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「オルフェウス様…。呪いが解けたら私を娶ってくださるのでしょう?一緒に王都に行って舞踏会で踊る約束をしたんですよ?まだ何も叶えてくれていないではないですか…」
クロエが何度呼びかけてもオルフェウスは動かない。
「オルフェウス様…」
クロエの涙がオルフェウスの顔にポタポタと垂れる。
( お母さん…、オルフェウス様を助けて…。私はまだオルフェウス様に伝えていない言葉があるの… )
クロエは心の中で母に訴える。
悲しみに溢れる部屋の中、カイロスだけが自分のせいではないと喚き散らしていた。
「オルフェウス様、目を覚ましてください…」
身体を揺すっても微動だにしないオルフェウス。
( 愛しています。この世の誰よりも… )
クロエはオルフェウスに口づけた。
「直接言わせてください。あなたの目を見て言いたいの…」
クロエの涙がもう一度オルフェウスの顔に垂れる。
その時、オルフェウスの身体が、屋敷全体が光りだした。
「な、なんだこれは!」
取り乱すカイロスを気に留める者などいない。
クロエもトーマスも、アビゲイルや他の使用人達も光に包まれるオルフェウスや屋敷を何も言わずに見つめていた。
一際強い光を放ったあと、突如として光は消えた。
「オルフェウス様!」
クロエが覗き込むと、オルフェウスの顔が綺麗になっている。
何が起こったのだろうか…?
クロエが綺麗に整ったオルフェウスの顔を撫でると、オルフェウスは目を覚ました。
「私は一体…?」
混乱しているオルフェウスをクロエは強く抱きしめる。
「良かった!お怪我は大丈夫ですか?」
「怪我…?」
そういえばクロエを庇って背中を刺されたんだった。
だが何処を見ても刺し傷は無く、痛みすら無かった。
「オルフェウス様、お顔が…」
「顔…?」
アビゲイルがオルフェウスにさっと手鏡を渡した。
「これは…?」
「オルフェウス様のお顔です!呪いが解けたんだわ!」
「これが私の顔…?」
何度も触って確かめる。
滑らかな肌。引き攣っていない口元。目も鼻もハッキリとわかる。
「本当に呪いが解けたのか…?」
「そうです!解けたんです!」
オルフェウスはクロエを抱き上げた。
「信じられない!まさか本当にこんな日が来るとは思わなかった!」
皆がこの奇跡に涙していた。
「クロエ、ずっと伝えたかった言葉があるんだ。聞いてくれるか?」
「はい、私にもあるので聞いていただけますか?」
「あぁ、だが先に言わせて欲しい。クロエ、私は君を愛している。生涯大切にすると誓おう。だから、私と添い遂げてくれないだろうか?」
「私もオルフェウス様を愛しております。あなたと未来を歩んで行きたいのです」
「おめでとうございます!」
使用人達が二人を囲んで祝福し、カイロスは蚊帳の外。
「いやぁ、実にめでたいことですな。これもひとえに私のお陰でしょうか?」
皆に一斉に睨まれたカイロスはタジタジになりながらも話し続ける。
「怪我をしなければ呪いは解けなかっただでしょう!私がいなければずっと呪われたままだったんですよ?」
クロエは地面に下ろしてもらってカイロスの前に立った。
「旦那様、私は何故階段下の物置きで育てられたのでしょうか?」
「それはヘラが決めた事だ。私の一存ではない」
「私は旦那様の本当の娘なのですか?」
「もちろんだとも。私の大切な娘だよ」
オルフェウスはクロエの横に並んでカイロスに告げた。
「あなたには感謝しているよ。私とクロエが出会えたのはあなたのお陰だ」
「そうでしょう、そうでしょう」
揉み手をしながら卑下た顔で笑うカイロス。
クロエはオルフェウスの顔を伺い、オルフェウスは静かに頷いた。
「旦那様、これを…」
クロエは身に着けていたブローチをカイロスに渡す。
「おぉ、これは見事な宝石だな」
「旦那様の実の娘ではないと言われた方が救われたのかも知れません…。これを売ればかなりの額になるでしょう。これを機に親子の縁を切って頂きたく思います」
「あ、あぁ。お前が望むのなら構わないが、これでは足りないな…」
「それならこれも持って行くと良い」
オルフェウスは大きな宝石の付いた指輪をカイロスに渡した。
「二度と私達には関わらないでくれ」
「ははは。これだけ頂ければ充分です。こんな気味の悪い所など二度と来ませんよ」
カイロスはブローチと指輪を懐に仕舞った。
屋敷を出ていこうとするカイロスにクロエが最後の別れの言葉を告げる。
「旦那様、オルフェウス様の元に送ってくださりありがとうございました。もう二度とお会いすることはありませんが、ガルシア男爵家の幸せを願っております」
カイロスは返事もせずに屋敷を出ていき、自分の屋敷へと戻っていった。
トーマス達が玄関に塩を撒いている様子を見ながらクロエは呟いた。
「生まれて初めて嘘をついてしまいました…」
「嘘…?」
「はい。幸せを願っているだなんて真っ赤な嘘です」
「そうか…。それなら男爵家は幸せにはなれないだろうな」
オルフェウスはクロエの肩を抱いて楽しそうに答える。
「そうでしょうか…?」
「あぁ、クロエの言葉には力が宿るのだろう?」
「あ、そうでした…」
二人は笑いあった。
「幸せを願っていないだけで不幸を願っているわけではないのだから、大丈夫だろう」
「そういうものでしょうか…?」
「それよりも私達は幸せになれると思うか?」
クロエは満面の笑みで答える。
「私達には絶対に幸せな未来しかありませんよ」
クロエが何度呼びかけてもオルフェウスは動かない。
「オルフェウス様…」
クロエの涙がオルフェウスの顔にポタポタと垂れる。
( お母さん…、オルフェウス様を助けて…。私はまだオルフェウス様に伝えていない言葉があるの… )
クロエは心の中で母に訴える。
悲しみに溢れる部屋の中、カイロスだけが自分のせいではないと喚き散らしていた。
「オルフェウス様、目を覚ましてください…」
身体を揺すっても微動だにしないオルフェウス。
( 愛しています。この世の誰よりも… )
クロエはオルフェウスに口づけた。
「直接言わせてください。あなたの目を見て言いたいの…」
クロエの涙がもう一度オルフェウスの顔に垂れる。
その時、オルフェウスの身体が、屋敷全体が光りだした。
「な、なんだこれは!」
取り乱すカイロスを気に留める者などいない。
クロエもトーマスも、アビゲイルや他の使用人達も光に包まれるオルフェウスや屋敷を何も言わずに見つめていた。
一際強い光を放ったあと、突如として光は消えた。
「オルフェウス様!」
クロエが覗き込むと、オルフェウスの顔が綺麗になっている。
何が起こったのだろうか…?
