溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ

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極道とウサギの甘いその後+サイドストーリー

極道とウサギの甘いその後4-23

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 翌日、日が高くなっても深い眠りの中にいた湊は、竜次郎が誰かに呼ばれて起き上がったことで微かに意識を浮上させた。
 優しいぬくもりが去ってしまうことが寂しくて、寝ぼけたまま「一緒に行く」と訴える。
 竜次郎は「まだ寝てていいぞ」と押し留めようとしていたが、湊が頑なにシャツの裾を掴んでいるとやがて折れた。
 一緒にいられることにほっとしていたのも束の間、適当に服を着せられ手を引かれて連れていかれた先で、湊の目は完全に覚めた。

「おい竜、まだ寝てたんだろ。無理矢理連れまわすんじゃねえ」
「うるせえ。こいつが一緒に来たいって言ったから連れてきただけだ」

 開いた襖の先には、床の間を背に座るいつもの和装の金、その対角には派手な柄の開襟シャツの南野がいて、二人ともやけにたのしげにこちらを見ている。
 金と竜次郎の乱暴なやり取りの横で、湊は慌てて頭を下げた。
「っす、すみません。こんな格好で……!お、おはようございます」
 顔も洗っていない上に髪はぼさぼさで、人前に出る格好ではない。
 慌てて手櫛で髪を整えるが、三人から「そんなこと気にすんな」と笑われてしまった。

 とりあえず座れと促されて、竜次郎と並んで縁側を背にした南野の向かいに座る。
「はっはっは!それにしても、俺としたことが一本取られたな」
 日守が茶を運んできて、南野の高らかな笑い声が響く。
 流石に歴戦の兵、カウンターに突っ伏すほど飲んでも翌朝にはけろりとしたものだ。
 湊は恐縮しながら「昨晩はありがとうございました」と再度頭を下げた。
「いやはや、まさかこんなほっそいのに負けちまうとはなあ。ま、もう少し若けりゃ、俺が勝ってたけどな」
「はっ、俺はそのお人が負けるわけはねえと思ってたぜ」
「おい、金ちゃんが勝ったわけでもないのに、なんでえその言い様は」
「忠さんもそろそろ年貢の納め時ってことなんじゃねえか?」
「俺よりジジイのくせに、その言葉そっくりそのままかえすわ!」

 終わらぬ楽しげなやりとりを胡乱な目で見つめていた竜次郎が「それで?」と強めに口をはさむ。
「じいさんどもが何の用なんだよ。まさかそんな枯れた会話を聞かせるためじゃねえだろうな」
「おい竜次郎、お前は相変わらず親父様に向かってなんてぇ口の利き方なんだ。少しは湊君を見習え」
「はあぁ?俺はあんたみてえに、寝床に土足で上がり込んで人の女にケチつけるなんて失礼な真似はしねえぞ」
「まったく……口ばかり達者になって、これだから最近の若者は」
 埒があかず、南野に鼻息で一蹴された竜次郎の額に血管が浮き上がる。
 湊は「どうどう」とあやすように隣の膝をぽんぽんした。

 ぐっと湯飲みを呷った南野は、一つ息を吐いてから口を開いた。
「いやなに、そろそろお暇するから、湊君のツラを拝んでおこうかと思って」
「おう。帰れ帰れ」
「竜次郎にゃ言っとらんわ。黙ってろ」
 南野は竜次郎の嫌味を軽くいなし、湊へと視線を向ける。

「お前さんが姐さんとしてちゃんとやってるか、また偵察に来てやるからな」
「……!はい、よろしくお願いします……!」

 ニヤリと親しげに笑いかけられて、認めてもらえたことを知り、笑顔が溢れた。
 このことでは、日守には多大な力添えをしてもらったし、竜次郎にも心配をかけた。
 それでも頑張ったことが報われた瞬間はやはり嬉しい。
 これでようやくスタートラインではあるが、竜次郎のそばにいるのにふさわしい人間であるよう、これからも頑張っていきたいと決意を新たにした。
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