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突然の婚約発表
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奥さんか恋人の残り香なのだろうか、後を引く甘さの香りに、美丈夫には似合わないなぁと違和感を覚えつつ、ギラム殿の後ろをついていく。
通路の警護を固めていたこの近衛兵はギラム殿と私の姿を確認すると直ぐに道を開けた。
ギラム殿に案内されて向かったのは王族の控室だった。
「ギラム・ゼキーナです、レイナス王国のシオル・レイナス殿下をお連れいたしました」
ギラム殿が声をかけると内開の重厚な扉がゆっくりと開いていく。
どうやら室内には他にも何組か集まっているようで、先に案内されていたらしいゼスト殿が待っていた。
「殿下、おかげんはいかがでしょうか?」
「うん、外の空気を吸ったからかな、だいぶよくなったよ」
私がゼスト殿と合流したことを確認したギラム殿は、簡単に退席の挨拶を告げて、他の招待客を迎えに今入ってきた扉を後にした。
ロンダークさんはまだ戻ってきてはいないようで、広間にいるレイナス関係者は私とゼスト殿だけだ。
じつは、国を出る際にゼスト殿の生家で、父親のハスティウス公爵から、ゼスト殿に妻を迎えるように説得してほしいと懇願されていた。
ハスティウス公爵家の三男で自身も伯爵位を得ているゼスト殿にはその見目麗しい容姿もあり、日々縁談が絶えないとの事。
しかしゼスト殿は妻を迎えようとせず、心配したハスティウス公爵が、レイナス王国の令嬢でなくても構わないからと今回の使節団に陛下の許可を得てゼスト殿を放り込んだ。
個人的には、ゼスト殿が未だにミリアーナ叔母様を愛しているのも知っているだけに、ロンダークさんがいる前ではなかなか話せずにいた。
まだ時間が掛かりそうだし、ロンダークさんがいない今がチャンスかもしれない。
「ゼスト殿、どなたか好いた方はおられないのですか?」
室内から目を話さずに声をかけると、ゼスト殿も視線を落とさずにため息を吐いた。
「もしや父上から何か懇願されましたか?」
「えぇ、ゼスト殿に妻を娶るように説得してくれと頼まれてしまいました」
「……はぁ、わかってはいるんです。 幸せそうな彼女の姿を見るたびに、もう自分のものにはならないって……」
きっとミリアーナ叔母様の姿を思い浮かべているのだろう、しばらく二人の間に落ちた沈黙を破ったのは、ゼスト殿だった。
「わかりました、国へ帰ったら縁談を受け入れます」
「……いいのですか?」
自分で勧めておいてなんだが、ゼスト殿がやけに辛そうでつい聞いてしまった。
「……はい、私も貴族の一員ですから」
諦めたくても、決して結ばれることはないのだとわかっていても、想いはつのる。
ゼスト殿の言葉がのっしりと心にのし掛かる。
はたして家同士の政略結婚が当たり前なこの貴族の世界で、恋愛結婚できる夫婦はどれくらいいるのだろうか。
想いあっていたとしても、両者の家格が釣り合わなければ、恋愛結婚の難易度は跳ね上がる。
遠く離れたアンジェリカの姿を思い浮かべていると、広間にレイス国王夫妻とアールベルト王太子が出てきた。
続いて出てきたのは、なぜかレイナス王国と国境を接するマーシャル皇国のロジャース皇帝とロマーナ正妃が入場してきた。
親密な雰囲気を纏った両者の姿にあちらこちらでざわめきが広がる。
しかし、王族であるナターシャ姫と、マーシャル皇国のカイル皇太子の姿が見当たらない。
「お集まり頂きありがとうございます、皆様にご報告がございます。 我が娘ナターシャとマーシャル皇国の皇太子カイル殿下の婚約を発表いたします」
カストル二世陛下の言葉に、ざわめきが大きくなる。
よく見ればアールベルトは笑顔を貼り付けているものの、不機嫌オーラを垂れ流している。
うわぁ~、なんか今晩も酒を持参してやってきそうな雰囲気だ。
