篠辺のお狐様

梁瀬

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大神様

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『なんと!両側に同じ顔じゃ。そちらは双子か?双子で…東雲と篠辺の神主かっ!』
 さすが…お狐様の仕えし神。聞いてねぇし、折れねぇな。(左京心の声)
その辺のおばちゃんと一緒で、止まらない…。消音スキル発動だな。(右京心の声)
『この神社は、神主と巫女を除いて、随分とおるようじゃが、皆そちらの式神か?』
 ダメだな。考えが言葉になって漏れてる事に気付いちゃいねぇ。(左)
『〝ゆうのゆう〟。左猿と猿は一緒であろう…。〝犬〟〝夏〟だったか?』
見た目おっとり美人なだけに残念だ。もう口から水が出るライオンに見える。(右)
『運ばれておる故、仕方がない事じゃが、揺れる視界に酔いそうじゃ。』
ホント、黙れ。(双子)

『おぉ!真神の狼じゃ。久しいのぉ…息災であったか?』
「この台の上に置いてください。」
鴉山椒が、皆を誘導した。
『ん?女子おなごの声か?良く見えん…ゆうのゆうが邪魔じゃ。』
鏡の設置をしていても、神の口から漏れ出るソレは、最早もはや垂れ流し…。

 鏡から垂れ流される、鷹揚おうようで多めの言葉に
「え?とかいう事ないですよね?」
しょうさま、あれの製造元は、朝姉さまです。」
鴉山椒と杏の会話は、音量は抑えてるが、ハッキリとした物言いで、的を射ていた。
男性陣は〝似てる〟と同意し、〝お狐様の仕えし神〟という事に納得した。

「ごめんね。遅くなっちゃっ…え?何かあったの?」
朝霧と木通の登場で、皆が揃った。
『何と‼夕の巫女と同じじゃ。巫女も双子なのか⁈…。もっとよく見せておくれ。』
何も知らずに来た二人には、鏡に映る黒髪の女は、珍しいだけの価値しかなかった。
「すごぉい!なになに?皆揃って、私を待っていてくれたの?」
すでに言葉の流動食で、胃もたれと消化不良を起こしてるのに、コイツもか…。

「姉さん、状況説明してないから理解出来ないだろうけど、これからの話の流れで
読み取って。理解出来るまで発言しないでね。あの方だけで手いっぱいだから。
アンタも良いわね!不用意に発言したら、口縫い付けて〝郁子むべ〟にしてやるから。」
 夕霧の珍しく強引なやり方に、驚いたが、どうやら説明する手間も惜しいようだ。

『拝殿に運ばれて来たが、このままでは出られぬのじゃ。隅々まで磨いておくれ。』
〖宇迦之御魂神様、長らくご無沙汰しております。真神一族の狼です。〗
そう大神様は挨拶した。
『久しいのぉ。じゃが、倉稲と呼んでおくれ。息災であったか?』
〖はい。篠辺の狐も変わりなく。〗
『そうか…良かった。真神の狼よ、あれは未だへそを曲げたままであろうか?』
〖いいえ。そのような事はございません。ただ、あれ以降、他との関わりを全て
断っております。煩わしい事を嫌うたちですので…。〗
今までの狐の様子を、狼は簡単に伝えた。

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