治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第三章 戦う意志と覚悟

23話 初恋の人

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 家の中に入って直ぐに謎の箱があるけどこれはどう使う物なのだろうか…、そして玄関が外と比べて一段低くなっていて違和感を感じる。
何か変な部屋だな……

「あぁ、レースは知らんのか、これは靴箱って言うてな?玄関で靴を脱いでそこにしまってから奥に入るんよ。何でも栄花では良くある建物らしくてな?あちらでは家に入る時は口を履いて入るのは駄目らしいんだねぇ」

 正直栄花の人って変な人が多いなぁって思っていたけど、文化の違いから来るものならしょうがない気がする。
文化が違うと価値観や常識が違って当然なのだから……とは言ってもぼくが知ってるのは、アキ、ケイ、アキラさんの三人だけだからもしかしたらその中でケイさんとアキラさんが変わっているだけかもしれない。

「ある意味良かったかもしれんなぁ、ほらアキラさんとか栄花の人やろ?あちらの文化に合わせた家があるって事は彼等の印象は結構あがったりするかもやん?折角これから心器の使い方とか教えて貰うんだから居心地良い方がええと思うんよ」
「そういう意味なら今のうちに慣らしておいた方が良いかもね」

取り合えず、コルクに言われた通り靴を脱いで家の中に入ろうとするけどダートを背負っているから両腕が塞がってしまっているせいで、靴を何とか脱げはしたけど靴箱にしまう事は出来そうにない……

「靴はうちがしまっておくからさっさと入りー」
「ありがとう」

靴をしまうのをコルトに任せて玄関の奥に入ったけど、大きい家の割に中は普通の家具しかない。
もしかしたら師匠の家みたいに最新の魔導具が揃えられているんじゃないかと期待してしまったけど、前の家主はそういう贅沢を好まない人だったのかな。
そう思っていると、同じく靴を脱いだコルクが入って来てぼくに話しかける。

「レースが疑問に思ってる事は後でうちが答えたるからダートを適当な空き部屋に入ってベッドに寝かせてき?」
「そうだね……、でも適当な部屋って一階に沢山部屋があるけどもしかして全部にベッドがあったりする?」
「せやで?……わかったら早く横にさせたげな?それとも好きな女の子を背負った感覚を楽しむ変態さんなんか?」

 今はコルクのおふざけに反応する余裕がない。
取り合えず言われた通りに部屋に入ると小さなテーブルとベッドに着替えを入れる衣装棚がある位で殺風景な部屋だと思う。
とはいえ今はダートを休ませる事が出来るならそれでいい……、ぼくは背負っているダートをゆっくりとベッドに降ろして寝かせるとコルクの元に戻る。

「なんや背中の感触が無くなって物足りなさそうな顔しとんなぁって……そんなめんどくさい人を見るような顔すんなやさすがに傷つくで?」
「こういう時のコルクって実際めんどくさいじゃん」
「あんた、変わろうとするのは良いけどあんまり思った事をストレートに言うのは止めた方がええよ?……、それよりもさっきレースが感じた疑問についてなんやけどこのデカい家は護衛隊隊長グランツの家兼、護衛隊の詰所だったんだけど隊長さんが二カ月前のつちらが同行した開拓で起きた大量の犠牲者が出たやろ?それで周りから色々と言われたらしくて夜逃げしてもうてな?それでこの屋敷の持ち主が居なくなったから護衛隊の皆が使えなくなってな?そのまま空き家になったんよ」
「……それって護衛隊の人達は大丈夫なの?」

 いきなり今迄使っていた場所が使えなくなってしまったら困惑するだろうし、何よりも詰所に泊まり込みながら仕事していた人もいただろう。
彼等はどうなってしまったのか心配になる。

