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向上心
第155話
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「よし!終わったぞ!」
俺がコグモの翼から手を離す頃には、お互い、息が上がっていた。
顔だけこちらに向けたコグモが、火照った顔で、恨めしそうに睨んでくる。
「そ、そうだな。次回からは止めておこう……」
俺は、罪悪感と、気恥ずかしさから、顔を赤らめ、両手を挙げると、顔だけそっぽを向かせる。
……いや、待てよ、俺。これでは俺だけが悪い事をした様に見えないか?
確かに、俺も悪かったかもしれないが、瞬時に翼を出せない、コグモにも問題がある。
これでは、非常時に使い物にならないではないか。
「そもそもだな……。その翼、出しっ放しにすれば良いだけの話じゃないか?」
俺は素早く背中に翼を生やしながら言う。
それを見たクリアも、真似る様に、無言で、スッと背中から翼を生み出す。
「これぐらいの速度で出せないと、襲われたとき、使い物にならないぞ?」
俺の声に、分かっているのか、いないのか、クリアもコクコクと頷いた。
「…………」
さらに視線を鋭くし、睨んでくるコグモ。
しかし、反論の余地はないらしい。
「……だって、その……。出しっ放しは、くすぐったいんですもん……」
その内に、そっぽを向きながら、小さくつぶやくコグモ。
いじけた子どもの様だった。
「くすぐったいって、お前なぁ……。緊急時に使えない方が困るだろ?」
「翼を生やしていても、感度から何から、自由に変えられる、ルリ様達には分からないんです!この、こそばゆさが!」
こちらに向き返り、怒るように、訴えてくるコグモ。
確かに俺達は、感度から形状、密度まで、ある程度、自由に変えられる。
しかし、コグモの背中に生えている翼は、コグモが、死体のパーツを操るとき同様に、俺が作り出した翼と言うパーツを、コグモの神経に直接つないだだけの物なので、感度も形も質量も、本人は動かすこと以外、一切の操作ができないのだ。
「……んな事言ってもなぁ……。こればっかりは、くすぐったさに、慣れてくれとしか言えないっ!!!」
コグモが、暗い表情でニヤリと笑った途端、俺の体に衝撃が走る。
内側から、虫が這うような、気持ち悪さと、くすぐったさだ。
「こ、コグモ……。お前、まさか……」
俺の問いに、コグモは答えない。
代わりに、いつもの笑顔に戻ると「翼の感度、最大にしてくださいね」と、笑顔で注文してくる。
「そ、そんな事したって、何のメリットもっ!!」
俺は力が抜けて、膝から崩れ落ちる。
「一緒に翼の感度に慣れていきましょう?」
膝をつく俺に視線を合わせるようにして、近距離でしゃがみ込んでくる、コグモ。
もちろん、その笑顔は、悪寒を覚えるほどの、百点満点だ。
「……それとも、こちらに慣れる方が良いですか?」
コグモはムカデの尻尾を引きずり出し、その無数の足に抱え込まれるルリちゃん人形を見せつけてきた。
「ッ~~~……!!」
彼女が、その小さな手で、ルリちゃん人形を優しく撫で上げる。
それだけで俺は、心臓を舐められたような、なんとも言えない気持ち悪さに、辺りをのたうち回った。
「……あら、ごめんなさい。私、これが、どれ程の感覚なのか分かりませんので……」
わざとらしさ満載に、顔を背け、申し訳なさそうな顔をするコグモ。
「でも、もしかしたら、ルリ様が、私の翼の感覚が分からないのと、一緒かもしれませんね!」
そう言うコグモは、罪悪感など一切感じさせない、花の咲いたような笑顔だった。
要するに、俺が、人の苦しみが分からないなら、私も、分からないわ。とでも言いたいのだろう。
悪魔だ……。ここに悪魔がいる……。
俺の知っている可愛いコグモはどこへ行ってしまったのだろうか?
あの、ルリちゃん人形を要求して来た件を皮切りに、たまに、こうやって、過激な事をしてくるのだ。
その姿は、駄々をこねる様で……。
わがままを言ってくれる程度には、俺自身、コグモの信頼を得て来ており、生活や、心にも余裕が出てきた証拠なのだろう。
それは嬉しい。確かに嬉しいのだが……。
もっと、こう……。要求の仕方がソフトにならない物だろうか?
