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第五章 囚われの姫と紅の槍
9話 聖属性の魔術
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飛び掛かるクロウの攻撃を躱すと、時間差で尻尾の刃がヒジリに迫る。
彼女も避けきれないようで槍で受けるが、思ったよりも力があったのだろう。
受けた方向に吹き飛ばされると地面に槍を突き立てて体勢を整えて着地した。
「クロウくん、最初からその姿で戦えば強かっただろうに残念だねー……、とはいえ必要とは言え挑発したりやり過ぎちゃったかなぁ、姫ちゃん達ごめんねー?加減出来ないー」
「加減出来ないって、ヒジリは何をする気なの?」
「……単純な力の暴力が起きますね」
「カエデちゃん、それってクロウさん大丈夫なの?」
「獣人は打たれ強い人が多いので、一日位は気を失うかもしれませんが問題無いと思いますよ?」
ヒジリが槍を片手に持ち何度か振るとその度に動きが早くなっていく。
その動きはまるで空中に何かを描いているようで不思議な陣を宙に形作る。
「……あれはいったい?」
「ヒジリちゃんの魔術です、聖属性と言う光属性から派生した珍しい属性で善を癒し、悪しきを滅する事に特化しています」
「善を癒す?、それってどういう?」
「何でも属性そのものが判別してくれるらしいですが、原理は聞いたけど良く分からないんです、……えっと、何でもその人の頭から出る波長と心理状態で振り分けられるとかで」
「何となく理屈は分かるけど……」
その人の脳内から出る神経伝達物質によるのかもしれないけど、そこから何がどのようになって善悪を区別しているのかが分からない。
特に心理状態を含めて判別する場合どうなっているのだろうか。
これだとまるで魔術事態に意志が無いと不可能な気がする。
ただこうやって考えている間にも、ヒジリの動きを見て警戒していたクロウが覚悟を決めたようで彼女に飛び掛かった。
「……聖別の光、今ここに彼の者の善悪を示せっ!」
空中に描いた陣が銀色の光を発する。
光を浴びたクロウが光を浴びて吹き飛ばされたと思うと、全身から黒い煙を上げて焼け爛れて体毛が抜け落ち徐々に人の形に戻って行った。
「……相手を害そうとする純粋な気持ちを持たなかったから、あたしに勝てたかもしれないのにね」
純粋な気持ち?つまり脳から出る伝達物質に本能的に従ったら区別されるのだろうか。
それとも理性を失った獣が対象になる?、考えれば考える程分からなくなる、そこに原理が存在するのだろうかと悩んでしまうけどどうなんだろう。
「これって本当に魔術なの?理屈は分かるけど原理が分からないんだけどさ」
「……ですよね、原理が分からない以上闇属性に分類されると思うんですけど、何故か聖属性だけはそこに振り分けられてないんですよね、ただヒジリちゃんが言ってたんですけど、この魔術を使っていると相手が悪意を持って嘘を付いてるかどうかも分かるらしいですよ」
「……何か人間嘘発見器みたいだね」
ダートが不思議そうな顔をしながらそう言葉にする。
嘘発見器と言うのは面白い発想だと思う、特に相手が悪意を持って嘘を付いているかどうかが分かるという事は、もしかしてこの属性は『相手の悪意』に反応するのかもしれない。
例えば相手に何かされたとしよう、そこで相手にやり返してやるとかっていう感情を抱いても反応はしないんだと思う。
どっちかというと相手に対して、『この人を傷つけてやろう』と言う気持ちを持って行動した場合に魔術が反応するのかもしれない。
……ここは試しにやってみようか、悪意を持って相手を傷つける意識で彼女に害意を与えるイメージをしてみようか。
必要な事だったとはいえ、クロウが手酷くやられた事に関して仕返しをしてやりたいという気持ちが少なからずぼくの中にはある、だから最近ぼくが覚えた新しい雪の魔術で彼女を害そうという感情を意図的に彼女に向けたり止めたりしてみる。
