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ピクニック
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チュンチュンの中身を捕まえに、朝っぱらからピクニックへ、もとい大森林へ行きました。
私とアンズは当然。ナルさんとその使令の索冥も順当。何故かアッサム様とリオネット様も御同行頂いています。
「お仕事お忙しいと伺ってましたけど、大丈夫なんですか?」
「ええ、今日から暇なんですよ」
今日から?
「まぁ、行って帰ってくりゃ、全員揃うんだからその時にでも説明するわ」
全員?
リオネット様とアッサム様は説明がめんどくさいのかもしれないが、ついてくるのはめんどくさくないらしい。
なので、この世界で1番の白魔道士が作成した魔法陣を使い、この世界で1番と2番に強い騎士の護衛の中、この世界で恐らく1番と2番に凄い使令に見守られて使役獣候補を呼ぶ。
……。
…………。
………………。
来ない。
「おい、カリン。てめぇ、またその鳥っぽい可愛いモフモフとやらが来れば良いなとか思ってねぇだろうな」
その口の悪さと仮面娘の前での爽やかアッサム様の落差、酷くないですか?
「思ってませんよ。今回は連絡用の鳥型って決めてますし。ただ、前よりなんか手応えが無いです」
「手応え、ですか?」
「はい、なんか、プスンとか、ぽひゅんって手応えがして、それと……」
「それと?」
リオネット様は怪訝そうに何かの術を展開しながら、先を促す。
「ものすっごく、やりにくい視線を感じます。そこの2人!」
私はアンズとナルさんに思い切って指をさした。指さすくらいの勢いないと、言い出せないほどの圧迫だ。
「どっちがどっちか分かんないけど、『可愛いポジションはもういらん!』ってのと、『これ以上愛情割かれるのはごめんじゃ!』っての送ってるでしょ!そんなん送られてたら、来るものも来ないよ!」
眉間に皺を寄せて唸ってた2人はビクッと怯んだ。
「だ、だって、僕より下のナルニッサだってカリンと夜寝ようとするんだもん……」
「我が君は愛情深き方ですので、自身の立場を危ぶんでしまうのはやむを得ないのです」
自由な召使い2人が結託した。何故かそこ2人は争わないらしい。
「ふむ、確かに、使令を呼ぶ力がとても弱いですね」
「それは場の問題か?カリン側の問題か?」
リオネット様は分析を終えたようで、そこにアッサム様が解決を図ろうとしている。私は成り行きを見守るしか無い。
「異なるな」
そこに索冥がストップをかけた。いつの間にか獣バージョンから人型に変わっている。話す時は人型の方が楽なのかな?
「器の容量が足らぬ。そもそも、カリン様にはアンズ殿を飼える器は無い」
「それはどういう事だ?」
自分の使令の前では、いたいけなワンコから一瞬で主人に戻るナルさん。
「持てる魔力には二種の見方があろう?器上限より高き魔力は、魔力の褒美では飼えぬ」
「ああ、なるほど」
さっぱりの索冥の説明に、リオネット様だけが同意した。
「少し補足させていただきましょうか。まず魔の力を表すには現在安静時に持っている魔力量が一般的で、MPとして表します。一方で、私などの魔導士ではレベルを上げた後の推定カンスト値の魔力量で強さを表す事があります。これはカンスト値が高い程、初めから高度で強い魔法を使えるからです。実際はカンスト値の実数を測る事はできないので魔法の素質からカンスト値を判断します。
MPはおおよそですが、平民が一桁とすると、貴族は二桁前半、貴族の魔導士とアッシャーは50位ぐらいでしょうか?カリンなどの召喚者は100以上が多いです。そのカンスト値は最大でも10歳ごろの2倍程度であると言われています。ただ、私の様に魔導士の加護を受けた召喚者になるとカンスト値は恐らく500はくだらない。そして、私が飼える使令は同じく500以下の魔力の使令だけなんですよ」
「アンズや索冥は?」
「その魔力の値で表すならば、アンズ殿はマンチェスターの兄君でも飼えぬな。我はアンズ殿の10倍なれば」
「それだと、私達の使令になれないんじゃないの?」
索冥は扇子で口元を隠して、ナルさんに目配せした。
「私の一族と索冥の関係は特殊です。普通、使令は主人が倒れて離れた時にその時と同等の魔力、もしくはその種族のカンスト値となる利点から配下につくのです。使令の方が上の場合は減りはしませんが利点がありません」
「我と主人との約定は他では起こり得ぬ。使令の方が上なれば、主人の魔力が尽きた場合主人に魔力を供給する事になる。ゆえにルシファーの子で我を継ぐ資格は必ず騎士と定めておる。でなく魔導士が継げば国が滅ぶも容易い」
「ルシファーは我が一族の始祖の名です」
ナルさんの顔が一瞬こわばったけど、私の顔を見てすぐに元に戻った。何か意味のある名前だったのか。
「んん、それじゃあ、私が今使令を作れない理由は?それにアンズはどうして私の使令になったの?」
話がつまらなかったのか、当のアンズは早々に蝶々を追いかけて跳ね回っていて、私の話は聞いていないようだった。代わりにナルさんと索冥に視線を向けた。
「カリン様は無意識に強い魔法を使っていらっしゃる。ですので、平時もMPの回復が追いつかず、見た目のMPが低くなっているのかと。呼び寄せる獣には今この時のMPを見せるため魔法陣に魔力を注いでいます。それが限りなくゼロに近ければ、獣は来ない、となるでしょう」
「アンズ殿がカリン様の使令となったのは、恐らく、何も理解しておらぬからであろ。でなければ、もしもの場合を考えて、契約する獣はあらぬ」
「もしもの場合って?」
「それはカリン様に……」
「だめー!」
遊んでたはずのアンズは索冥を押し倒した。しかも獣サイズに戻って。
「ぎゃー!索冥が潰れた!」
慌てて駆け寄ったけれど、次の瞬間にはアンズは小狐に戻っていて、人型の索冥に首根っこを掴まれた。
「我は無事なり。だが、アンズ殿、おもとは知ってて契約を成したのか?」
「そだよ!悪いか!」
ジタバタしているアンズを見る限り、どうやら索冥の力でその形に強制的に戻されたようだった。
「……あっぱれ」
「美しい」
索冥とナルさんがハモった。え、何、何?
「そこまでの覚悟、しかと見た」
「やはり、カリン様の一の僕の座はアンズ殿に他ならない。索冥と並ぶ美しい使令は、アンズ殿の他はいない」
独り言にしては大きすぎるナルさんのアンズ賞賛の言葉が入り込んでますが、現在会話しているのは索冥とアンズです。
「アンズ殿の成長の助力を惜しまぬ。ついてはマンチェスターの兄君よ、方法を練ろうぞ」
「何やら楽しげな話のようですね」
不敵に笑んだリオネット様の表情は、何かしら盗聴済みで色々把握してますと自白している。
「アンズ殿は人型にならぬ。不思議に思うておったが、時々日中にも突然睡魔にも襲わるるようだ。これは恐らく、アンズ殿の魔力をカリン様が使いすぎてあるからの様に思う」
え。
「ああ、それならばカリンに魔法を使わせないかアンズ殿の魔力を増やせば解決ですね。そして、まさか前者は選ばないでしょう」
「是」
2人はアンズを見て笑った。
「特訓あるのみ」
震え上がるアンズに私は「なんか、魔力使いまくってごめん」とつぶやいた。
私とアンズは当然。ナルさんとその使令の索冥も順当。何故かアッサム様とリオネット様も御同行頂いています。
「お仕事お忙しいと伺ってましたけど、大丈夫なんですか?」
「ええ、今日から暇なんですよ」
今日から?
「まぁ、行って帰ってくりゃ、全員揃うんだからその時にでも説明するわ」
全員?
リオネット様とアッサム様は説明がめんどくさいのかもしれないが、ついてくるのはめんどくさくないらしい。
なので、この世界で1番の白魔道士が作成した魔法陣を使い、この世界で1番と2番に強い騎士の護衛の中、この世界で恐らく1番と2番に凄い使令に見守られて使役獣候補を呼ぶ。
……。
…………。
………………。
来ない。
「おい、カリン。てめぇ、またその鳥っぽい可愛いモフモフとやらが来れば良いなとか思ってねぇだろうな」
その口の悪さと仮面娘の前での爽やかアッサム様の落差、酷くないですか?
「思ってませんよ。今回は連絡用の鳥型って決めてますし。ただ、前よりなんか手応えが無いです」
「手応え、ですか?」
「はい、なんか、プスンとか、ぽひゅんって手応えがして、それと……」
「それと?」
リオネット様は怪訝そうに何かの術を展開しながら、先を促す。
「ものすっごく、やりにくい視線を感じます。そこの2人!」
私はアンズとナルさんに思い切って指をさした。指さすくらいの勢いないと、言い出せないほどの圧迫だ。
「どっちがどっちか分かんないけど、『可愛いポジションはもういらん!』ってのと、『これ以上愛情割かれるのはごめんじゃ!』っての送ってるでしょ!そんなん送られてたら、来るものも来ないよ!」
眉間に皺を寄せて唸ってた2人はビクッと怯んだ。
「だ、だって、僕より下のナルニッサだってカリンと夜寝ようとするんだもん……」
「我が君は愛情深き方ですので、自身の立場を危ぶんでしまうのはやむを得ないのです」
自由な召使い2人が結託した。何故かそこ2人は争わないらしい。
「ふむ、確かに、使令を呼ぶ力がとても弱いですね」
「それは場の問題か?カリン側の問題か?」
リオネット様は分析を終えたようで、そこにアッサム様が解決を図ろうとしている。私は成り行きを見守るしか無い。
「異なるな」
そこに索冥がストップをかけた。いつの間にか獣バージョンから人型に変わっている。話す時は人型の方が楽なのかな?
