おばあちゃん起きて

たかまつ よう

文字の大きさ
上 下
1 / 7

おばあちゃん冬眠中

しおりを挟む
 ヒミズモグラのひぃちゃんが、ちいさなハツカネズミの六ツ子たちの手を引いて、また、ヒキガエルのジョセフィーヌの家をたずねました。
 
  ジョセフィーヌのおうちは地面に半分埋めた、素焼きの植木鉢です。今はその入口には落ち葉がいっぱい、詰めてあります。そして『冬眠中。春になったら会いましょう。ジョセフィーヌ』と、書いたイチョウの落ち葉が結び付けてありました。中からは、物音ひとつしません。

「まだ、寝てるねぇ。」
 冬眠をしない、ヒミズモグラやハツカネズミのこどもたちは、落ち葉がすっかり落ちて明るくなった林のなか、手をつないで戻りながら、耳をすませていました。
 エナガやシジュウカラ、コゲラたちが、
「やぁ、ひぃちゃん!」
「こんちは、むつごー!」
などと、明るく声掛けしながら群れで通り過ぎていきました。
 彼らが去ってしまうと、しいん…と空の向こうまで静まり返ります。

「ねぇ。おばあちゃん、いつ起きるんかな」
 六ツ子のひとり、ワンダーが、ひぃちゃんに聞きました。
「いつって…あそこに、『春になったら』って書いてあったじゃないか。」

 六ツ子たちは、ヒキガエルのおばあちゃん、ジョセフィーヌが大好きです。もちろん、ヒミズモグラの男の子、ひぃちゃんも。みんなで、毎日遊びに行ってはいろんなおしゃべりをしていました。六人が、かわるがわる、われ先にと話をするので、それはそれはにぎやかでした。
 それでもジョセフィーヌばあちゃんは、辛抱強くひとりひとりのお話を聞いてくれて、ひとりひとりをいっぱいほめてくれるのです。

 でも、秋になり、クヌギやコナラの葉っぱが散りだすと、おばあちゃんはこっくり、こっくり、居眠りがとまらなくなりました。
 「ねえねえ、おばあちゃん!ねえったら!」
 まだ、お話を聞いてもらってないニコルが、おばあちゃんのうでに抱きついてゆさぶりました。ジョセフィーヌは、はっと頭をあげましたが、また、くぅーん、と、下を向いてしまいます。

「ああ、いけないいけない。ばあちゃん、がんばって起きてたけど、もう、冬眠しないとダメみたい。ごめんね、これからしばらくはばあちゃんは眠りますよ。支度があるから、今日はここまで。みんなにおやつのこおろぎクッキーをあげるからね。おうちに帰ってからたべるのよ。」

 おばあちゃんは景気よく、クッキーを入れておく缶を開けて、麦わらの手編みかごを7つ、出してきて、中身をぜんぶ、7つに分けました。すてきなおみやげをもらった六ツ子たちは、
「じゃあね、おやすみなさーい」
と、機嫌よく帰ったのです…が。
 おばあちゃんとしばらく会えない、ってことを、みんなよくわかっていませんでした。
しおりを挟む

処理中です...