64 / 132
ダメ!それは私の!
第63話 メグルと兄弟げんか
しおりを挟む
「シバぁ~~!」
肉塊の海の向こう、僕はシバが佇んでいるのを見つけた。
僕は彼に向かい手を振る。
隣にいるのはシバの仲間だろうか。
随分ボロボ…。
そこまで近づいたやっと気が付いた。
シバの隣にいるモノが生きていない事に。
僕は段々と減速し、シバの数十歩手前で、歩みを止めた。
「し、ば…。その人は?」
特に襲ってくる様子もない死体に僕は目を向ける。
するとシバは無言で、死体に擦り寄り、甘え始めた。
それに答えるように、死体も動き始める。
急に動いた死体に、僕はビクッとしてしまった。
しかし、死体も愛おしそうにシバを受け入れるものだから、すぐに敵ではないと理解する。
抜け落ちた毛や、剥がれ落ちた皮膚が痛々しい。
一部腐敗で腐り落ちたり、肥大化している部分も見受けられた。
それでも死者はとても幸せそうな表情をしていた。
この惨状が、まるで天国にでも感じているようだった。
二人は僕の前で愛を確かめ合う様にじゃれ合った。
あんなに誰かに甘えるシバなど見た事がない。
僕はちょっと複雑な気持ちになりながらも、いつの間にか警戒心を解いていた。
再び足を進め、二人に近づいていく僕。
そんな僕を気にする事無くじゃれあう二人。
ふと、シバが死者の首を甘噛みした。
じゃれ合いでは、よくある光景だ。
だから、シバがその首を噛み千切った時、僕は唖然としてしまった。
しかし、それだけでは死者は死なない。
まだ、動くソレを、シバは引き裂いて噛み砕いた。何度も、何度も、何度も…。
腐敗した肉片と体液がそこら中に飛び散る。
酷い匂いがした。
その内の幾つかが、僕の顔と体を汚す。
しかし、そんな物とは比にならない程の気持ち悪さが、僕の頭を支配した。
「…」
呆然と立ち尽くす僕に、シバが視線を向けて来た。
その瞳は月光を反射して怪しく光る。
もう、死者は動かなかった。
「なんで…。どうしたんだよ。シバ」
こんなの、シバのする事じゃない。
何か事情があるに違いないのだ。
僕は彼を受け入れる様に両手を広げて一歩ずつ近づいた。
足が震えて、上手く歩けない。
違う!僕はシバを怖がったりなんてしてない!
シバは僕の親友だ!家族だ!それを怖がるなんて…!
「グルゥゥゥゥ」
シバが唸り声をあげる。これは警告だ。
「大丈夫。何か事情があるんでしょ?後でゆっくり聞くから…」
そこで、震える脚に何かが当たった。
僕は恐る恐る視線を下に落とす。
人間だった。
肉塊に飲み込まれかけていた為、全く気付かなかった。
「大丈夫ですか?!」
僕は急いで両手で肉塊を引き剥がす。
「ひぃっ!」
その人間には頭がなかった。
…でも、どこかで見覚えがある様な気がして…。
その時、彼女の上に乗っていた肉塊が動いたような気がした。
僕は急いでその肉塊も剥がしにかかる。
「コラン…」
間違いなく彼女だった。
死体に縋りつくように意識を失っている。
と、いう事はこの死体はミランさん…。
僕はまだ息のある彼女を抱き上げようとする。
しかし、その手はミランさんをしっかりと掴んでおり、離れる気配がなかった。
僕が無理やりその手を開かせようとすると、コランは嫌そうな顔をした。
それでも僕はミランさんからコランの手を引き離す。
それが、僕がミランさんにしてあげられる最後の餞だった。
僕はコランを抱き上げる。
意識のないコランは縋りつくように、強く、強く、僕に抱きついてきた。
痛かった。
今日どれだけの痛みがこの場で生まれたのだろう。
僕もコランを抱き返すと、シバを見つめる。
彼を染め上げる赤。あれは間違いなく人間の物だ。
僕は薄々、気がついていた。
それでも目を逸らし続けていた。
それは全てをカーネのせいにして、彼女を殺す方が楽な結論だったからに他ならない。
「シバ…」
僕は優しい声で声を掛ける。
「グルゥゥゥゥ!」
分かってる。もう駄目なんだって。
僕は辺りを爆破し、肉塊を一掃すると、その場にコランを寝かせた。
ふと、地面に転がる薙刀が見えた。
如何やら肉塊は、あの薙刀にだけは近寄らないらしい。
僕は薙刀を手に取るとシバと対峙する。
見つめ合う二人。
…最後の兄弟喧嘩が始まった。
肉塊の海の向こう、僕はシバが佇んでいるのを見つけた。
僕は彼に向かい手を振る。
隣にいるのはシバの仲間だろうか。
随分ボロボ…。
そこまで近づいたやっと気が付いた。
シバの隣にいるモノが生きていない事に。
僕は段々と減速し、シバの数十歩手前で、歩みを止めた。
「し、ば…。その人は?」
特に襲ってくる様子もない死体に僕は目を向ける。
するとシバは無言で、死体に擦り寄り、甘え始めた。
それに答えるように、死体も動き始める。
急に動いた死体に、僕はビクッとしてしまった。
しかし、死体も愛おしそうにシバを受け入れるものだから、すぐに敵ではないと理解する。
抜け落ちた毛や、剥がれ落ちた皮膚が痛々しい。
一部腐敗で腐り落ちたり、肥大化している部分も見受けられた。
