箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―

物部妖狐

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第二章 修行、そして旅に出る

18話 奥さんネットワーク

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 夕食も済ませ、やる事を済まして後は寝るだけになった時に何も知らないカー君が帰って来たから、寝ているゼンさんを二階に残し、庭に出て事情を説明すると……

「あぁ……だから、セイラが俺の事を探してたんだね」
「セイラさんが……?もしかして何か聞かれたの?」
「いや、俺の奥さん達が今外に出たら面倒な事になりそうだからって、匿ってくれたから会わなかったよ」
「へぇ……、そうなんだ」

 何て言う奥さんネットワーク、カー君に沢山お嫁さんがいるのって、こういう時に凄い役立つんだなぁ。
いや、関心するところなのかなって思うけど、実際に助かってるから何だか複雑な気持ち。

「そういえば、俺が居なかった間の事も教えて貰ったけど、旅の道中のお金について……何とかなると思う」
「え……?」
「ほら、あの集落を離れて行こう、全国の俺の奥さん達が移動したんだけど、どうやら……旅の支援をする為でもあるみたいでね」

 何か嫌な予感がする。
もしかして……いや、何だろう。
例えは悪いんだけど、働いてない男の人が自分の彼女さんや奥さんに対して、お金を求めて養ってもらう見たいな流れのような。
それってヒモじゃんって思うけど、そういうのってなんかやだ。
だってさ夫婦なんだからお互いに助け合うものだと思うし……それなのに片方だけに依存して助けて貰うって、何か健全じゃない気がする。
多分私の価値観が元居た世界のままだから、そう感じるのかもしれないけど、考えれば考える程やっぱ違うんじゃないかなって……

「もしかしてだけど、お金をくれるとか?」
「……ん?何だか嫌そうな表情をしてるけどどうしたんだい?」
「それってなんかやだなって……、ヒモみたいで良くないと思う」
「ヒモ?、ヒモって何だい?」
「それはえっとね?カー君にも分かるように説明すると──」

 とりあえずヒモとは何か、私なりにどういう事が嫌なのか出来る範囲で説明をする。

「シャルネ、そこまで難しく考えないで良いと思うよ」
「……え?」
「君の言う、ヒモって言う言葉は確かに、ろくでなしの男性が女性に依存してるだけの、あんまりお勧め出来るような生き方では無いし、聞いていて気持ちの良い物では無かったけど、俺達はそうじゃないだろう?何の為に旅をするんだい?」
「……この世界で戦争ごっこをしている悪い神様達を懲らしめて、争いを止める為?」
「戦争ごっこ?懲らしめる?あぁ……うん、まぁ……それでもいいか、俺達はその目的の為に活動しているんだ、その道中でまじめに働いてお金を稼いでいる時間があると思うかい?」

 ゼンさんにの時も考えたけど、難しい気がする。
カー君の言うように時間があるのかと言われたら難しい……けどまとまった時間は取れなくても、一日程度なら出来るんじゃないかなって思う。
でもそういう単発のお仕事って本当に仕事が出来るタイプの人じゃないと無理な気がするし。
なら私に出来る事って何?って思うとこの透き通るような肌と、美しい容姿……そして可愛らしい顔位だ。
その長所を生かして、夜の酒場とかでお客さん達の前に出て、注文を受けて料理を運んで、お酒を注いであげて……未経験でも頑張ればやろうとすれば多分出来るだろうけど……、ほら私人見知りだから……

「……出来なくはないけど、無理だと思う」
「それはどうしてだい?」
「だって、私達が働いてお金を稼いでる間、この世界では争いが続くわけだし、それって良くないよね?戦いと止める為の旅なのに、働いてる間犠牲者が増える事を黙認する事になるし」
「そうだね……、だからこういう時に助けてくれる人の存在が必要なんだよ、だから言い方は悪いかもしれないけど、こういう時は利用出来るものを最大限効率的に利用できるようになったいい、相手が俺の奥さんだからって気にする事は無い、シャルネにとっては必要な事なんだからね」

 そう言って私の頭を優しく撫でると、調理場を指差す。
何時の間に用意したのだろうか、飲み物がテーブルの上に乗っているのが見えて、いったい誰が淹れてくれたのかと思うけど、多分幽霊さんが気を使ってくれたのかな。

「立ったままで話すのは疲れるだろう?ツバキにお茶を淹れて貰ったから座ってゆっくり話そう」
「……ツバキ?」
「あぁ、シャルネは名前を知らないんだね、ほら……あの君が幽霊さんって呼んでる子だよ、この前テントで話している時に名前を教えて貰ってさ」
「へぇ……いつ名前を聞いたの?」
「幽霊とは子を生す事が出来るのかと……興味本位で数日間声を掛けて仲良くなってテントに入った際に教えてくれたんだよ」

 旅をしながら奥さんを増やすのは、ダニエラさんの件もあったからもうしょうがないと割り切ってる。
けど……既に死んで幽霊になった人まで口説いて、手を出す何て……見境が無さ過ぎるというか、むしろどうやってこの短期間の間にそこまで親密な関係になったのか。
それにどうやって肉体が無いのに、子供を作れると思ったのか……色々と突っ込みどころが多すぎて反応に困ってしまう。

「カー君、そんな見境なく手を出して子供を増やしてばかりだと、そのうち他の奥さん達から刺されるかもよ?」
「……ん?何を言ってるんだい?俺が選んで一緒にいたいと感じた以上は、全員幸せにするし、生まれて来た子供達に関しても親としての責任を放棄するつもりは無いよ」
「カー君がそこまで言うならいいけど、旅の途中で出来た新しい奥さんに嫉妬されて刺されるとかって言うのは止めてね?」
「そこはちゃんと、ダニエラの時みたいに一から説明して分かって貰えた人とだけ夫婦になるから大丈夫だよ」
「ならいいけど……」

 ダニエラさんに関しては暮らしていた場所が異常な場所だったからそれでいいかもしれないけど、人によっては嫉妬深い人とか、何て言うか……精神的に病んでる人もいると思う。
たまたま、今までそういう人達に出会ってないだけで……、これはうん、私がしっかりと管理してあげないとダメかもしれない。

「それに……俺と関係を持って夫婦になった人の中には、嫉妬深いタイプもいたけど、暫くしたら嫉妬する事も無くなったから、これからも問題無いと思うよ?」
「カー君?それってなんか怖いんだけど?……もしかしてドメスティックなバイオレンスで洗脳とかしてる?」
「ドメスティックでバイオレンス?何を言ってるのか分からないけど、洗脳とかはしてないよ、俺の奥さん同士で助け合い支え合ってるみたいでさ、気づいたら本当の姉妹みたいに仲良くなってるおかげで、トラブルが無いだけかな」
「……え?何それ怖い」
「……え?」

……それを聞いて浮かんだのは、全員カー君の子供を抱きかかえながら器用に肩手で『あなた、服装が乱れていてよ?』と直しつつ、指摘された人が『お、お姉さま、ありがとうございます!』という、ちょっと綺麗な花が咲きそうな何とも言えない光景で……。
何て言うかそんな光景を考えてしまう辺り、私ってもしかしてそっち方面の才能があるんじゃないかなって思いつつテーブルのお茶を飲み干すと、明日に備えて寝る事にして部屋に戻るのだった。
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