元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね?

紅葉ももな(くれはももな)

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求めし物。

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 さて身なりを整えて登城すれば王族の謁見に使われる部屋へと通されると思いきや、案内されたのは王妃様の私室、ミリアーナ叔母様のお部屋でした。

 叔母様、いくら血縁でも他国の王子をこんな宮殿の奥まで招いちゃ駄目でしょう!

「シオル!大きくなりましたね。どれ、どれ程強くなったか確かめてあげるわ。ちょっと付き合いなさいな!」

 簡単な挨拶をした途端に叔母様が剣を私に手渡すと、王妃様のお部屋の奥にある広間に引き摺って行こうとする。

「王妃陛下!今は大事な時期なのですよ!お止めください!」

「そうです!お好きな焼き菓子をお持ちしますから是非ともお座り下さい!」

 広間へ続く扉を必死に死守する侍女さん方。

「ええい!平気だ、これくらいで流れてしまうほど、レイナス王家の血筋は柔にはできてないわ。」

「レイナス王家の武勇は聞き及んでおりますが、ドラグーン王家は武勇よりも知略の家系で御座います!無理はお子に障ります!」

 へっ、お子?

 ミリアーナ叔母様の腹部を確認するもあまり目立った様子は無いようで・・・・・・、本当に妊婦なの!?  
 
「王妃陛下、この度はご懐妊おめでとうございます!是非大人しくいたしましょう。それがいいです!」

 長旅で疲れているのに、脳筋妊婦のストレス発散に付き合ってられるか!

 これ以上妊婦のミリアーナ叔母様を刺激しないようにか、早々に会見がきりあげられた。

 本当なら今夜は王城で一夜を過ごし、これから十五歳の成人を迎えるまでの五年間過ごす事になるドラグーン王国のセントライトリア学園へ向かう予定だったのだけど、急遽前倒しで王族用の学生寮に入寮することになった。

 そして現在目の前にそびえる学生寮を見上げてアホ面をさらしている訳だが、この豪邸が学生寮ですか?

 レイナスの王城並に広いんだけど、数人しか居ない王族のためにこんなに大きな建物要らなくない?

 今年入寮する王族は私とお隣レイス王国の我が友アールベルト王子の二人だ。

 在学中の生徒に私達以外の王族は居らず、ほぼ貸しきりだ。

 在学生に王族が居ないときはこの寮は閉鎖されているらしい。

 うむ、実に無駄だ。これだけ広い寮ならさぞかし掃除やら何やらで人手が要りそうだ。

 流石大国ドラグーン王国!

 入学式は一週間後と言うことなので、日が落ちると早々に寝具へ入った。

 次の日朝も早く目が覚めた私は与えられた寮を探検することにした。

 監視つきだとなにかと動きにくいので、お目付け役のロンダークが起きてくる前に行動開始だ。

 だだっ広い廊下は暗く、警備は手薄のようだった。

 硝子がはまった窓から外を見れば、警備の兵が巡回しているのがわかる。

 寮への出入りを厳しく制限することで、寮内の警備を少なくしているのかもしれない。

 動きやすくて大歓迎だ。四六時中見張られていたら動きにくいことこの上ない。

 鼻唄混じりに寝室がある最上階である三階から階段の手摺を滑り台替わりにして階下へ降りる。

 さて、台所はどこだろう。キョロキョロと周りを見回して適当に扉を開け、中を確認しては閉めていく。

 何度か使用人らしい人とすれ違ったが、他国の王子が従者も連れずにひとりで廊下にいるとは思わないのだろう。

 水を貰うために厨房へ行きたいと告げれば、従者と間違われて親切に案内してくれた。

 広い厨房では既に竈に火が入り、料理が始まっているようだった。

 まだ忙しい時間にはなっていないようだったので、一人捕まえて買ってきた物の場所を聞いてみる。

「すいません!レイナス王国の者ですが、持ち込んだ荷物はどちらでしょう?」

 訪ねれば、案内された倉庫の一角で山積みの大豆が入った甕と買ってきた塩が入った袋ををそれぞれ二つほど持ち出して、厨房へ持ち込んだ。

「御忙しいところ申し訳ありませんが、この豆を蒸していただけませんでしょうか?」

 声を聞いて厨房から料理人らしい壮年の男性が顔を出した。

「ん?見たことない顔だな。レイナスの王子様のとこの人か?どの豆だい?」

 本人ですとは言えないので、そうだとだけ告げる。

 嘘はついてない。だってレイナス王国の者には違いないからね。

「この豆なんですけど。」

 袋から大豆をとり出して手のひらに乗せて見せた。

「ん?こりゃソイ豆だな。立派なもんだ。あんたこの豆で一体何を作るんだい?乾燥したソイ豆なんて録な使い道無かろうに。」

 ほうほう、こちらではソイ豆と言う名前なんですね。

「昔お世話になった教会の方が、海の向こうにある国から交易で流れてきたソイ豆を原料にした調味料を食べたことがあるらしくて、再現できないものかと思いまして。」 

「へぇ、これが調味料にねぇ・・・・・・、うん?交易品の調味料?」

 男性は顎に手をかけて思案したあと、厨房の隅の扉へ移動すると、扉を開けて中からなにやら取り出すとこちらへ戻ってきた。

「なぁ、もしかしてこれか?」

 手には小さな壺を持っていた。

 何かの革で密封された壺の中身を男性の許可を得て確かめる。

 フワリと薫る懐かしい芳香!

「これ!これを何処で!譲ってください!」

 味噌だ!味噌!見付けたヤッホイ!

「駄目だ駄目だ、こいつはこの壺で俺の月収三ヶ月分もしたんだぞ。はいどうぞなんてそう簡単に渡せるもんか!」

 男性、おっちゃんの月給がいくらかは知らないけど、高価なんだな。

「わかりました!この調味料を一緒に量産しましょう!」

「はぁ?製造方法どころか材料すら分からんものが、そう簡単に造れるわけがあるか!」

「まぁ、駄目でもともとです。」

 一番の難問だった麹菌は完成品の味噌が手に入ったことでクリアしたも同然。

 時間がかかろうとやれば出来る!

「宜しくお願いします!おじさん!」

「良くわからないがとにかくおじさんと呼ぶな!俺はまだ二十八だ!名前はアレホ、この厨房の料理長だ。」

「宜しくアレホさん!私はシオル、シオル・レイナスです!」

「ち、ちょっとまて!レイナスって・・・・・・。」

「あっ、今日から五年間お世話になります。レイナス王国第一王子です。」

 名乗りと同時に厨房がどよめいた。


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