それでも死者はとても幸せそうな表情をしていた。
この惨状が、まるで天国にでも感じているようだった。
二人は僕の前で愛を確かめ合う様にじゃれ合った。
あんなに誰かに甘えるシバなど見た事がない。
僕はちょっと複雑な気持ちになりながらも、いつの間にか警戒心を解いていた。
再び足を進め、二人に近づいていく僕。
そんな僕を気にする事無くじゃれあう二人。
ふと、シバが死者の首を甘噛みした。
じゃれ合いでは、よくある光景だ。
だから、シバがその首を噛み千切った時、僕は唖然としてしまった。
しかし、それだけでは死者は死なない。
まだ、動くソレを、シバは引き裂いて噛み砕いた。何度も、何度も、何度も…。
腐敗した肉片と体液がそこら中に飛び散る。
酷い匂いがした。
その内の幾つかが、僕の顔と体を汚す。
しかし、そんな物とは比にならない程の気持ち悪さが、僕の頭を支配した。
「…」
呆然と立ち尽くす僕に、シバが視線を向けて来た。
その瞳は月光を反射して怪しく光る。
もう、死者は動かなかった。
「なんで…。どうしたんだよ。シバ」
こんなの、シバのする事じゃない。
何か事情があるに違いないのだ。
僕は彼を受け入れる様に両手を広げて一歩ずつ近づいた。
足が震えて、上手く歩けない。
違う!僕はシバを怖がったりなんてしてない!
シバは僕の親友だ!家族だ!それを怖がるなんて…!
「グルゥゥゥゥ」
シバが唸り声をあげる。これは警告だ。
「大丈夫。何か事情があるんでしょ?後でゆっくり聞くから…」
そこで、震える脚に何かが当たった。
僕は恐る恐る視線を下に落とす。
人間だった。
肉塊に飲み込まれかけていた為、全く気付かなかった。
「大丈夫ですか?!」
僕は急いで両手で肉塊を引き剥がす。
「ひぃっ!」
その人間には頭がなかった。
…でも、どこかで見覚えがある様な気がして…。
その時、彼女の上に乗っていた肉塊が動いたような気がした。
僕は急いでその肉塊も剥がしにかかる。
「コラン…」
間違いなく彼女だった。
死体に縋りつくように意識を失っている。
と、いう事はこの死体はミランさん…。
僕はまだ息のある彼女を抱き上げようとする。
しかし、その手はミランさんをしっかりと掴んでおり、離れる気配がなかった。
僕が無理やりその手を開かせようとすると、コランは嫌そうな顔をした。
それでも僕はミランさんからコランの手を引き離す。
それが、僕がミランさんにしてあげられる最後の餞だった。
僕はコランを抱き上げる。
意識のないコランは縋りつくように、強く、強く、僕に抱きついてきた。
痛かった。
今日どれだけの痛みがこの場で生まれたのだろう。
僕もコランを抱き返すと、シバを見つめる。
彼を染め上げる赤。あれは間違いなく人間の物だ。
僕は薄々、気がついていた。
それでも目を逸らし続けていた。
それは全てをカーネのせいにして、彼女を殺す方が楽な結論だったからに他ならない。
「シバ…」
僕は優しい声で声を掛ける。
「グルゥゥゥゥ!」
分かってる。もう駄目なんだって。
僕は辺りを爆破し、肉塊を一掃すると、その場にコランを寝かせた。
ふと、地面に転がる薙刀が見えた。
如何やら肉塊は、あの薙刀にだけは近寄らないらしい。
僕は薙刀を手に取るとシバと対峙する。
見つめ合う二人。
…最後の兄弟喧嘩が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
グレート・プロデュース 〜密かに国をコントロールする最強のエージェントは、恋に落ちた王女を大帝王に即位させることができるのか?〜
青波良夜
ファンタジー
魔法と、魔導科学が進んだ強大な国、グランダメリス大帝国。
俺は、この国を陰からコントロールする秘密組織でエージェントとして働いている。
今回の任務は、豪華客船で行われる密売の現場を探ることだった。
その任務の途中、俺は第三継王家の王女『メリーナ・サンダーブロンド』と出会うことになる。
メリーナ王女は婚約しようとしていたのだが、俺の軽はずみな行動が彼女の運命を変えてしまった。
その後、なんやかんやあり、俺はメリーナ王女に惚れられることに……。
こんなことは、エージェントとしては絶対にあってはならないことだ。
というわけで、俺はメリーナ王女と別れ、二度と会わないよう工作をした。
それなのに、まさか再び出会うハメになるなんて……。
しかも次の任務は、メリーナを大帝王に即位させることだって!?
――これは最強のエージェントが、乙女の恋心に翻弄されながら、過去最難関のミッションに挑む物語である。
※『ノベルアップ+』、『ネオページ』にも投稿してます。
※『小説家になろう』『カクヨム』に投稿し、一度完結済みとなった作品です。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
主人公はあまり戦ったりはしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる