むしろ、いつもより熟睡できた気がする。
朝食は、実家から送られてきていた米をレンジで炊いたものと、フリーズドライ味噌汁を探し出してお湯を注いだもの。
魔王様の驚きが止まらない。
確かにフリーズドライの技術ってすごいよね。
野菜シャッキシャキ。
そのうち『工場見学したい』って言い出しそう。
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