ニコニコと笑う彼女は、精神的にも物理的にも、俺の小さな心臓を掴んで離さなかった。
俺がコグモの翼から手を離す頃には、お互い、息が上がっていた。
顔だけこちらに向けたコグモが、火照った顔で、恨めしそうに睨んでくる。
「そ、そうだな。次回からは止めておこう……」
俺は、罪悪感と、気恥ずかしさから、顔を赤らめ、両手を挙げると、顔だけそっぽを向かせる。
……いや、待てよ、俺。これでは俺だけが悪い事をした様に見えないか?
確かに、俺も悪かったかもしれないが、瞬時に翼を出せない、コグモにも問題がある。
これでは、非常時に使い物にならないではないか。
「そもそもだな……。その翼、出しっ放しにすれば良いだけの話じゃないか?」
俺は素早く背中に翼を生やしながら言う。
それを見たクリアも、真似る様に、無言で、スッと背中から翼を生み出す。
「これぐらいの速度で出せないと、襲われたとき、使い物にならないぞ?」
俺の声に、分かっているのか、いないのか、クリアもコクコクと頷いた。
「…………」
さらに視線を鋭くし、睨んでくるコグモ。
しかし、反論の余地はないらしい。
「……だって、その……。出しっ放しは、くすぐったいんですもん……」
その内に、そっぽを向きながら、小さくつぶやくコグモ。
いじけた子どもの様だった。
「くすぐったいって、お前なぁ……。緊急時に使えない方が困るだろ?」
「翼を生やしていても、感度から何から、自由に変えられる、ルリ様達には分からないんです!この、こそばゆさが!」
こちらに向き返り、怒るように、訴えてくるコグモ。
確かに俺達は、感度から形状、密度まで、ある程度、自由に変えられる。
しかし、コグモの背中に生えている翼は、コグモが、死体のパーツを操るとき同様に、俺が作り出した翼と言うパーツを、コグモの神経に直接つないだだけの物なので、感度も形も質量も、本人は動かすこと以外、一切の操作ができないのだ。
「……んな事言ってもなぁ……。こればっかりは、くすぐったさに、慣れてくれとしか言えないっ!!!」
コグモが、暗い表情でニヤリと笑った途端、俺の体に衝撃が走る。
内側から、虫が這うような、気持ち悪さと、くすぐったさだ。
「こ、コグモ……。お前、まさか……」
俺の問いに、コグモは答えない。
代わりに、いつもの笑顔に戻ると「翼の感度、最大にしてくださいね」と、笑顔で注文してくる。
「そ、そんな事したって、何のメリットもっ!!」
俺は力が抜けて、膝から崩れ落ちる。
「一緒に翼の感度に慣れていきましょう?」
膝をつく俺に視線を合わせるようにして、近距離でしゃがみ込んでくる、コグモ。
もちろん、その笑顔は、悪寒を覚えるほどの、百点満点だ。
「……それとも、こちらに慣れる方が良いですか?」
コグモはムカデの尻尾を引きずり出し、その無数の足に抱え込まれるルリちゃん人形を見せつけてきた。
「ッ~~~……!!」
彼女が、その小さな手で、ルリちゃん人形を優しく撫で上げる。
それだけで俺は、心臓を舐められたような、なんとも言えない気持ち悪さに、辺りをのたうち回った。
「……あら、ごめんなさい。私、これが、どれ程の感覚なのか分かりませんので……」
わざとらしさ満載に、顔を背け、申し訳なさそうな顔をするコグモ。
「でも、もしかしたら、ルリ様が、私の翼の感覚が分からないのと、一緒かもしれませんね!」
そう言うコグモは、罪悪感など一切感じさせない、花の咲いたような笑顔だった。
要するに、俺が、人の苦しみが分からないなら、私も、分からないわ。とでも言いたいのだろう。
悪魔だ……。ここに悪魔がいる……。
俺の知っている可愛いコグモはどこへ行ってしまったのだろうか?
あの、ルリちゃん人形を要求して来た件を皮切りに、たまに、こうやって、過激な事をしてくるのだ。
その姿は、駄々をこねる様で……。
わがままを言ってくれる程度には、俺自身、コグモの信頼を得て来ており、生活や、心にも余裕が出てきた証拠なのだろう。
それは嬉しい。確かに嬉しいのだが……。
もっと、こう……。要求の仕方がソフトにならない物だろうか?
ニコニコと笑う彼女は、精神的にも物理的にも、俺の小さな心臓を掴んで離さなかった。
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