Grow 〜異世界群像成長譚〜

おっさん。

文字の大きさ
30 / 132
まだなの?

第29話 ミランと童心

しおりを挟む
 少年と出会ってから今日で四日目。
 ついに約束の日をむかえた。

 夫たちが帰ってくるまでの三日間。食料に困っていた村人たちは比較的簡単に説得することができた。
 同じく黒髪であるカーネちゃん達が村にいる事も抵抗を減らせた要因のだろう。

 食料と交換できるものも各家から集め終え、帰ってきた夫たちには決定事項としてこれからの話をした。

 ちなみに夫たちの収穫はと言うと、やはり足元を見られろくに食料を確保できていなかった。

 得体えたいのしれない子どもとの取引に最後まで反対していた住人も、背に腹は代えられないと、今は口をつぐんでいる。

 準備は万端だ。
 後は少年の到着を待つだけ…。

 皆が村の中央でじっと待つ中、道の向こうから荷車型にぐるまがた走車そうしゃのようなものが近づいてくる。

 この時村人の反応は二つに分かれた。
 警戒する者と不思議そうに首をかしげるものである。

 走車は通常、地を駆ける者が引く事で動いているのだが、今回の走車にはそれが無いのである。
 それは箱がひとりでに動くのと同じ事で、あり得ない。

 私も首を傾げつつ、警戒する人達の神経を逆なでしない為にも、今回の件の代表として前に出た。

 次第に大きくなる走車に、こちらに向けて手を振る仮面の少年を見止めると、こちらも手を振り返した。
 その友好的な態度に、幾分いくぶんか村人たちの警戒心がやわらいだのだろう。
 一様に安堵あんどの息をこぼし、反発的な態度は見られなかった。

 通常の走車の倍ほどはあるであろう速度。
 それはみるみる内に遅くなっていき、丁度、私の数十歩前ほどの位置で停止した。

 その車体を見るにやはりどこにも原動力になるようなものは見えず、どもまでも荷車型の走車だった。

「こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」

 走車から降りた少年は私に手を伸ばしてくる。

「こちらこそ今日は宜しくお願い致します」

 私は少年の手を両手でしっかりと握ると軽く頭を下げた。
 本当はしっかりとお礼がしたいのだが、皆の手前、対等である事を示さなければならない。
 後で娘もつれてお礼に行こう。

「皆さんも今日はお願いします!新鮮な肉から保存食までいろいろと集めて来たのでどうぞ見て行ってください!」

 少年は大きく声を張り上げ、荷車のおおいを引っ張るように外《はず》す。

 そこに見えたのはあふれんばかりの肉。
 通常、村ではほとんど肉を食べられない。

 特に今年は森にすら入れなかった為に、小動物の小さな肉すら殆ど口にしていないのである。
 そんなものを見れば皆が目の色を変えるのは無理がなかった。

 少年は荷車の横を開くと、先ほどはがした覆いを地面に置き、店を広げ始める。

 食料は勿論、獣の骨や角を使った道具から綺麗なうつわ珍妙ちんみょうな形をした得体の知れない物まである。
 どんどんと並んでいく品々に村人達は興味津々のようだった。

「さぁどうぞ」

 準備をし終えた少年がそう声を上げると、皆の視線が私に刺さった。
 そのせかすような視線に先程までの警戒心は微塵みじんも感じられないが、名目めいもくたもつ理性だけは持ち合われていたようである。

 彼らの意地を張るような態度に、今にも吹き出しそうになる。
 私は必死に笑いをこらえると、広げられた品の元まで向かっていった。

「では、失礼させてもらって…」

 私はその場にしゃがみ込むと面白そうな道具を物色ぶっしょくし始める。

「これは何ですか?」

 木でできた様な筒状つつじょうの何か。
 私はそれを手に取って少年にうた。

「これは笛です。少し貸してください」

 少年に言われた通り筒を手渡すと、彼は筒を横向きにくわえ、空いている穴のいくつかに指の先を置いた。そして…

「ピュロロロ~♪ピュロロロロロ~♪」

 とても耳触みみざわりの良い音が鳴り響いた。
 少年が息を吹き込み、指を動かす毎につむがれる音。
 一同その音色にしばし心をうばわれてしまった。

「と、こうやって音をかなでるものですね。皆さんも口や指を使って音を鳴らすでしょう?その幅を増やすための道具です」

 今まで見たことも聞いたこともない道具だった。
 皆も同じようで一様に興味深そうな眼をしている。

「ではこれは…」

 次に私が手に取ったのはみぞられた木の板だった。

「それは洗濯板ですね。服を洗う時にそこにこすり付けるとよく落ちます」

「ではこれは…」

「それはけん玉と言って…まぁ玩具オモチャですね。こうやって…」

 次々と出てくる新しい物達。
 私はそれらに完全に魅了みりょうされ、村の代表であるという事を完全に忘れてしまった。

 まるで子どものころに戻ったような。冒険の日々に戻ったような高揚感はとても心地が良く、気が付いた時には皆の視線が体中に刺っていた。

 私はしかられた子供のような気分になり、頬をしゅうに染めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

グレート・プロデュース  〜密かに国をコントロールする最強のエージェントは、恋に落ちた王女を大帝王に即位させることができるのか?〜

青波良夜
ファンタジー
魔法と、魔導科学が進んだ強大な国、グランダメリス大帝国。 俺は、この国を陰からコントロールする秘密組織でエージェントとして働いている。 今回の任務は、豪華客船で行われる密売の現場を探ることだった。 その任務の途中、俺は第三継王家の王女『メリーナ・サンダーブロンド』と出会うことになる。 メリーナ王女は婚約しようとしていたのだが、俺の軽はずみな行動が彼女の運命を変えてしまった。 その後、なんやかんやあり、俺はメリーナ王女に惚れられることに……。 こんなことは、エージェントとしては絶対にあってはならないことだ。 というわけで、俺はメリーナ王女と別れ、二度と会わないよう工作をした。 それなのに、まさか再び出会うハメになるなんて……。 しかも次の任務は、メリーナを大帝王に即位させることだって!? ――これは最強のエージェントが、乙女の恋心に翻弄されながら、過去最難関のミッションに挑む物語である。 ※『ノベルアップ+』、『ネオページ』にも投稿してます。 ※『小説家になろう』『カクヨム』に投稿し、一度完結済みとなった作品です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...