「……レースくん?、あなたまさか私の事が分かるの?」
「え?」
彼女が驚いた顔をしたと思うと心器の槍を消してこちらに歩いてくる。
その姿に何やら迫る物を感じて思わず後ろに壁がある事を忘れて下がってしまった。
「だってさっきからあたしに対して殺意を向けたり止めたり意図的に繰り返してるよね、しかも悪意の部分は純粋に送って来るから嫌でも分かるよー」
「えっと……」
「あたしの魔術を見てここまで理解してくれたの、ケイくん位だよっ!……ダートちゃんがいなかったら、君の事欲しくなっちゃったかも」
「……ヒジリさん?、レースに手を出したら分かってるよね」
「分かってるよー、あたしにはケイくんがいるもの……、あの子は残念な所があるけど、お金を沢山持ってるしー、優しいしー、それに何より私と戦って始めて倒した人だからねー、さすがに二人も人生の相棒はいらないよー」
ダートがぼくとヒジリの間に入って、彼女の事を睨みつけるけど気にしてないのか、唐突に惚気始める。
……それにしてもケイって、あの半年以上前にルードと一緒に戦った彼だと思う。
そんな事を考えていると、冒険者ギルドの中から騒がしい声がする
『何ださっきの光はっ!?』
『この時間訓練所を誰かが使用するという話を聞いて無いぞっ!、誰だ勝手に利用してる奴はっ!』
『俺達ギルド職員の前で舐めた事をしてタダで済むと思うなよ!?』
「あ、やっばーいっ!?、姫ちゃん達ごめんっ!ここは私が何とかするからクロウくんを連れて逃げてっ!……あ、あと依頼の件はこっちで書類作っとくからね」
……彼女はそういうと冒険者ギルドの服を風の下級魔術を使って所々切り裂いてあられもない姿になると、全体を傷付けてあからさまに誰かに危害を加えられたかのようにして訓練所の扉の近くでうつ伏せになって倒れる。
咄嗟の事にびっくりして、治癒術を使おうとするけどダートに『治したら意味無いでしょっ!』と言われて我に返ると、肉体強化を使ってクロウを背負って皆で冒険者ギルドから逃げるように出て行く。
確かアキラさんからの伝言で怪我人が出たら教会に行けと言われていた以上、急いでそこに向かうとしよう。
彼女も避けきれないようで槍で受けるが、思ったよりも力があったのだろう。
受けた方向に吹き飛ばされると地面に槍を突き立てて体勢を整えて着地した。
「クロウくん、最初からその姿で戦えば強かっただろうに残念だねー……、とはいえ必要とは言え挑発したりやり過ぎちゃったかなぁ、姫ちゃん達ごめんねー?加減出来ないー」
「加減出来ないって、ヒジリは何をする気なの?」
「……単純な力の暴力が起きますね」
「カエデちゃん、それってクロウさん大丈夫なの?」
「獣人は打たれ強い人が多いので、一日位は気を失うかもしれませんが問題無いと思いますよ?」
ヒジリが槍を片手に持ち何度か振るとその度に動きが早くなっていく。
その動きはまるで空中に何かを描いているようで不思議な陣を宙に形作る。
「……あれはいったい?」
「ヒジリちゃんの魔術です、聖属性と言う光属性から派生した珍しい属性で善を癒し、悪しきを滅する事に特化しています」
「善を癒す?、それってどういう?」
「何でも属性そのものが判別してくれるらしいですが、原理は聞いたけど良く分からないんです、……えっと、何でもその人の頭から出る波長と心理状態で振り分けられるとかで」
「何となく理屈は分かるけど……」
その人の脳内から出る神経伝達物質によるのかもしれないけど、そこから何がどのようになって善悪を区別しているのかが分からない。
特に心理状態を含めて判別する場合どうなっているのだろうか。
これだとまるで魔術事態に意志が無いと不可能な気がする。
ただこうやって考えている間にも、ヒジリの動きを見て警戒していたクロウが覚悟を決めたようで彼女に飛び掛かった。
「……聖別の光、今ここに彼の者の善悪を示せっ!」
空中に描いた陣が銀色の光を発する。
光を浴びたクロウが光を浴びて吹き飛ばされたと思うと、全身から黒い煙を上げて焼け爛れて体毛が抜け落ち徐々に人の形に戻って行った。
「……相手を害そうとする純粋な気持ちを持たなかったから、あたしに勝てたかもしれないのにね」
純粋な気持ち?つまり脳から出る伝達物質に本能的に従ったら区別されるのだろうか。
それとも理性を失った獣が対象になる?、考えれば考える程分からなくなる、そこに原理が存在するのだろうかと悩んでしまうけどどうなんだろう。
「これって本当に魔術なの?理屈は分かるけど原理が分からないんだけどさ」
「……ですよね、原理が分からない以上闇属性に分類されると思うんですけど、何故か聖属性だけはそこに振り分けられてないんですよね、ただヒジリちゃんが言ってたんですけど、この魔術を使っていると相手が悪意を持って嘘を付いてるかどうかも分かるらしいですよ」
「……何か人間嘘発見器みたいだね」
ダートが不思議そうな顔をしながらそう言葉にする。
嘘発見器と言うのは面白い発想だと思う、特に相手が悪意を持って嘘を付いているかどうかが分かるという事は、もしかしてこの属性は『相手の悪意』に反応するのかもしれない。
例えば相手に何かされたとしよう、そこで相手にやり返してやるとかっていう感情を抱いても反応はしないんだと思う。
どっちかというと相手に対して、『この人を傷つけてやろう』と言う気持ちを持って行動した場合に魔術が反応するのかもしれない。
……ここは試しにやってみようか、悪意を持って相手を傷つける意識で彼女に害意を与えるイメージをしてみようか。
必要な事だったとはいえ、クロウが手酷くやられた事に関して仕返しをしてやりたいという気持ちが少なからずぼくの中にはある、だから最近ぼくが覚えた新しい雪の魔術で彼女を害そうという感情を意図的に彼女に向けたり止めたりしてみる。
「……レースくん?、あなたまさか私の事が分かるの?」
「え?」
彼女が驚いた顔をしたと思うと心器の槍を消してこちらに歩いてくる。
その姿に何やら迫る物を感じて思わず後ろに壁がある事を忘れて下がってしまった。
「だってさっきからあたしに対して殺意を向けたり止めたり意図的に繰り返してるよね、しかも悪意の部分は純粋に送って来るから嫌でも分かるよー」
「えっと……」
「あたしの魔術を見てここまで理解してくれたの、ケイくん位だよっ!……ダートちゃんがいなかったら、君の事欲しくなっちゃったかも」
「……ヒジリさん?、レースに手を出したら分かってるよね」
「分かってるよー、あたしにはケイくんがいるもの……、あの子は残念な所があるけど、お金を沢山持ってるしー、優しいしー、それに何より私と戦って始めて倒した人だからねー、さすがに二人も人生の相棒はいらないよー」
ダートがぼくとヒジリの間に入って、彼女の事を睨みつけるけど気にしてないのか、唐突に惚気始める。
……それにしてもケイって、あの半年以上前にルードと一緒に戦った彼だと思う。
そんな事を考えていると、冒険者ギルドの中から騒がしい声がする
『何ださっきの光はっ!?』
『この時間訓練所を誰かが使用するという話を聞いて無いぞっ!、誰だ勝手に利用してる奴はっ!』
『俺達ギルド職員の前で舐めた事をしてタダで済むと思うなよ!?』
「あ、やっばーいっ!?、姫ちゃん達ごめんっ!ここは私が何とかするからクロウくんを連れて逃げてっ!……あ、あと依頼の件はこっちで書類作っとくからね」
……彼女はそういうと冒険者ギルドの服を風の下級魔術を使って所々切り裂いてあられもない姿になると、全体を傷付けてあからさまに誰かに危害を加えられたかのようにして訓練所の扉の近くでうつ伏せになって倒れる。
咄嗟の事にびっくりして、治癒術を使おうとするけどダートに『治したら意味無いでしょっ!』と言われて我に返ると、肉体強化を使ってクロウを背負って皆で冒険者ギルドから逃げるように出て行く。
確かアキラさんからの伝言で怪我人が出たら教会に行けと言われていた以上、急いでそこに向かうとしよう。
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