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向上心
第147話
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「このしなる木は、縦に薄くスライスすれば、俺の糸より丈夫な紐代わりになるからな。強い衝撃を受ける、斧や棍棒なんかの石を持ち手の木に固定する時は、こっちの方が良いぞ。……あとは、グリップや、籠づくりなんかにも使えるな」
他にも、河原を歩いて、叩き割ると石包丁になる石や、チョーク代わりになる石を探したり、出来た石包丁で、先程の木を加工して、矢や、槍、斧や棍棒を作ったり……。
ゴブリン達の分の道具をそろえつつ、次回からは自分たちで道具を調達できるよう説明を行っていく。
「……まぁ、俺達が今使っている道具は、こんなものだ。後は、日が落ちるまで、自由にしていてくれ」
俺が一通りの説明を終えると、ゴブスケは別の木の板を用意し、そこへ、一生懸命にメモをまとめ始める。
他のゴブリン達も見様見真似で、俺の作り出した道具を模倣しようと、石を叩き合わせ始めたり、作り出した道具の使い方を確かめる様に、拙い手つきで槍を掴むと、その先端で、物をつついたりしていた。
正直、その動きはぎこちなく、サルにも似て見えたが、彼らが頑張っている事は分かる。
本当に、道具を作ったり、使ったりする事に慣れていないのだろう。
それに比べると、板とにらめっこをしつつ、文字を書くゴブスケは、外見はそれほど変わらずとも、とても知性的に見え、同じ生物とは思えなかった。
「ルリ様。私達はどうしますか?」
ゴブリン達の姿を観察していた俺に、コグモが話しかけて来る。
どうやら、俺と一緒に行動する事は決定事項らしい。
「ん~……。そうだな。俺らは火を作ってみるか」
今までは、小さな虫の体や、糸の体が怖く、火を使えなかったのだが、コアの無い俺の体なら、万が一燃える様な事があっても、燃え広がる前に糸を切ってしまえば問題ないだろう。
それに、血液を含む、多くの液体を含んでいる今の俺なら、そう簡単には燃えそうもない気もした。
「ひ、ですか?日にちの日や、太陽の陽とは違うんですよね?」
俺の発言に首を傾げるコグモ。
「あぁ、違う。こっちの火だ」
そう言って、俺は木の板に文字を書いてやる。
「なるほど……。あの、触れると、熱すぎて死んでしまうと言う、危険な物体ですよね?」
授業で習った内容を確認するように、こちらに訊ねて来るコグモ。
でもそうか、コグモは実際の火を知らないんだもんな。
作ると言われても、しっくりと来なかったらしい。
「そうだ。その火で間違いない。……ただ、危険なだけじゃないぞ、様々な物を作り出すの時に必要となるし、明かりや、寒い時の体温の確保にも使えて、危険な分、そのまま武器にもなる。使い方次第でいくらでも化ける、便利な道具なんだ」
俺は補足を入れて説明するが「そうなのですか」と、呟く彼女は、やはり、しっくりこない様子。
「百聞は一見に如かずだ。今から作るから、見てみればいいさ」
俺の声に、彼女は不安そうな笑顔で「はい」と、答える。
きっと、頭の中の危険な存在と言うレッテルが、彼女の心配性の心を煽っているのだろう。
まぁ、それは仕方のない事だ。俺だって怖いしな!
それでも、その感情を抑えて、付き合ってくれると言うのだから、ここで引く訳には行かないだろう。
「じゃあ、材料でも集めるか」
俺の声に、コグモとクリアは勿論、それに気が付いたゴブスケも、ゴブリン達を置いて、急いでついて来る。
「本当に、お前は勉強好きだな」
感心する俺の声にゴブスケは元気な声で「ヴァゥ!」と、答えた。
他にも、河原を歩いて、叩き割ると石包丁になる石や、チョーク代わりになる石を探したり、出来た石包丁で、先程の木を加工して、矢や、槍、斧や棍棒を作ったり……。
ゴブリン達の分の道具をそろえつつ、次回からは自分たちで道具を調達できるよう説明を行っていく。
「……まぁ、俺達が今使っている道具は、こんなものだ。後は、日が落ちるまで、自由にしていてくれ」
俺が一通りの説明を終えると、ゴブスケは別の木の板を用意し、そこへ、一生懸命にメモをまとめ始める。
他のゴブリン達も見様見真似で、俺の作り出した道具を模倣しようと、石を叩き合わせ始めたり、作り出した道具の使い方を確かめる様に、拙い手つきで槍を掴むと、その先端で、物をつついたりしていた。
正直、その動きはぎこちなく、サルにも似て見えたが、彼らが頑張っている事は分かる。
本当に、道具を作ったり、使ったりする事に慣れていないのだろう。
それに比べると、板とにらめっこをしつつ、文字を書くゴブスケは、外見はそれほど変わらずとも、とても知性的に見え、同じ生物とは思えなかった。
「ルリ様。私達はどうしますか?」
ゴブリン達の姿を観察していた俺に、コグモが話しかけて来る。
どうやら、俺と一緒に行動する事は決定事項らしい。
「ん~……。そうだな。俺らは火を作ってみるか」
今までは、小さな虫の体や、糸の体が怖く、火を使えなかったのだが、コアの無い俺の体なら、万が一燃える様な事があっても、燃え広がる前に糸を切ってしまえば問題ないだろう。
それに、血液を含む、多くの液体を含んでいる今の俺なら、そう簡単には燃えそうもない気もした。
「ひ、ですか?日にちの日や、太陽の陽とは違うんですよね?」
俺の発言に首を傾げるコグモ。
「あぁ、違う。こっちの火だ」
そう言って、俺は木の板に文字を書いてやる。
「なるほど……。あの、触れると、熱すぎて死んでしまうと言う、危険な物体ですよね?」
授業で習った内容を確認するように、こちらに訊ねて来るコグモ。
でもそうか、コグモは実際の火を知らないんだもんな。
作ると言われても、しっくりと来なかったらしい。
「そうだ。その火で間違いない。……ただ、危険なだけじゃないぞ、様々な物を作り出すの時に必要となるし、明かりや、寒い時の体温の確保にも使えて、危険な分、そのまま武器にもなる。使い方次第でいくらでも化ける、便利な道具なんだ」
俺は補足を入れて説明するが「そうなのですか」と、呟く彼女は、やはり、しっくりこない様子。
「百聞は一見に如かずだ。今から作るから、見てみればいいさ」
俺の声に、彼女は不安そうな笑顔で「はい」と、答える。
きっと、頭の中の危険な存在と言うレッテルが、彼女の心配性の心を煽っているのだろう。
まぁ、それは仕方のない事だ。俺だって怖いしな!
それでも、その感情を抑えて、付き合ってくれると言うのだから、ここで引く訳には行かないだろう。
「じゃあ、材料でも集めるか」
俺の声に、コグモとクリアは勿論、それに気が付いたゴブスケも、ゴブリン達を置いて、急いでついて来る。
「本当に、お前は勉強好きだな」
感心する俺の声にゴブスケは元気な声で「ヴァゥ!」と、答えた。
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