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黒い人間
ガチャッと音がして、浴室のドアが開いた。
もわりとした湯気。
慌てて僕は横に避けた。
…いや、僕は幽霊だから兄とぶつかることはないんだけど、何となく反射的にね…?
『ユウ…イチ…ロウ』
黒い人間は洞のような口で、再び兄の名を呼ぶ。
…あ、やば。
兄さん、逃げて!!
って僕の声は聞こえないんだ!!
裸の兄は“僕”の身体を抱えて浴室から出て来た。
黒い人間は、兄に襲いかかる……
……こともなく、ただ立っていた。
兄が歩くたび、抱き上げられた“僕”の身体はユサユサ揺すられる。
その下半身は、よく見ると“僕”と繋がっていて…。
…え? …繋がって?
“僕”の膝裏は兄の上腕に引っ掛けられ、大きく開かされた両脚ごと抱えられているせいで、結合したままの局部が丸見えだ。
床に雫が垂れるのも構わず、兄は堂々と歩いていく。
立ったままの黒い人間をすり抜けて。
すり抜け…た。
気持ち悪っ!!
黒い人間は兄の姿を追うようにじりじりと向きを変えてゆく。
兄は濡れた身体のまま場所をベッドへ移すと、再びヌチヌチギシギシ音を立てて“僕”の身体へ激しい抽挿を始める。
興奮して息を荒くした兄には、黒い人間が見えていないみたいだ。
見えていて行為を続けているとしたら、それは相当な狂人だと思う。
いや、魂が抜けた“人形”みたいな身体を…実の弟を犯している時点で十分“狂人”なのだろうけど。
飛行機事故のニュース、
現れたタイミング、
兄の名前を呼んでいることから、
たぶんこの黒い人間は【母】なのだと思う。
父は家族に興味がない人だから。
【母】は、ただ立っているだけ。
……なんだけど、
とにかくクサい。
そのせいで、ここに現れた【母】に対して何かを思う余裕もない。
“自分の母親に兄との行為を見られている”なんて状況にも思い至らないほど酷い臭いだ。
なんで幽霊の僕に嗅覚があるんだろう。
吐きそうなほど気持ち悪いのに、実体がないせいか吐けそうもない。
どんな臭いでも、慣れるものじゃないの?!
クサい!!
でも、僕の身体から5メートル以上離れられないせいで距離をとることも出来ない。
兄が全く気付いてないということは、“幽霊になっている僕”だからこそ強く感じてしまう臭いなのかもしれない。
僕自身の身体に戻れば臭いを感じなくなるのだろうか?
…でも“あの身体”に今戻るのは嫌だな。
全身に散らばる鬱血痕。
結合部からは、ぐっちょぐっちょ酷い水音。
…絶対に痛いよ。
あの激痛は二度と体感したくない。
どうすることも出来ないまま、ベッドを挟んで【母】からなるべく遠ざかる。
兄に抱かれる“自分”の姿なんて見たくないし。
この部屋から出られたらいいのに。
兄は夜が明けても、昼を過ぎても、再び夜が訪れても、“僕”の身体を抱き続けている。
着信があったのかスマホが何度も鳴ったのに、完全無視。ついには電源を落としてしまった。大事な連絡じゃないのかな?
ゼリー飲料を飲み、“僕”に口移しで飲ませながらずっと身体を離さない。
風呂で濡れていた身体はすっかり乾いた筈なのに、汗やいろんな液体でドロドロカピカピになってる。
人形みたいに無反応な“僕”だけど、強制的に“運動”させられているせいか、身体が紅潮してる。
兄はそれが嬉しいみたいだった。
「優弥…、優弥…、」
って、何度もキスしながら腰を動かしてる。
うう。誰ともキスしたことなかったのに…。
もちろん性交の経験もなかった。
あんな状態の身体に戻るなんて耐えられない。
でも、この臭いにも耐えられない。
僕は究極の選択を迫られていた。
もわりとした湯気。
慌てて僕は横に避けた。
…いや、僕は幽霊だから兄とぶつかることはないんだけど、何となく反射的にね…?
