元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね?

紅葉ももな(くれはももな)

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特攻

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 じゃん拳、それは前世で行われていた神聖な勝負方法。

 自らの望む物を第三者と奪い合わねばならなくなった時、己の持てる全てを使って行われる真剣勝負。

 伝統的な掛け声と共に繰り出される一手に魂をのせて勝利をつかみとる。

 そう、日本人ならば老若男女必ず一度は目にしたことがあるだろうお馴染みのあれである。

「なにがどうしたらこうなるかなぁ?」

 目の前でただのじゃん拳がいつのまにやら乱闘騒ぎに発展しているのは戦闘民族ならではだろうか。

 順番に相手をしてもらおうと思って騎士たちにじゃん拳を教えたまでは良かった。

 しかし日頃剣筋やら矢の軌道やら動体視力が優れたものたちの勝負が難航し、後だしだ! 今の勝負は無効だ! やんのかこらぁー!?
 
 とあっという間に殴りあいに発展し、止めに入った騎士たちまで巻き込んで大乱闘に発展した。

「おい! やめろ」

 頭に血が上った騎士たちに声をかけるも、乱闘に興奮している騎士達の声にかきけされる。

「もぅ、やめなさーい!」

 キャロラインもなんとかこの騒ぎを止めようと声をかけるが、全く収まる気配がない。

 むしろ鎧を来た騎士たちの人数が次々
と増えており、あっという間に喧嘩祭りに発展した。

 むしろ日頃のうっぷんを発散するように嬉々として殴り合う。

「やめなさ……うわっ!?」

 殴り飛ばされたらしい騎士のひとりがキャロラインに向かって飛んで来た。

「キャロ!」

 急いで走り寄り腕をつかんで引き寄せる。

 飛んできた騎士はキャロラインと私の護衛に寄って地面に叩き伏せられている。

「大丈夫かキャロ、怪我はないな?」

「大丈夫です」

「良かった……エリザ! キャロラインを連れて訓練場の端まで下がっていろ!」

「御意!」

 咄嗟に掴んでしまった腕や引き寄せた時に肩などを痛めていないか確認し、キャロラインを彼女の専属女性騎士であるエリザに引き渡し、被害がでないであろう後方に下がらせた。  

 エリザは元々ミリアーナ叔母様の親衛隊だったひとりで、女性であるにも関わらず男装では強く凛々しく、正装では女神のごとく美しいミリアーナ様のようになりたいと女性騎士を目指したらしい。

 ちなみに女神呼びは親衛隊では当たり前らしい。

 本音としてはドラグーン嫁入りにも追従したかったらしいのだが、いかんせんその当時はエリザは未成年で願い叶わず、女性騎士となってからはキャロラインの専属護衛に任命されている。

 しかし……ちょっとオイタが過ぎるよねぇ……?

 未だに乱闘騒ぎの渦中にある騎士たちもとい能筋軍団に視線を向ける。

「クロード」

「こちらを」

 背後に控えていたクロードに肩越しに右手を差し出すと、直ぐ様得物が差し出される。

 一瞬長さから短剣かと思ったが、短剣にしては重さのバランスがおかしい。

 持たされたものの正体を確かめるべく目の前に持ってくる。

 木製の握りやすい柄の部分は力が加わりやすいように絶妙なカーブがついており、柄の先端には片側ずつ金属製の円柱とつるはしのように先端を尖らせて左右に長く張り出した頭部が持ち手に直角に連結されている。

 これ、トンカチかな? 鍛冶や鉱山なんかで固い岩盤とか砕くために使われるやつじゃない?

 いやいやいや、これは武器じゃなくない?

 呆れたようにクロードを振り返ればいい笑顔のクロードとリヒャエルが頷いていた。

「馬鹿は叩かなければなおりません」

「対プレートアーマーには短剣よりも威力がありますからね」 

 
 にっこりいい笑顔で送り出されてしまった。

 なんだろう……せっかくの和甲冑なら刀が良かったのにトンカチが武器ってなんか微妙。

 せめて短槍が良かったな……

「はぁ……仕方ないか」 

 武器のトンカチを握りしめ、私は大乱闘に特攻した。
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