いじわる社長の愛玩バンビ

イワキヒロチカ

文字の大きさ
55 / 120

55

しおりを挟む
 伸ばした手を掬った久世が、指に口付けを落とす。
 そんな些細なことにも感じてぴくんと反応を返してしまうと、更にちゅっと指先を吸われてあっと声が飛び出た。
「やめ、」
「お前は、本当にかわいい」
「~~~~~~」
 そんな感想は黙っておいてほしい。
 かわいいなんて言われるのは嫌なはずなのに、久世が自分のどこかに好感を抱いている、というのは……嬉しいかもしれないなどと思ってしまうのだ。
 そんなことは、恥ずかしいから絶対に秘密だけれど。

 己の思考に悶えていると、腰から枕を抜かれ、脚を抱えられる。
 押し付けられた感触に、思わず滲んだ視界で久世を見上げた。
「力、抜いてろよ」
 ローションでどろどろになっている場所を大きなものでぐっと拓かれて、目を瞠る。
 無理、と言いそうになったのを唇を噛むことで堪えた。
 痛いのは嫌だが、やめられるのはもっと嫌だ。

「っ……力抜いてろって言ったろ」
 痛かったのは中途半端な場所で締め付けられた久世も同じだったらしい。
 言いたいことはわかるのだが、この状態でリラックスするのはちょっと無理だと思う。
 浅い息を繰り返しながらどうにもできずにいると、挿入の衝撃で萎えてしまった万里のものへと手が伸びた。
「あ、…っ」
 敏感な先端をやわやわと揉まれ、そっと扱かれると腰が浮いてしまう。
 そうして気を逸らした隙に、じわりと久世のものを埋め込まれて。
 しばらくそれを続けていくと、肌と肌が触れ合う感触がして、全てを呑み込んだことを知った。

「あ……っ」
「平気……そうじゃないな。生きてるか?」
 冗談めかした言葉よりは気遣わしげに、久世の長い指が涙を拭った。
 内臓を無理やり押し広げられているようなもので、苦しい上に痛いというよりも熱くて、火傷でもしているのではないかと錯覚して、怖くなる。
 それでも。

「へいき、じゃ…ないけど…、いやじゃ…ないから、腹立つ…!」

 途切れ途切れに正直な気持ちを口にすると、一瞬言葉を失った久世が、ぶはっと吹き出した。
「こんなときに笑わせるなよ、万里」
 可笑しげに細められた目。
 からかわれて腹が立っても、そんな顔をされると弱かった。
 久世のこんな顔をもっと見たい。

「あ……!や、あ、」

 質量のあるものが狭い場所をずるりと移動する。
 何度か行き来するうちに、先ほど指で感じさせられた場所を意識するようになり、瞬く間に苦痛を快楽が凌駕した。
 それは久世にも伝わったのだろう。
「は…すごいな。少しは、よくなってきたか?」
 穿つ腰の動きに少し遠慮がなくなる。
 抜けてしまいそうなくらい腰を引かれた後、ぐいっと強く押し込まれると、ぐちゅんと卑猥な音がたって頭が痺れてしまう。
 万里が大きく反応する場所を久世はもう覚えていて、そこを何度も擦られて万里は泣き声を上げた。

「わか、らな…っ、や、っだ、それ」
「これか?」
「あぁっ!」

 嫌だと言ったのに、何故それをするのか。
 久世はいつも意地悪だ。

「やだ、って…言っ……あ!や、おく……っ、そんなにしたら、」
 深く入り込んで奥をぐいぐいと抉られるとまた違う快楽が噴き出して、万里は嫌々をするように首を振った。
「っ……気持ちいいって、言っても笑わないぞ?」
 息を乱した久世が唆してくる。
「そ…いうこと、言う、な」
「奥を『そんなにしたら』どうなるのか…、教えてくれないか、万里」
 低い囁きにゾクリと背筋が慄く。
「あ、あっ!」
 強く突き込まれて爪先がぴんと伸びた。
 気持ちがいい。

「や、あ、も……っ、」
「限界か?」
「んっ…」
 苦しい息の下、必死に頷いて訴える。
「俺も、そろそろ限界…」
 久世に何度か強く突き上げられて、万里は声もなくただ身を任せるしかなく。

「…………………っ!」

 万里が己の腹の上に白濁を吐き出すと。
 密着した体が震えて奥が濡らされるのを感じ、何故か満ち足りた気分になって万里はほっと息を吐いた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。 ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。 秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。 戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。 ●八架 深都(はちか みと) 20歳、大学2年生 好奇心旺盛な性格 ●秋木 晴士(あきぎ せいじ) 26歳、小説家 重度の不眠症らしいが……? ※性的描写が含まれます 完結いたしました!

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...