「器の容量が足らぬ。そもそも、カリン様にはアンズ殿を飼える器は無い」
「それはどういう事だ?」
自分の使令の前では、いたいけなワンコから一瞬で主人に戻るナルさん。
「持てる魔力には二種の見方があろう?器上限より高き魔力は、魔力の褒美では飼えぬ」
「ああ、なるほど」
さっぱりの索冥の説明に、リオネット様だけが同意した。
「少し補足させていただきましょうか。まず魔の力を表すには現在安静時に持っている魔力量が一般的で、MPとして表します。一方で、私などの魔導士ではレベルを上げた後の推定カンスト値の魔力量で強さを表す事があります。これはカンスト値が高い程、初めから高度で強い魔法を使えるからです。実際はカンスト値の実数を測る事はできないので魔法の素質からカンスト値を判断します。
MPはおおよそですが、平民が一桁とすると、貴族は二桁前半、貴族の魔導士とアッシャーは50位ぐらいでしょうか?カリンなどの召喚者は100以上が多いです。そのカンスト値は最大でも10歳ごろの2倍程度であると言われています。ただ、私の様に魔導士の加護を受けた召喚者になるとカンスト値は恐らく500はくだらない。そして、私が飼える使令は同じく500以下の魔力の使令だけなんですよ」
「アンズや索冥は?」
「その魔力の値で表すならば、アンズ殿はマンチェスターの兄君でも飼えぬな。我はアンズ殿の10倍なれば」
「それだと、私達の使令になれないんじゃないの?」
索冥は扇子で口元を隠して、ナルさんに目配せした。
「私の一族と索冥の関係は特殊です。普通、使令は主人が倒れて離れた時にその時と同等の魔力、もしくはその種族のカンスト値となる利点から配下につくのです。使令の方が上の場合は減りはしませんが利点がありません」
「我と主人との約定は他では起こり得ぬ。使令の方が上なれば、主人の魔力が尽きた場合主人に魔力を供給する事になる。ゆえにルシファーの子で我を継ぐ資格は必ず騎士と定めておる。でなく魔導士が継げば国が滅ぶも容易い」
「ルシファーは我が一族の始祖の名です」
ナルさんの顔が一瞬こわばったけど、私の顔を見てすぐに元に戻った。何か意味のある名前だったのか。
「んん、それじゃあ、私が今使令を作れない理由は?それにアンズはどうして私の使令になったの?」
話がつまらなかったのか、当のアンズは早々に蝶々を追いかけて跳ね回っていて、私の話は聞いていないようだった。代わりにナルさんと索冥に視線を向けた。
「カリン様は無意識に強い魔法を使っていらっしゃる。ですので、平時もMPの回復が追いつかず、見た目のMPが低くなっているのかと。呼び寄せる獣には今この時のMPを見せるため魔法陣に魔力を注いでいます。それが限りなくゼロに近ければ、獣は来ない、となるでしょう」
「アンズ殿がカリン様の使令となったのは、恐らく、何も理解しておらぬからであろ。でなければ、もしもの場合を考えて、契約する獣はあらぬ」
「もしもの場合って?」
「それはカリン様に……」
「だめー!」
遊んでたはずのアンズは索冥を押し倒した。しかも獣サイズに戻って。
「ぎゃー!索冥が潰れた!」
慌てて駆け寄ったけれど、次の瞬間にはアンズは小狐に戻っていて、人型の索冥に首根っこを掴まれた。
「我は無事なり。だが、アンズ殿、おもとは知ってて契約を成したのか?」
「そだよ!悪いか!」
ジタバタしているアンズを見る限り、どうやら索冥の力でその形に強制的に戻されたようだった。
「……あっぱれ」
「美しい」
索冥とナルさんがハモった。え、何、何?
「そこまでの覚悟、しかと見た」
「やはり、カリン様の一の僕の座はアンズ殿に他ならない。索冥と並ぶ美しい使令は、アンズ殿の他はいない」
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「アンズ殿は人型にならぬ。不思議に思うておったが、時々日中にも突然睡魔にも襲わるるようだ。これは恐らく、アンズ殿の魔力をカリン様が使いすぎてあるからの様に思う」
え。
「ああ、それならばカリンに魔法を使わせないかアンズ殿の魔力を増やせば解決ですね。そして、まさか前者は選ばないでしょう」
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