79 / 82
そして学園へ……
39話
しおりを挟む
陽が暮れ始め、薄暗くなってきて外を見るけれど、話し合いはこれくらいで問題無いと思う。
お母様が作り替えられてしまったリバスト護衛騎士隊長達を無力化して、ヘルガが彼らを倒す。
これに関しては、少しばかり心が痛むけど……、一度なってしまった以上は無差別に人を襲う前に眠らせてあげないといけない。
「……マリス、ちょっといいかな」
「シルヴァ、どうかしたの?」
そうして話し合いを終わりにして解散する流れになり、シルヴァ王子と二人きりになった時だった。
真剣な表情を浮かべた彼が私へと近付いて来ると……
「……嫌でなければ君の事をこれからシルヴィと呼んでもいいかな」
「……え?」
今更だけれど、マリス・シルヴィ・ピュルガトワール、これが私の名前。
だけど……この国において貴族の名前をミドルネームで呼ぶ事が出来るのは、婚約者や夫となる相手のみで、本来であればやすやすと呼ぶ事を許す事は出来ない。
でも、彼にシルヴィと呼ばれると昔の事を思い出して胸が締め付けられるように苦しくなると共に、嬉しい気持ちが込み上げて来る。
「……ミドルネームで呼ぶ事の意味をシルヴァ様は分かって言ってますか?」
「勿論分かってるさ、ただ……何て言えばいいのかな、妹のセレスティアを助けてくれて、尚且つその元凶が魔族だと分かっても勇気をもって立ち向かう姿を見たり、昔から俺の扱いを知ってるかのように接する君を見て興味が沸いたんだ」
「だからって、そんないきなり……」
「マリス、俺はね……王族という立場だから、妻に、いや、王妃になる可能性がある相手は有能で無ければならないと思っているんだ、君の事だから知ってるとは思うけどその為に王位継承権を持つ者は学園へ入る事が義務付けられている」
勿論、その事については以前の人生でシルヴァから直接聞いた事があるから知っている。
「……けどね、学園以外で見つけても良いと思うんだ」
「あの、私は、領地を継がなければいけない立場なので……」
「勿論分かっているさ、けど……俺は少しでも君の事が欲しいと思ってしまった、だからアデレード辺境伯夫人やマリウス・ルイ・ピュルガトワール辺境伯には申し訳ないが、俺はどうしてもこの国の王になりたい、その為には有能な部下達と信頼できる友人に、背中を預けられる妻が必要なんだ」
「話しは分かったわ、けど……何度も言うけれど私は王妃になるつもりはないわ、だってピュルガトワール家には跡取りが私しかいないもの、だから……少なからず血を絶やさない為に婿養子を家に迎えなければいけないから、いくら説得されても今は考える事は出来ないの」
「……ん?今は?もしかして、その問題をなんとかする事が出来ればこの話を受けてくれるのかい?」
そんなことを言われたら、どう言葉を返せばいいのか分からなくなる。
本当なら問題が解決しても、その申し出を受ける事は出来ないと言わなければいけない。
でも、彼の事を思うとそれを口にする事が出来なくて……
「……すまない、どうやら君を困らせてしまったみたいだね」
「……え?」
「無理強いしたいわけじゃなかったんだ、ただ……マリス、君が余りにも今まで出会って来た女性達と比べて魅力的な女性だったから……つい」
「いえ、そんなシルヴァ、あなたが謝らなくてもいいの、これは私がちゃんと返事を返そうとしなかったから……それに」
「それに?マリス、どうしたんだい?」
これを言葉にしたら後戻りが出来なくなる。
さっき頭の中で考えていた事と、今口にしようとしている事が矛盾している事も理解している。
けど……それでも、彼を見たら、彼の優しい顔で、声で、私を見て、私だけを必要として欲しい。
それさえあれば何もいらないと思ってしまう私がいて、それが良くない事だと分かっているし、彼には私とは違う人と一緒になって、魔王になった私に殺される事無く幸せに生きて欲しいという想いもある。
でも、それでも、彼に──
「シルヴァがどうしても呼びたいのでしたら、シルヴィって呼んでいいわ」
シルヴィって呼んで欲しいと思ってしまった。
「……マリス?」
「けど、呼ぶのは二人きりの時だけにして?、お母様が聞いたら私がピュルガトワール家を捨てて王族に入ってしまうんじゃないかと心配すると思うの……、それに私はあなたとはまだ会ったばかりだから、何度も言うけどまだ王妃とか婚約とか考えられないの」
「それでもいい、君が何を不安に思っているのかは分からないけれど、マリス、いや、シルヴィの悩みも俺が何とかするよ」
彼にそう言われると本当に何とかしてくれそうで、考えられないと言ったのに気持ちが更にぶれそうになる。
けど、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ゆっくりと息を吐くと、真剣な表情を浮かべて私の方を見ると
「……おかげで魔族と戦う勇気が持てそうだよ」
と言葉にして柔らかな笑みをこぼす。
そしてゆっくりとテントの外へと向かうと、途中で立ち止まり
「戦いが終わった後の楽しみを増やしておかないと、魔族との戦いで足が竦んでしまいそうで怖かったんだ」
「うん」
「だから、何とか頑張ってお互いに生き残ろう」
こちらへと手を差し伸べる。
その姿を見て、一瞬反応に迷ったけれど……そういうギャップがかわいいと思いながら笑顔でその手を取った。