『ユウ…イチ…ロウ』
黒い人間は洞のような口で、再び兄の名を呼ぶ。
…あ、やば。
兄さん、逃げて!!
って僕の声は聞こえないんだ!!
裸の兄は“僕”の身体を抱えて浴室から出て来た。
黒い人間は、兄に襲いかかる……
……こともなく、ただ立っていた。
兄が歩くたび、抱き上げられた“僕”の身体はユサユサ揺すられる。
その下半身は、よく見ると“僕”と繋がっていて…。
…え? …繋がって?
“僕”の膝裏は兄の上腕に引っ掛けられ、大きく開かされた両脚ごと抱えられているせいで、結合したままの局部が丸見えだ。
床に雫が垂れるのも構わず、兄は堂々と歩いていく。
立ったままの黒い人間をすり抜けて。
すり抜け…た。
気持ち悪っ!!
黒い人間は兄の姿を追うようにじりじりと向きを変えてゆく。
兄は濡れた身体のまま場所をベッドへ移すと、再びヌチヌチギシギシ音を立てて“僕”の身体へ激しい抽挿を始める。
興奮して息を荒くした兄には、黒い人間が見えていないみたいだ。
見えていて行為を続けているとしたら、それは相当な狂人だと思う。
いや、魂が抜けた“人形”みたいな身体を…実の弟を犯している時点で十分“狂人”なのだろうけど。
飛行機事故のニュース、
現れたタイミング、
兄の名前を呼んでいることから、
たぶんこの黒い人間は【母】なのだと思う。
父は家族に興味がない人だから。
【母】は、ただ立っているだけ。
……なんだけど、
とにかくクサい。
そのせいで、ここに現れた【母】に対して何かを思う余裕もない。
“自分の母親に兄との行為を見られている”なんて状況にも思い至らないほど酷い臭いだ。
なんで幽霊の僕に嗅覚があるんだろう。
吐きそうなほど気持ち悪いのに、実体がないせいか吐けそうもない。
どんな臭いでも、慣れるものじゃないの?!
クサい!!
でも、僕の身体から5メートル以上離れられないせいで距離をとることも出来ない。
兄が全く気付いてないということは、“幽霊になっている僕”だからこそ強く感じてしまう臭いなのかもしれない。
僕自身の身体に戻れば臭いを感じなくなるのだろうか?
…でも“あの身体”に今戻るのは嫌だな。
全身に散らばる鬱血痕。
結合部からは、ぐっちょぐっちょ酷い水音。
…絶対に痛いよ。
あの激痛は二度と体感したくない。
どうすることも出来ないまま、ベッドを挟んで【母】からなるべく遠ざかる。
兄に抱かれる“自分”の姿なんて見たくないし。
この部屋から出られたらいいのに。
兄は夜が明けても、昼を過ぎても、再び夜が訪れても、“僕”の身体を抱き続けている。
着信があったのかスマホが何度も鳴ったのに、完全無視。ついには電源を落としてしまった。大事な連絡じゃないのかな?
ゼリー飲料を飲み、“僕”に口移しで飲ませながらずっと身体を離さない。
風呂で濡れていた身体はすっかり乾いた筈なのに、汗やいろんな液体でドロドロカピカピになってる。
人形みたいに無反応な“僕”だけど、強制的に“運動”させられているせいか、身体が紅潮してる。
兄はそれが嬉しいみたいだった。
「優弥…、優弥…、」
って、何度もキスしながら腰を動かしてる。
うう。誰ともキスしたことなかったのに…。
もちろん性交の経験もなかった。
あんな状態の身体に戻るなんて耐えられない。
でも、この臭いにも耐えられない。
僕は究極の選択を迫られていた。
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