幽霊になった僕

くろねこや

文字の大きさ
6 / 9

黒い人間

しおりを挟む
ガチャッと音がして、浴室のドアが開いた。

もわりとした湯気。

慌てて僕は横に避けた。

…いや、僕は幽霊だから兄とぶつかることはないんだけど、何となく反射的にね…?




『ユウ…イチ…ロウ』

黒い人間はほらのような口で、再び兄の名を呼ぶ。


…あ、やば。

兄さん、逃げて!!

って僕の声は聞こえないんだ!!


裸の兄は“僕”の身体を抱えて浴室から出て来た。



黒い人間は、兄に襲いかかる……



















……こともなく、ただ立っていた。





兄が歩くたび、抱き上げられた“僕”の身体はユサユサ揺すられる。

その下半身は、よく見ると“僕”と繋がっていて…。

…え? …繋がって?


“僕”の膝裏は兄の上腕に引っ掛けられ、大きく開かされた両脚ごと抱えられているせいで、結合したままの局部が丸見えだ。


床に雫が垂れるのも構わず、兄は堂々と歩いていく。

立ったままの黒い人間をすり抜けて。


すり抜け…た。

気持ち悪っ!!


黒い人間は兄の姿を追うようにじりじりと向きを変えてゆく。


兄は濡れた身体のまま場所をベッドへ移すと、再びヌチヌチギシギシ音を立てて“僕”の身体へ激しい抽挿を始める。



興奮して息を荒くした兄には、黒い人間が見えていないみたいだ。

見えていて行為を続けているとしたら、それは相当な狂人だと思う。



いや、魂が抜けた“人形”みたいな身体を…実の弟を犯している時点で十分“狂人”なのだろうけど。




飛行機事故のニュース、

現れたタイミング、

兄の名前を呼んでいることから、

たぶんこの黒い人間は【母】なのだと思う。

父は家族に興味がない人だから。



【母】は、ただ立っているだけ。



……なんだけど、

とにかくクサい。

そのせいで、ここに現れた【母】に対して何かを思う余裕もない。

“自分の母親に兄との行為を見られている”なんて状況にも思い至らないほど酷い臭いだ。



なんで幽霊の僕に嗅覚があるんだろう。

吐きそうなほど気持ち悪いのに、実体がないせいか吐けそうもない。

どんな臭いでも、慣れるものじゃないの?!

クサい!!

でも、僕の身体から5メートル以上離れられないせいで距離をとることも出来ない。



兄が全く気付いてないということは、“幽霊になっている僕”だからこそ強く感じてしまう臭いなのかもしれない。

僕自身の身体に戻れば臭いを感じなくなるのだろうか?



…でも“あの身体”に今戻るのは嫌だな。

全身に散らばる鬱血痕。

結合部からは、ぐっちょぐっちょ酷い水音。

…絶対に痛いよ。

あの激痛は二度と体感したくない。



どうすることも出来ないまま、ベッドを挟んで【母】からなるべく遠ざかる。

兄に抱かれる“自分”の姿なんて見たくないし。

この部屋から出られたらいいのに。



兄は夜が明けても、昼を過ぎても、再び夜が訪れても、“僕”の身体を抱き続けている。

着信があったのかスマホが何度も鳴ったのに、完全無視。ついには電源を落としてしまった。大事な連絡じゃないのかな?

ゼリー飲料を飲み、“僕”に口移しで飲ませながらずっと身体を離さない。

風呂で濡れていた身体はすっかり乾いた筈なのに、汗やいろんな液体でドロドロカピカピになってる。


人形みたいに無反応な“僕”だけど、強制的に“運動”させられているせいか、身体が紅潮してる。

兄はそれが嬉しいみたいだった。

「優弥…、優弥…、」

って、何度もキスしながら腰を動かしてる。


うう。誰ともキスしたことなかったのに…。

もちろん性交の経験もなかった。


あんな状態の身体に戻るなんて耐えられない。

でも、この臭いにも耐えられない。


僕は究極の選択を迫られていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

幼馴染みが屈折している

サトー
BL
「どの女もみんな最低だったよ。俺がちょっと優しくしただけで、全員簡単に俺なんかと寝てさ」 大学生の早川 ルイは、幼馴染みのヒカルに何をやっても勝てないといつも劣等感を感じていた。 勉強やスポーツはもちろんヒカルの方ができる、合コンはヒカルのオマケで呼ばれるし、好みの女子がいても皆ヒカルの方にとられてしまう。 コンプレックスを拗らせる日々だったが、ある日ヒカルの恋愛事情に口を挟んだことから急速に二人の関係は変化していく。 ※レオとルイが結ばれるIFエピソードについては「IF ROOT」という作品で独立させました。今後レオとのエピソードはそちらに投稿します。 ※この作品はムーンライトノベルズにも投稿しています。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

Original drug

佐治尚実
BL
ある薬を愛しい恋人の翔祐に服用させた医薬品会社に勤める一条は、この日を数年間も待ち望んでいた。 翔祐(しょうすけ) 一条との家に軟禁されている 平凡 一条の恋人 敬語 一条(いちじょう) 医薬品会社の執行役員 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

処理中です...