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しおりを挟む二人で昇りつめた後、ただの摩擦による射精とは違う、後を引く絶頂の余韻に浸っていると、万里に体重を預けていた久世は身を起こした。
離れてしまうのかと思ったら、触れるだけのキスが顔に降って、ふわふわとした心地でその甘さに酔う。
「……ん……、」
他人の体温がこんなに気持ちのいいものだなんて。
久世は万里の中に居座ったままだ。
ずっといてほしいなどと思ってしまったことを、もう少し正気が戻れば恥ずかしすぎると苦悶するに違いない。
すり、と頬と頬が触れ合う。
なんだか大型の動物にでも懐かれているようで、くすぐったい心地がした。
もしかして、甘えられているのだろうか。
だとしたらかわいい……かもしれない。
これが手管のようなものだったとしても、騙されてやろうと思えた。
温度差なんて、お互いに感じない方がいい。
「あ……、あのさ」
「ん?」
久世が伏せていた顔を上げると、至近距離で視線が絡む。
さりげなく伝えるつもりが、それだけのことで鼓動が跳ねて顔が赤くなったのがわかった。
だが、今を逃したら一生言えない気がする。
万里はどうしても震えてしまう唇を開いた。
「俺も、昴さんのこと……ちゃんと好き、だから」
「…………………………………………」
一世一代の告白だったというのに、久世は目を見開いたまま固まってしまった。
久世が言えと言ったことだというのに、何故そんな反応をされてしまうのか。
「な、なんか言えっ……、えッ?」
文句を言おうとして、唐突に内部を押し広げる感覚に息を呑んだ。
久世は何かちょっと複雑な表情で、万里の足を抱えなおしている。
「なに、ちょ、も、もう一回とか、無理…っ、」
「そう言われてもなあ……これはちょっと、不可抗力だろ」
「は?っ…あっ、待っ……んんっ…!あっ!」
試す動きで揺らされて、快楽の余韻が残る身体が勝手に反応した。
単純な摩擦だけでも気持ちがよくて、すぐに息が乱れてしまう。
「んっ、や、あ…っ」
緩やかな抽挿をしながら、時に腰を擦りつけるようにして最奥を擦られて、万里は悶えた。
激しくて何が何だかわからないまま過ぎていく行為とは違う、じわじわと快楽を引き延ばされるような愛され方に、体中が熱くて。
「も、や……っ」
甘すぎて、溶け出してしまいそうだ。
縋るように見上げた久世は、何が楽しいのか、笑っている。
汗だくで、髪も乱れていて、それなのにかっこよくて、本当に腹が立つ。
これを幸せに感じてしまう自分は一体何なのだろう。Mか?
どうして真面目に告白をしたのにこの展開なのか。文句を言ってやりたいのに、口から漏れるのは意味をなさない吐息ばかり。
「んんっ……」
身をかがめて、軽く万里の唇を吸った久世は、そのまま耳元へと顔をずらした。
そして、内緒話をするように、「万里」と密やかに甘い声で囁く。
「うんと優しくしてやるから、もう一回言ってくれ」
こんな時に、先程の必死の反撃をカウンターで返してくるなんて。
「(本当に、この男は……っ)」
意地悪で、だけど愛しくて。
「い、……っ言わせて、みせれば」
乱れた息で受けて立つと、久世は「言ったな」と面白そうに瞳を輝かせた。
ずっと、こんな表情を見ていたい。
悔しさを愛しい気持ちが上回り、万里は力の入らない腕を持ち上げると、久世の顔を引き寄せて、拙い動作で唇を寄せた。
いじわる社長の愛玩バンビ おわり
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