クロエが綺麗に整ったオルフェウスの顔を撫でると、オルフェウスは目を覚ました。
「私は一体…?」
混乱しているオルフェウスをクロエは強く抱きしめる。
「良かった!お怪我は大丈夫ですか?」
「怪我…?」
そういえばクロエを庇って背中を刺されたんだった。
だが何処を見ても刺し傷は無く、痛みすら無かった。
「オルフェウス様、お顔が…」
「顔…?」
アビゲイルがオルフェウスにさっと手鏡を渡した。
「これは…?」
「オルフェウス様のお顔です!呪いが解けたんだわ!」
「これが私の顔…?」
何度も触って確かめる。
滑らかな肌。引き攣っていない口元。目も鼻もハッキリとわかる。
「本当に呪いが解けたのか…?」
「そうです!解けたんです!」
オルフェウスはクロエを抱き上げた。
「信じられない!まさか本当にこんな日が来るとは思わなかった!」
皆がこの奇跡に涙していた。
「クロエ、ずっと伝えたかった言葉があるんだ。聞いてくれるか?」
「はい、私にもあるので聞いていただけますか?」
「あぁ、だが先に言わせて欲しい。クロエ、私は君を愛している。生涯大切にすると誓おう。だから、私と添い遂げてくれないだろうか?」
「私もオルフェウス様を愛しております。あなたと未来を歩んで行きたいのです」
「おめでとうございます!」
使用人達が二人を囲んで祝福し、カイロスは蚊帳の外。
「いやぁ、実にめでたいことですな。これもひとえに私のお陰でしょうか?」
皆に一斉に睨まれたカイロスはタジタジになりながらも話し続ける。
「怪我をしなければ呪いは解けなかっただでしょう!私がいなければずっと呪われたままだったんですよ?」
クロエは地面に下ろしてもらってカイロスの前に立った。
「旦那様、私は何故階段下の物置きで育てられたのでしょうか?」
「それはヘラが決めた事だ。私の一存ではない」
「私は旦那様の本当の娘なのですか?」
「もちろんだとも。私の大切な娘だよ」
オルフェウスはクロエの横に並んでカイロスに告げた。
「あなたには感謝しているよ。私とクロエが出会えたのはあなたのお陰だ」
「そうでしょう、そうでしょう」
揉み手をしながら卑下た顔で笑うカイロス。
クロエはオルフェウスの顔を伺い、オルフェウスは静かに頷いた。
「旦那様、これを…」
クロエは身に着けていたブローチをカイロスに渡す。
「おぉ、これは見事な宝石だな」
「旦那様の実の娘ではないと言われた方が救われたのかも知れません…。これを売ればかなりの額になるでしょう。これを機に親子の縁を切って頂きたく思います」
「あ、あぁ。お前が望むのなら構わないが、これでは足りないな…」
「それならこれも持って行くと良い」
オルフェウスは大きな宝石の付いた指輪をカイロスに渡した。
「二度と私達には関わらないでくれ」
「ははは。これだけ頂ければ充分です。こんな気味の悪い所など二度と来ませんよ」
カイロスはブローチと指輪を懐に仕舞った。
屋敷を出ていこうとするカイロスにクロエが最後の別れの言葉を告げる。
「旦那様、オルフェウス様の元に送ってくださりありがとうございました。もう二度とお会いすることはありませんが、ガルシア男爵家の幸せを願っております」
カイロスは返事もせずに屋敷を出ていき、自分の屋敷へと戻っていった。
トーマス達が玄関に塩を撒いている様子を見ながらクロエは呟いた。
「生まれて初めて嘘をついてしまいました…」
「嘘…?」
「はい。幸せを願っているだなんて真っ赤な嘘です」
「そうか…。それなら男爵家は幸せにはなれないだろうな」
オルフェウスはクロエの肩を抱いて楽しそうに答える。
「そうでしょうか…?」
「あぁ、クロエの言葉には力が宿るのだろう?」
「あ、そうでした…」
二人は笑いあった。
「幸せを願っていないだけで不幸を願っているわけではないのだから、大丈夫だろう」
「そういうものでしょうか…?」
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クロエは満面の笑みで答える。
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