いじわる社長の愛玩バンビ

イワキヒロチカ

文字の大きさ
70 / 120

70

しおりを挟む

 二人で昇りつめた後、ただの摩擦による射精とは違う、後を引く絶頂の余韻に浸っていると、万里に体重を預けていた久世は身を起こした。
 離れてしまうのかと思ったら、触れるだけのキスが顔に降って、ふわふわとした心地でその甘さに酔う。
「……ん……、」
 他人の体温がこんなに気持ちのいいものだなんて。
 久世は万里の中に居座ったままだ。
 ずっといてほしいなどと思ってしまったことを、もう少し正気が戻れば恥ずかしすぎると苦悶するに違いない。

 すり、と頬と頬が触れ合う。
 なんだか大型の動物にでも懐かれているようで、くすぐったい心地がした。
 もしかして、甘えられているのだろうか。
 だとしたらかわいい……かもしれない。
 これが手管のようなものだったとしても、騙されてやろうと思えた。
 温度差なんて、お互いに感じない方がいい。

「あ……、あのさ」
「ん?」
 久世が伏せていた顔を上げると、至近距離で視線が絡む。
 さりげなく伝えるつもりが、それだけのことで鼓動が跳ねて顔が赤くなったのがわかった。
 だが、今を逃したら一生言えない気がする。
 万里はどうしても震えてしまう唇を開いた。

「俺も、昴さんのこと……ちゃんと好き、だから」

「…………………………………………」

 一世一代の告白だったというのに、久世は目を見開いたまま固まってしまった。
 久世が言えと言ったことだというのに、何故そんな反応をされてしまうのか。
「な、なんか言えっ……、えッ?」
 文句を言おうとして、唐突に内部を押し広げる感覚に息を呑んだ。
 久世は何かちょっと複雑な表情で、万里の足を抱えなおしている。
「なに、ちょ、も、もう一回とか、無理…っ、」
「そう言われてもなあ……これはちょっと、不可抗力だろ」
「は?っ…あっ、待っ……んんっ…!あっ!」
 試す動きで揺らされて、快楽の余韻が残る身体が勝手に反応した。
 単純な摩擦だけでも気持ちがよくて、すぐに息が乱れてしまう。

「んっ、や、あ…っ」
 緩やかな抽挿をしながら、時に腰を擦りつけるようにして最奥を擦られて、万里は悶えた。
 激しくて何が何だかわからないまま過ぎていく行為とは違う、じわじわと快楽を引き延ばされるような愛され方に、体中が熱くて。
「も、や……っ」
 甘すぎて、溶け出してしまいそうだ。
 縋るように見上げた久世は、何が楽しいのか、笑っている。
 汗だくで、髪も乱れていて、それなのにかっこよくて、本当に腹が立つ。
 これを幸せに感じてしまう自分は一体何なのだろう。Mか?
 どうして真面目に告白をしたのにこの展開なのか。文句を言ってやりたいのに、口から漏れるのは意味をなさない吐息ばかり。

「んんっ……」

 身をかがめて、軽く万里の唇を吸った久世は、そのまま耳元へと顔をずらした。
 そして、内緒話をするように、「万里」と密やかに甘い声で囁く。

「うんと優しくしてやるから、もう一回言ってくれ」

 こんな時に、先程の必死の反撃をカウンターで返してくるなんて。
「(本当に、この男は……っ)」
 意地悪で、だけど愛しくて。

「い、……っ言わせて、みせれば」

 乱れた息で受けて立つと、久世は「言ったな」と面白そうに瞳を輝かせた。
 ずっと、こんな表情を見ていたい。 
 悔しさを愛しい気持ちが上回り、万里は力の入らない腕を持ち上げると、久世の顔を引き寄せて、拙い動作で唇を寄せた。



いじわる社長の愛玩バンビ おわり
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。 ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。 秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。 戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。 ●八架 深都(はちか みと) 20歳、大学2年生 好奇心旺盛な性格 ●秋木 晴士(あきぎ せいじ) 26歳、小説家 重度の不眠症らしいが……? ※性的描写が含まれます 完結いたしました!

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...