「んー、大丈夫じゃなかったで?家がある人達は自宅から仕事に向かう形になったらしいけど、この町に住居が無い人達の大半は他所に出て行ってしもうたからなぁ……とはいえそこんとこをうちらが考えてもしゃーない、そこを上手くやるのは町長と領主に任せておけばええんよ」
「ならいいけど……それならコルクにお願いしたい事があるんだけどさ、この家の左側改築したいから後日職人を紹介して貰っていいかな」
「えぇけど改築ってどうするん?」
「この家ってかなり大きいし、それに二階建てだからさ下を診療所にして上を居住スペースにしようと思うんだ。その為に一階を大幅に改築して一階と二階を別々にしたいなって、ほら以前は診療所と居住スペースがドア一つで行き来出来る状態にあったからさ、二階に直接上がれるように外に階段を作ってそこから二階の居住スペースに入れるように玄関を増やして下が診療所のドアにして上を玄関にするって言う……」
「うちにそんな早口で言われてもうちは職人じゃないからやめぇやっ!……取り合えず下の階を診療所を開設出来るように改築して上をレースとダーの愛の巣にするって事やろ?」
「愛の巣って……そんなわけじゃでも将来的には?」

 自分で愛の巣って言うと何ていうか凄い恥ずかしくて顔が熱くなる。
これなら言うんじゃなかった。

「……見てるうちまで恥ずかしくなるからそういう顔する位なら反応するの止めてくれない?」

 ジトーっとした目でコルクから見られて困惑してしまう。
付き合い長いけど、コルクってこんな顔も出来るんだな……。

「ごめん……でもさ、ぼくはダートの事が好きだ。例え彼女が異世界の人だったとしても一緒に居たいと思うしダートがぼくの気持ちに応えてくれるならずっと傍に居て欲しい、この気持ちに嘘はないよ」
「……そういうのはうちじゃなくて本人に直接言うた方がええよ?」
「それはそうだけど、ダートの前で言えるのか分からない」
「このヘタレが、まぁ……そこんとこはジラルドから逃げ続けていたうちが強くは言える事じゃないけどあんたらにはあんたらのペースがあるんやからゆっくりやればええよ。何かあったらうちとジラルドが力貸したるから安心しぃ?」
「……ありがとう」

 こういう時色々と気を使ってくれるコルクは本当に頼りになると思う。
そんな彼女の面倒見の良さや頼っても笑顔で答えて解決してくれる所にも昔のぼくは惹かれたんだろうな……とは思うけど、この人がぼくの初恋の相手で良かったなと改めて感じる。
まぁ、若気の至りで勢いで気持ちを伝えたら『気持ちは嬉しいけどごめんな?うちみたいな、好きな男から逃げる嫌な女よりも、将来あんたの事を必要としてくれる良い子に出会うかもしれないからその思いは受け取れないよ』って見事に振られたけど、それ以降も普段通りに接してくれて実の姉のような距離感で居てくれなければぼくはきっと、今以上に拗らせていたような気がする。

「ほんと、あんたといいダーといいどうしてうちの周りには世話が焼ける子が多いんやろねぇ……子供の頃は弟か妹が欲しいって思ったりしたけど、何かもう産んで無いのに大きな子供が出来た気分やわぁ、まぁある意味将来の予行練習になっていいかもしれないけど何か複雑やねぇ」
「何ていうか……いつもごめんね」
「別にええんよ、うちがやりたいからやってるんだから安心してママに甘えてええんよー」
「……それはちょっと嫌だかな」
「なんだとぉ!?……ほんとわがままな子だわぁって事で、うちはダーの様子見てくるわぁ、ちょっと女同士で話したい事もあるしなぁ、それにレースもアキラさんにそろそろ連絡入れた方がええんじゃない?」

……コルクはそういうとダートが寝ている部屋に入って行く。
それにしてもわがままな子か、そんな事言われた事無かったから違和感が凄いけど言われてもしょうがないのかもしれない、コルクには頼っても大丈夫だって言う安心感があるからそこから無意識に甘えてしまうのだろう。
でもぼくにはもうダートがいるから彼女の事を考えるとそろそろ姉離れしないといけないなと思いながら、通信してる時の声でダートを起こさないように家の外に出ながら端末をポケットから取り出してアキラさんに連絡を入れる事にした。
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