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8.空飛ぶ東京
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東京が空を飛んでいる、その事実を俺はしばらく受け入れられなかった。
見知ったビルや東京の象徴が空に浮いている。あまりにも現実離れしすぎている光景。
元々東京を支えていた地盤が掬い取られたアイスクリームのように半球状で街を支え、その上に東京はギリギリ建っていた。
意味がわからない。なんだこの光景は
「な、なんだよアレ」
「キミ、あの街知ってるんだろ?」
ドンキホーテさんの言葉に俺は弱々しくうなずいた。
「故郷です、俺、東京の練馬区っていうところに住んでて……」
「ネリマね、なるほど……」
ドンキホーテさんはまたメモにその情報を書き留める。
だがあの東京タワーは練馬区からは見えづらいはずだ。
もしオレとオレの家族、そして練馬区だけが転移してきたのなら、東京タワーがあるのはおかしい。
東京タワーがあるのは港区だ。
遠近感でよくわからなくなっているが、少なくとも、あの空に浮かぶ東京は練馬区と港区が合わさったほどの大きさには見えない。
「その通りだ、トオル」
すると黙っていたタイプライターがつぶやく。
「アレはお前の住んでいた、練馬区だけで構成された東京ではない」
どういうことだ? タイプライター?
「局所的に抉り取ったのだ。ビュッフェのようにその時、人口密度の高いと判断された地区を選り好みして転移させ、パッチワークのようにああやって繋ぎ合わせた」
なんだそれ……。
「旅行中だと言ったな? トオル」
頭の中のタイプライターの質問にオレは肯定した。
「おそらくそれだ、ホリデーだったのだろ? 一時的に交通や物流が……人の往来が多くなった、だからお前のいた練馬区や、観光名所が標的になったのだろう」
なんだよそれ……オレたちはタイミングとか運が悪かったってことか?
「そうだな、アバール国の軍部が少しでも違う時間に異世界転移魔法を発動していたら、お前の住むところは外れていたかもしれない」
ふざけてる。
「許すわけにはいきません」
オレの感情に同調するようにタイプライターの娘、アリスも金髪を揺らしながらそういう。
「本来なら、異世界のなんの関係もない人たちを巻き込むのはタブー中のタブーなのですから」
アリスはそう言いながら、宙に浮かんだ。東京を一瞥し、そしてオレに向き直る。
「ご安心ください、トオルさん。父さんはもちろん、私もこのようなことを許しはしません」
ありがとう。
オレはそう頭の中でつぶやいた。
「はぁ……」
オレは息を整える。落ち着け、できることを考えるんだ。
タイプライター、教えてくれ。オレの家族は? あの東京にいるのか?
「ああ、今は囚われている。生贄としてな。だがどうやら難航しているようだ」
というと?
「さっきも言ったが異世界の住人を勝手に魔法の生贄にするなどタブー中のタブー。勘づいたお前の世界の神といち早く対応したソール国の騎士団があの東京で人々を保護している」
じゃあオレの家族は無事なんだな。
「ああ、その通りだ。だがいいとは言えない、ほぼ街ごと監禁されていると言っても過言ではない。一度ソール国の騎士団が皆を脱出させようとしたが……結果は……」
わかってる、タイプライター。
その脱出劇の時、オレのオリジナルは死んだ。
「その通りだ」
「父さん……」
アリスはなんの配慮もなく言い放つ父を諫めた。
いいんだアリス、本当のことなんだろ?
「トオルさん……」
そうだ、オレがやることは一つだ。
オレは家族を助ける。
「……ドンキホーテとスイケシュに任せてもいい、お前が無理に戦う理由もないだろう」
それはオレがニセモノだからって言いたいのか? タイプライター。ニセモノだから本物が残した家族を助ける理由なんてないって?