お母様が作り替えられてしまったリバスト護衛騎士隊長達を無力化して、ヘルガが彼らを倒す。
これに関しては、少しばかり心が痛むけど……、一度なってしまった以上は無差別に人を襲う前に眠らせてあげないといけない。
「……マリス、ちょっといいかな」
「シルヴァ、どうかしたの?」
そうして話し合いを終わりにして解散する流れになり、シルヴァ王子と二人きりになった時だった。
真剣な表情を浮かべた彼が私へと近付いて来ると……
「……嫌でなければ君の事をこれからシルヴィと呼んでもいいかな」
「……え?」
今更だけれど、マリス・シルヴィ・ピュルガトワール、これが私の名前。
だけど……この国において貴族の名前をミドルネームで呼ぶ事が出来るのは、婚約者や夫となる相手のみで、本来であればやすやすと呼ぶ事を許す事は出来ない。
でも、彼にシルヴィと呼ばれると昔の事を思い出して胸が締め付けられるように苦しくなると共に、嬉しい気持ちが込み上げて来る。
「……ミドルネームで呼ぶ事の意味をシルヴァ様は分かって言ってますか?」
「勿論分かってるさ、ただ……何て言えばいいのかな、妹のセレスティアを助けてくれて、尚且つその元凶が魔族だと分かっても勇気をもって立ち向かう姿を見たり、昔から俺の扱いを知ってるかのように接する君を見て興味が沸いたんだ」
「だからって、そんないきなり……」
「マリス、俺はね……王族という立場だから、妻に、いや、王妃になる可能性がある相手は有能で無ければならないと思っているんだ、君の事だから知ってるとは思うけどその為に王位継承権を持つ者は学園へ入る事が義務付けられている」
勿論、その事については以前の人生でシルヴァから直接聞いた事があるから知っている。
「……けどね、学園以外で見つけても良いと思うんだ」
「あの、私は、領地を継がなければいけない立場なので……」
「勿論分かっているさ、けど……俺は少しでも君の事が欲しいと思ってしまった、だからアデレード辺境伯夫人やマリウス・ルイ・ピュルガトワール辺境伯には申し訳ないが、俺はどうしてもこの国の王になりたい、その為には有能な部下達と信頼できる友人に、背中を預けられる妻が必要なんだ」
「話しは分かったわ、けど……何度も言うけれど私は王妃になるつもりはないわ、だってピュルガトワール家には跡取りが私しかいないもの、だから……少なからず血を絶やさない為に婿養子を家に迎えなければいけないから、いくら説得されても今は考える事は出来ないの」
「……ん?今は?もしかして、その問題をなんとかする事が出来ればこの話を受けてくれるのかい?」
そんなことを言われたら、どう言葉を返せばいいのか分からなくなる。
本当なら問題が解決しても、その申し出を受ける事は出来ないと言わなければいけない。
でも、彼の事を思うとそれを口にする事が出来なくて……
「……すまない、どうやら君を困らせてしまったみたいだね」
「……え?」
「無理強いしたいわけじゃなかったんだ、ただ……マリス、君が余りにも今まで出会って来た女性達と比べて魅力的な女性だったから……つい」
「いえ、そんなシルヴァ、あなたが謝らなくてもいいの、これは私がちゃんと返事を返そうとしなかったから……それに」
「それに?マリス、どうしたんだい?」
これを言葉にしたら後戻りが出来なくなる。
さっき頭の中で考えていた事と、今口にしようとしている事が矛盾している事も理解している。
けど……それでも、彼を見たら、彼の優しい顔で、声で、私を見て、私だけを必要として欲しい。
それさえあれば何もいらないと思ってしまう私がいて、それが良くない事だと分かっているし、彼には私とは違う人と一緒になって、魔王になった私に殺される事無く幸せに生きて欲しいという想いもある。
でも、それでも、彼に──
「シルヴァがどうしても呼びたいのでしたら、シルヴィって呼んでいいわ」
シルヴィって呼んで欲しいと思ってしまった。
「……マリス?」
「けど、呼ぶのは二人きりの時だけにして?、お母様が聞いたら私がピュルガトワール家を捨てて王族に入ってしまうんじゃないかと心配すると思うの……、それに私はあなたとはまだ会ったばかりだから、何度も言うけどまだ王妃とか婚約とか考えられないの」
「それでもいい、君が何を不安に思っているのかは分からないけれど、マリス、いや、シルヴィの悩みも俺が何とかするよ」
彼にそう言われると本当に何とかしてくれそうで、考えられないと言ったのに気持ちが更にぶれそうになる。
けど、そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ゆっくりと息を吐くと、真剣な表情を浮かべて私の方を見ると
「……おかげで魔族と戦う勇気が持てそうだよ」
と言葉にして柔らかな笑みをこぼす。
そしてゆっくりとテントの外へと向かうと、途中で立ち止まり
「戦いが終わった後の楽しみを増やしておかないと、魔族との戦いで足が竦んでしまいそうで怖かったんだ」
「うん」
「だから、何とか頑張ってお互いに生き残ろう」
こちらへと手を差し伸べる。
その姿を見て、一瞬反応に迷ったけれど……そういうギャップがかわいいと思いながら笑顔でその手を取った。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる