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第15稿

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「いやあ、そんなことないっすけど、お客さん、バンド組んでたって言ってたけど、もちろん、ボーカルっすよね」
「いやあ、違いますけど、俺、店員さんより、下手だからあまり言いたくないけど、俺、一応ギター担当なんすよ」
「嘘でしょ。冗談きついなあ」
「いや、マジなんすけど」
凄い顔で俺を見る彼。悪かったな下手くそで。だから、そんな目で俺を見るなって。おいっ
「もったいないですよ。絶対歌った方がいいって。それこそプロ並ですよ。さっきの歌。そこら辺の自称ボーカリストな連中より、遥かに上手いっすよ」
そんなおべんちゃらはいらん。もう音楽の夢は、ここで終りにしようとしてるんだから。瞬時に音をバラしては、その後、一気に収束させてみたり、それも遊びの面白さ。そう、ただの遊びだ。
「いや、実はバンドは解散したんですよ。それで、もう音楽は終りにしようと。だから、惜別の意味もあってギターを売りにここまで来たんです。俺の歌が上手い?だから、そんなお世辞言われても困るんですよ」
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