「……そう悪く取るな……」
……悪い。感情的になった。
でもオレもやっぱり家族のために何かできるならしたいよ。
オレはコピーされたニセモノかもしれないけど、オレの家族は……本物だって思えるから。
「トオルさん……」
だからオレも戦う。
オレも家族のために、戦いたい。
─────────────
「よし……!」
オレは頬を叩く。
「トオル?」
ドンキホーテさんが不思議そうにそう尋ね、スイケシュさんも心配そうにオレを見つめる。
「ドンキホーテさん」
オレは目の前にいるドンキホーテさんを見つめた。
「ドンキホーテさんって他に仲間いるんですか? 他の部隊とか」
オレの質問にドンキホーテさんは首を横に振る。
「オレとスイケシュだけだ、中隊規模の仲間がいたけど全滅した」
全滅……オレは息を飲んだ。
「禁忌とされる魔法のせいでな……病原菌を強化するクソにも劣る魔法のせいだ」
スイケシュさんはツバを吐き捨てるようにそう語る。
「幸い、ドンキホーテは強化された病原菌に耐性を持っていたし、オレは偶然治療法を思いついたからなんとかなったが……仲間たちはダメだった」
「自殺だったよ」
ドンキホーテさんの言葉に場がシンと凍る。
「病気を、広げるわけにはいかないってみんな祖国のためにって……首を掻き切ったあと燃えるテントの中で自分を焼いたんだ」
ドンキホーテさんの語るその光景にオレは言葉がでなかった。
それを目の前で見たのかこの二人は、仲間が死に行くその姿を。
「悲しんでくれてるのか?」
ドンキホーテさんはそう言う。
なんのことかと思ったら……オレは泣いてた。
どうしてかはオレにもわからなかった。
「仲間を悼んでくれてありがとうな」
ドンキホーテさんはそう言って笑った。
違う、きっとオレは……ドンキホーテさん達の仲間に同情したに過ぎない。
オレと同じく、彼らは理不尽に何かの為に死なざるを得なかったから……。
オレだけが特別、不幸なんかじゃないのだろう。きっとまた理不尽は襲いかかる。オレだけじゃない……。
きっと家族にも……。
オレは立ち上がる。
「トオル?」
ドンキホーテさんが訝しげな顔をするが、気にせずオレのタイプライターを見つめる。
「トオル覚悟は決まったのか?」
ああ、あとどうせお前のことだこのロクマとかいう遺跡に集まったのも何か理由があるんだろう?
教えてくれ。
「わかった……では開示する。貴様に逆転の一手を」
「父様……!」
アリスがタイプライターを諫めた。
だがオレはアリスに向かって首を振る。
もういいんだ、オレは覚悟できたよ。アリス。
「……わかりましたトオルさんを止める権利など、この世界の神である私達にはありません……行きましょう──」
アリスの目が光り、タイプライターがオレを指差す。
「私の兄様を起こしに行く時です」
アリスがそう言った瞬間だった。
激しい痛みにオレは襲われる。
「ぐっがっ!?」
頭が割れそうだ。
「トオル!?」
「おい! 何をされた!?」
ドンキホーテさんとスイケシュさんの心配そうな声が響くがオレは手のひらを彼らに向けて、大丈夫だ、心配はいらないとサインを出す。
「ぐっ、うぅぅ……っ」
頭痛が収まった。
オレは安堵の息を吐く。
「だ、大丈夫か?」
ドンキホーテさんの言葉にオレは頷き、そして言った。
「ドンキホーテさん、スイケシュさん。オレ知ってるんです」
「何を?」
「オレに使用権限がある古代飛行戦艦の場所を」
逆転の一手、その正体を。
見知ったビルや東京の象徴が空に浮いている。あまりにも現実離れしすぎている光景。
元々東京を支えていた地盤が掬い取られたアイスクリームのように半球状で街を支え、その上に東京はギリギリ建っていた。
意味がわからない。なんだこの光景は
「な、なんだよアレ」
「キミ、あの街知ってるんだろ?」
ドンキホーテさんの言葉に俺は弱々しくうなずいた。
「故郷です、俺、東京の練馬区っていうところに住んでて……」
「ネリマね、なるほど……」
ドンキホーテさんはまたメモにその情報を書き留める。
だがあの東京タワーは練馬区からは見えづらいはずだ。
もしオレとオレの家族、そして練馬区だけが転移してきたのなら、東京タワーがあるのはおかしい。
東京タワーがあるのは港区だ。
遠近感でよくわからなくなっているが、少なくとも、あの空に浮かぶ東京は練馬区と港区が合わさったほどの大きさには見えない。
「その通りだ、トオル」
すると黙っていたタイプライターがつぶやく。
「アレはお前の住んでいた、練馬区だけで構成された東京ではない」
どういうことだ? タイプライター?
「局所的に抉り取ったのだ。ビュッフェのようにその時、人口密度の高いと判断された地区を選り好みして転移させ、パッチワークのようにああやって繋ぎ合わせた」
なんだそれ……。
「旅行中だと言ったな? トオル」
頭の中のタイプライターの質問にオレは肯定した。
「おそらくそれだ、ホリデーだったのだろ? 一時的に交通や物流が……人の往来が多くなった、だからお前のいた練馬区や、観光名所が標的になったのだろう」
なんだよそれ……オレたちはタイミングとか運が悪かったってことか?
「そうだな、アバール国の軍部が少しでも違う時間に異世界転移魔法を発動していたら、お前の住むところは外れていたかもしれない」
ふざけてる。
「許すわけにはいきません」
オレの感情に同調するようにタイプライターの娘、アリスも金髪を揺らしながらそういう。
「本来なら、異世界のなんの関係もない人たちを巻き込むのはタブー中のタブーなのですから」
アリスはそう言いながら、宙に浮かんだ。東京を一瞥し、そしてオレに向き直る。
「ご安心ください、トオルさん。父さんはもちろん、私もこのようなことを許しはしません」
ありがとう。
オレはそう頭の中でつぶやいた。
「はぁ……」
オレは息を整える。落ち着け、できることを考えるんだ。
タイプライター、教えてくれ。オレの家族は? あの東京にいるのか?