それぞれの国の使者達が代わる代わる両国の繁栄と発展を願う祝辞を述べている。
私も一応国王代理のため祝辞を述べ、両国の繁栄と発展を願った。
通路の警護を固めていたこの近衛兵はギラム殿と私の姿を確認すると直ぐに道を開けた。
ギラム殿に案内されて向かったのは王族の控室だった。
「ギラム・ゼキーナです、レイナス王国のシオル・レイナス殿下をお連れいたしました」
ギラム殿が声をかけると内開の重厚な扉がゆっくりと開いていく。
どうやら室内には他にも何組か集まっているようで、先に案内されていたらしいゼスト殿が待っていた。
「殿下、おかげんはいかがでしょうか?」
「うん、外の空気を吸ったからかな、だいぶよくなったよ」
私がゼスト殿と合流したことを確認したギラム殿は、簡単に退席の挨拶を告げて、他の招待客を迎えに今入ってきた扉を後にした。
ロンダークさんはまだ戻ってきてはいないようで、広間にいるレイナス関係者は私とゼスト殿だけだ。
じつは、国を出る際にゼスト殿の生家で、父親のハスティウス公爵から、ゼスト殿に妻を迎えるように説得してほしいと懇願されていた。
ハスティウス公爵家の三男で自身も伯爵位を得ているゼスト殿にはその見目麗しい容姿もあり、日々縁談が絶えないとの事。
しかしゼスト殿は妻を迎えようとせず、心配したハスティウス公爵が、レイナス王国の令嬢でなくても構わないからと今回の使節団に陛下の許可を得てゼスト殿を放り込んだ。
個人的には、ゼスト殿が未だにミリアーナ叔母様を愛しているのも知っているだけに、ロンダークさんがいる前ではなかなか話せずにいた。
まだ時間が掛かりそうだし、ロンダークさんがいない今がチャンスかもしれない。
「ゼスト殿、どなたか好いた方はおられないのですか?」
室内から目を話さずに声をかけると、ゼスト殿も視線を落とさずにため息を吐いた。
「もしや父上から何か懇願されましたか?」
「えぇ、ゼスト殿に妻を娶るように説得してくれと頼まれてしまいました」
「……はぁ、わかってはいるんです。 幸せそうな彼女の姿を見るたびに、もう自分のものにはならないって……」
きっとミリアーナ叔母様の姿を思い浮かべているのだろう、しばらく二人の間に落ちた沈黙を破ったのは、ゼスト殿だった。
「わかりました、国へ帰ったら縁談を受け入れます」
「……いいのですか?」
自分で勧めておいてなんだが、ゼスト殿がやけに辛そうでつい聞いてしまった。
「……はい、私も貴族の一員ですから」
諦めたくても、決して結ばれることはないのだとわかっていても、想いはつのる。
ゼスト殿の言葉がのっしりと心にのし掛かる。
はたして家同士の政略結婚が当たり前なこの貴族の世界で、恋愛結婚できる夫婦はどれくらいいるのだろうか。
想いあっていたとしても、両者の家格が釣り合わなければ、恋愛結婚の難易度は跳ね上がる。
遠く離れたアンジェリカの姿を思い浮かべていると、広間にレイス国王夫妻とアールベルト王太子が出てきた。
続いて出てきたのは、なぜかレイナス王国と国境を接するマーシャル皇国のロジャース皇帝とロマーナ正妃が入場してきた。
親密な雰囲気を纏った両者の姿にあちらこちらでざわめきが広がる。
しかし、王族であるナターシャ姫と、マーシャル皇国のカイル皇太子の姿が見当たらない。
「お集まり頂きありがとうございます、皆様にご報告がございます。 我が娘ナターシャとマーシャル皇国の皇太子カイル殿下の婚約を発表いたします」
カストル二世陛下の言葉に、ざわめきが大きくなる。
よく見ればアールベルトは笑顔を貼り付けているものの、不機嫌オーラを垂れ流している。
うわぁ~、なんか今晩も酒を持参してやってきそうな雰囲気だ。
それぞれの国の使者達が代わる代わる両国の繁栄と発展を願う祝辞を述べている。
私も一応国王代理のため祝辞を述べ、両国の繁栄と発展を願った。
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