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第25稿

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こんなの即答だよ。
「何で、もったいないじゃん。あれだけ歌える奴ってそうはいないぜ。俺と組んだら絶対面白いからさ、ねえ、俺とやってみない?」
「楽器屋さん、あんた、さっきは俺の口調がって言ったけど、あんたも急に馴れ馴れしくないか?」
「あっいい忘れたけど、俺とあんた同い年だぜ。用紙に、生年月日書いてもらったろ」
書いたっつうより、書かされたんだよ。決まりだろ。それって、別に教えたわけじゃねえよ。
「別にいいけど。そんなのは。おない年だろうが、なんだろうが。それより俺悪いけど、明日バイトで早いから、お休みなさい」
ガチャ。いい加減うんざりだ。何だよ。せっかく音楽から離れようと思ってるのに。大沢何とかってムカつく野郎といいこの楽器屋の兄ちゃんといい。何で音楽絡みの奴と出会うんだ。ったく。しかもこいつ以外としぶといし。明くる日、バイトから帰って来ると俺のアパートの前で待ちぶぜしやがった。何なんだこいつは。
「よう、楽希。待ってたぜ」
楽希ってもう呼捨てかい。こいつ、いきなり距離を縮めやがった。このギター野郎。俺もその端くれだったけど。
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