「ああ、今は囚われている。生贄としてな。だがどうやら難航しているようだ」
というと?
「さっきも言ったが異世界の住人を勝手に魔法の生贄にするなどタブー中のタブー。勘づいたお前の世界の神といち早く対応したソール国の騎士団があの東京で人々を保護している」
じゃあオレの家族は無事なんだな。
「ああ、その通りだ。だがいいとは言えない、ほぼ街ごと監禁されていると言っても過言ではない。一度ソール国の騎士団が皆を脱出させようとしたが……結果は……」
わかってる、タイプライター。
その脱出劇の時、オレのオリジナルは死んだ。
「その通りだ」
「父さん……」
アリスはなんの配慮もなく言い放つ父を諫めた。
いいんだアリス、本当のことなんだろ?
「トオルさん……」
そうだ、オレがやることは一つだ。
オレは家族を助ける。
「……ドンキホーテとスイケシュに任せてもいい、お前が無理に戦う理由もないだろう」
それはオレがニセモノだからって言いたいのか? タイプライター。ニセモノだから本物が残した家族を助ける理由なんてないって?
「……そう悪く取るな……」
……悪い。感情的になった。
でもオレもやっぱり家族のために何かできるならしたいよ。
オレはコピーされたニセモノかもしれないけど、オレの家族は……本物だって思えるから。
「トオルさん……」
だからオレも戦う。
オレも家族のために、戦いたい。
─────────────
「よし……!」
オレは頬を叩く。
「トオル?」
ドンキホーテさんが不思議そうにそう尋ね、スイケシュさんも心配そうにオレを見つめる。
「ドンキホーテさん」
オレは目の前にいるドンキホーテさんを見つめた。
「ドンキホーテさんって他に仲間いるんですか? 他の部隊とか」
オレの質問にドンキホーテさんは首を横に振る。
「オレとスイケシュだけだ、中隊規模の仲間がいたけど全滅した」
全滅……オレは息を飲んだ。
「禁忌とされる魔法のせいでな……病原菌を強化するクソにも劣る魔法のせいだ」
スイケシュさんはツバを吐き捨てるようにそう語る。
「幸い、ドンキホーテは強化された病原菌に耐性を持っていたし、オレは偶然治療法を思いついたからなんとかなったが……仲間たちはダメだった」
「自殺だったよ」
ドンキホーテさんの言葉に場がシンと凍る。
「病気を、広げるわけにはいかないってみんな祖国のためにって……首を掻き切ったあと燃えるテントの中で自分を焼いたんだ」
ドンキホーテさんの語るその光景にオレは言葉がでなかった。
それを目の前で見たのかこの二人は、仲間が死に行くその姿を。
「悲しんでくれてるのか?」
ドンキホーテさんはそう言う。
なんのことかと思ったら……オレは泣いてた。
どうしてかはオレにもわからなかった。
「仲間を悼んでくれてありがとうな」
ドンキホーテさんはそう言って笑った。
違う、きっとオレは……ドンキホーテさん達の仲間に同情したに過ぎない。
オレと同じく、彼らは理不尽に何かの為に死なざるを得なかったから……。
オレだけが特別、不幸なんかじゃないのだろう。きっとまた理不尽は襲いかかる。オレだけじゃない……。
きっと家族にも……。
オレは立ち上がる。
「トオル?」
ドンキホーテさんが訝しげな顔をするが、気にせずオレのタイプライターを見つめる。
「トオル覚悟は決まったのか?」
ああ、あとどうせお前のことだこのロクマとかいう遺跡に集まったのも何か理由があるんだろう?
教えてくれ。
「わかった……では開示する。貴様に逆転の一手を」
「父様……!」
アリスがタイプライターを諫めた。
だがオレはアリスに向かって首を振る。
もういいんだ、オレは覚悟できたよ。アリス。
「……わかりましたトオルさんを止める権利など、この世界の神である私達にはありません……行きましょう──」
アリスの目が光り、タイプライターがオレを指差す。
「私の兄様を起こしに行く時です」
アリスがそう言った瞬間だった。
激しい痛みにオレは襲われる。
「ぐっがっ!?」
頭が割れそうだ。
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ドンキホーテさんとスイケシュさんの心配そうな声が響くがオレは手のひらを彼らに向けて、大丈夫だ、心配はいらないとサインを出す。
「ぐっ、うぅぅ……っ」
頭痛が収まった。
オレは安堵の息を吐く。
「だ、大丈夫か?」
ドンキホーテさんの言葉にオレは頷き、そして言った。
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