元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね?

紅葉ももな(くれはももな)

文字の大きさ
151 / 178

なんでこんなことに……

しおりを挟む
 辿り着いたドラグーン王国側の国境の街はまるで通夜でも行われているのではないかと邪推したくなるほど不気味に静まり返っていた。

 私達がスノヒス国入りする際にあった活気が消失しており、人気がなくなった街中にキィキィと宿屋を示す看板の金具が悲しげな音を響かせている。

「何があったんだ?」

 馬から降り立った護衛達と一緒に宿屋の両開きの扉を押し開けると、暖気が外に逃げようと私の身体を撫でていく。

「もう駄目だ……この街を捨てて逃げよう」

「そんなこと言ったって一体何処に行くって言うんだよ、戦場へ行けってか」

 湿気っぽい雰囲気で酒を呑みながらボソボソと話す客達には覇気がない。
 
 そんな彼らの席の後ろを通り抜け宿屋の受け付けに近付けば、おんぶ帯を作った際にシーツを分けてくれた女将さんが、ボゥっとしたまま古びた椅子に座っている。

「すみません、先に連れがこちらへ来ていると思うのですが、部屋はありますか?」

「ん? 珍しい、お客さんかい……見ての通りガラガラだよどこでも好きな部屋を使っとくんな」

 そんな投げやりな態度に一瞬護衛達が殺気立ち腰に佩いた剣に手を伸ばしたが、私の制止の合図に柄から手を離した。

 本当にレイナス王国の護衛達は血の気が多くて困る。

「では鍵をお借りします」

 行きと同じ部屋を数室借り受け、リヒャエルが宿泊費を前払いで渡す。
 
「しかしどうかなさったんですか? 半月程前に立ち寄った時には大変賑わいを見せていたと記憶しているんですが」

 疑問に思った事が口からスルリと滑り出る。

「国境に棲み着いた赤いドラゴンのせいさ……駆除しようにも村の若い男たちが奴の巣を探しに行ったが見つからず、恐怖に怯えて街の若い者らは子供を連れて次々引っ越していった。 残ったのは行くあてのない私らみたいな行くあてのない年寄りばかり」

「不気味な生き物が棲み着いたと耳が早い商人たちがこの街を避けたせいで物資も入ってこない」

 その言葉にこの寒いなかタラリと脂汗が垂れた気がするのは気のせいだろうか。

「今更巣を見つけたところで、あんな巨大なドラゴンをどうやって退治しろって言うんだい、この街は終わりだよ!」
 
 両手で顔を覆い隠し、嗚咽を漏らしながら泣き出した女将の姿に後ろを振り返れば、リヒャエルは苦笑いしているし、クロードは真面目くさった顔で頷いている。

 私達の到着に気がついたロブルバーグ様達も宿の一階に降りてきていたらしく、赤いドラゴンと聞いて何かを察したらしい。

「これ私のせい?」

 自分を指差して聞けば皆示し合わせたように頷いた。

「ですよね~……」

 がっくり項垂れたものの、やっちまったものは仕方がない。

 風評被害が出てしまってはこの街を復興させるのは難しいだろう。

「ちょっと街長さんの所に行ってくる」

 街長と話し合った結果、木工工房のゴンサロさん一家だけでなく街に残る住人の希望者すべてをレイナス王国へ連れ帰る事になった。

 後日、ドラグーン王国の辺境の街の住民すべてが国境に棲み着いたドラゴンによってを喰らいつくされたと噂されるようになったらしいが、うちのサクラは無実です。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

処理中です...