110 / 172
帰還
第109話
しおりを挟む
「おはよ。ルリ」
目を覚ませば、今日も先に起きていたリミアが挨拶をしてくる。
「どう?似合う?」
いつもの清楚で動きやすそうな服装ではなく、ちょっとしたお姫様の様な、ふわふわした服装に身を包むリミア。頭には糸で出来た、白い麦わら帽子の様な物を被っている。
「おぉ!似合ってる似合ってる!まさにお出かけする、お嬢様って、感じだな!」
俺は手放しで彼女の服装を褒める。
「そう……。良かった。少し動きにくいけど、ルリが好きなら、仕方ない」
表情が薄いなりに、服を見ながら、嬉しそうに呟く彼女。
因みに、俺は好きとは言ってないけどな。
……まぁ、好きだけど。
「よし!リミアがおめかしするなら、俺も頑張るか!」
俺は体の強度を度外視して、糸で出来た体を伸ばしていく。
こうする事で、糸の密度が下がり、筋力や耐久力は落ちる物の、身長を伸ばす事ができるのだ。
ほとんど使う事は無いが、クマなどの張りぼてを作って、相手を追い返したり、このような、見た目を重視する時には便利な能力である。
「……これで、精一杯か」
10cmサイズの俺は、何とか2倍の20cm程になったが、それでもリミアと2倍程の身長差があった。
しかし、これ以上密度を下げると、自身の体を支えきれなくなるので、諦める外ない。
本当は、リミアの親らしく、リミアより大きくなりたかったんだけどなぁ……。
まぁ、今の密度では仕方が無いか。
「糸、少し分ける?」
落ち込む俺を見て、リミアが予想外の提案をしてくる。
でも、そうか、コグモや、ゴブリンの中に残っていたリミアの糸を使って、相手を操作できたと言う事は、俺の糸にリミアの糸を継ぎ足す事も可能かもしれない。
「た、試しにやってみるか……」
リミアの伸ばしてくる糸を俺の糸で絡めとり、繊維と繊維を絡めて行く。
「いつもの、接続と、あまり変わらないな……」
俺が完全に糸を接続し終えると、頭にノイズが走った。
(こ、これって、交尾?)
「ッ……?!」
確実に、リミアの声だった。
リミアも、俺の心の声が聞こえているようで、驚いたように、こちらを見る。
そうか、俺達は、糸でつないだ相手の思考がお互いに分かるから……。
やばい!俺の思考も!
「い、一旦糸を切ろう!」
俺は糸をほつれさせようとするが、離れない。
(離さない)
どうやら、リミアが俺の繊維を無理矢理に抑え込んでいる様だ。
「な、何してんだよ!お前の思考だって、読まれるんだぞ!」
しかも、リミアが交尾とか言ってせいで、なんか恥ずかしいし!
糸と糸が絡み合い、繊維がその中に侵入していく光景を、俺はもう、直視できなくなった。
目を覚ませば、今日も先に起きていたリミアが挨拶をしてくる。
「どう?似合う?」
いつもの清楚で動きやすそうな服装ではなく、ちょっとしたお姫様の様な、ふわふわした服装に身を包むリミア。頭には糸で出来た、白い麦わら帽子の様な物を被っている。
「おぉ!似合ってる似合ってる!まさにお出かけする、お嬢様って、感じだな!」
俺は手放しで彼女の服装を褒める。
「そう……。良かった。少し動きにくいけど、ルリが好きなら、仕方ない」
表情が薄いなりに、服を見ながら、嬉しそうに呟く彼女。
因みに、俺は好きとは言ってないけどな。
……まぁ、好きだけど。
「よし!リミアがおめかしするなら、俺も頑張るか!」
俺は体の強度を度外視して、糸で出来た体を伸ばしていく。
こうする事で、糸の密度が下がり、筋力や耐久力は落ちる物の、身長を伸ばす事ができるのだ。
ほとんど使う事は無いが、クマなどの張りぼてを作って、相手を追い返したり、このような、見た目を重視する時には便利な能力である。
「……これで、精一杯か」
10cmサイズの俺は、何とか2倍の20cm程になったが、それでもリミアと2倍程の身長差があった。
しかし、これ以上密度を下げると、自身の体を支えきれなくなるので、諦める外ない。
本当は、リミアの親らしく、リミアより大きくなりたかったんだけどなぁ……。
まぁ、今の密度では仕方が無いか。
「糸、少し分ける?」
落ち込む俺を見て、リミアが予想外の提案をしてくる。
でも、そうか、コグモや、ゴブリンの中に残っていたリミアの糸を使って、相手を操作できたと言う事は、俺の糸にリミアの糸を継ぎ足す事も可能かもしれない。
「た、試しにやってみるか……」
リミアの伸ばしてくる糸を俺の糸で絡めとり、繊維と繊維を絡めて行く。
「いつもの、接続と、あまり変わらないな……」
俺が完全に糸を接続し終えると、頭にノイズが走った。
(こ、これって、交尾?)
「ッ……?!」
確実に、リミアの声だった。
リミアも、俺の心の声が聞こえているようで、驚いたように、こちらを見る。
そうか、俺達は、糸でつないだ相手の思考がお互いに分かるから……。
やばい!俺の思考も!
「い、一旦糸を切ろう!」
俺は糸をほつれさせようとするが、離れない。
(離さない)
どうやら、リミアが俺の繊維を無理矢理に抑え込んでいる様だ。
「な、何してんだよ!お前の思考だって、読まれるんだぞ!」
しかも、リミアが交尾とか言ってせいで、なんか恥ずかしいし!
糸と糸が絡み合い、繊維がその中に侵入していく光景を、俺はもう、直視できなくなった。
0
あなたにおすすめの小説
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
おばさん冒険者、職場復帰する
神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。
子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。
ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。
さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。
生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。
-----
剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。
一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。
-----
※小説家になろう様にも掲載中。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる