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第六章 明かされた出自と失われた時間
44話 即席の新術
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術式を作っている最中もガイストの翼から放たれる、無数の炎の羽を空間魔術を使い何処かへと飛ばして防ぎながらダートが相手へと迫って行く。
ぼくにも出来る筈だと思ったけど、肝心の戦いながら魔力の糸を味方に繋げる方法が浮かばない、こういう時は師匠に教わった事を思い出せ、あの人は何といっていただろうか。
「確か魔術と治癒術は元は同じ技術……、という事は魔術に治癒術を乗せる事が出来れば?いやそれだとスイみたいに魔力の糸を繋げる方法とは違う、ならどうすれば?」
ならマスカレイドはぼくが子供の頃に何て言っていただろうか、確か魔力を細い線に変えて物質に刻み付ける事で回路を精製し、設定した動作を魔力を通す事で稼働させる……
『覚えて置け小僧、お前には魔術を扱う適正があり、ルディと俺の教えを受ける以上は戦いに向いて無かったとしても技術だけは覚えて貰う、単体の場合は音を鳴らす等の簡単な動作しか出来ないが、複数の回路とそれらを制御する為の動作と制御回路を作成する事でより複雑な魔導具を作る事が出来る、まだ未開発の魔導具になるのだが例えるなら遠くの誰かが見ている風景を映し出す事が出来るようになるだろうし、声を魔力に変換する事で遠方へと送り対話が出来るようにもなる筈だ、つまり魔導具とはそこに無限の可能性がある、魔力に触れ使い方を学ぶという事は発想を思考へと変換し、原理を持って事を成すという事だ、つまり思い付いた事を何でもやってみろ、決して失敗を恐れるな、様々な事を試し出た結果から新しい物を作り出せ』
当時言われた事を一言一句紙に纏めて何度も読み上げたから、思い出そうとすればいつでも二人の言っていた事は思い出せる。
当時は何を言いたいのか分からなかったけど、今になって思うと『取り合えず思いついたらやれ』と言いたかったのだろう。
なら失敗しても良い、魔力を直接皆に線のように飛ばして身体の一部に接続した後に線から糸へと魔力の質を変えれば治癒術をスイが使っていた時のように使える筈だ。
「皆っ!少しだけで良いからその場で止まって欲しいやりたい事があるんだっ!」
「止まってってレースいきなり何を……」
「レース兄様?」
「信じて止まれ、あれはお前たちの兄で旦那だろ」
「勿論私はレースを信じてる、いつだっていつまでも」
接近してガイストの攻撃を受け流していたダートと、ぼくの後ろに付いて来ていたミュラッカ達が走るのを止めた瞬間に自身の魔力を線のように伸ばす想像をして、更に魔術を相手に飛ばすのと同じ要領で皆に撃ち出す。
「兄様これは?」
「そのまま動かないで、上手く行けば皆の傷を癒せる筈だから」
「……筈って、でもこの傷が癒せるならお願いするわ」
思ったように出来たから後は線を糸に変えるだけだ、出来るだろうかという不安はあるけどここでやらなければやられるのはぼく達だ。
少しずつ細く線を弾力のある糸へ、相手が激しく動いても切れないような魔力へと……
「多分これでうまく行ったはず、皆もう動いて大丈夫っ!」
意識を集中させて治癒術を発動させると、ミュラッカ達の負った傷が癒えて行くけど思ったより効果が薄い。
何というか治癒術を使った後に少しだけ間を置いてから傷が塞がっているような気がするし、それに何よりも普段使うよりも魔力の消費が激しい。
「これなら確かに戦えるっ!ダート義姉様、私達が前線へ行くので下がって下さいっ!」
「分かったっ!私じゃ攻撃を防ぐ事しか出来なかったから、ミュラッカちゃんお願いっ!」
「……いやこれは、ミュラッカお前は俺の後ろにいて二人を守れ」
「そんな、父様何故っ!」
「この治癒術の効果に気付けて無いからだ、いいから俺の言うとおりにしろ」
そう言ってガイストへと向かって行く、ヴォルフガングは気付いたんだと思う傷の治りが緩やかだという事に、心器の能力である【高速詠唱】を使ってるのにこれだ。
多分だけど距離が離れた相手に対して治癒術のを使う経験が足りないから、効果があっても時間差が生じてしまっているんだと思う。
予想が間違いでなければぼくが治癒術を切っても暫くは効果がある筈だけど、この場でそれを試す事は出来ないし、この糸を切る訳には行かない以上どうする事も出来ない。
「いくら傷が癒えようと、体力は戻らんからのぅっ!徐々に我の炎で焼き尽くしてくれるわっ!」
「……そうだな、何れ力尽きるとは思うがそれまでの間にガイスト、おまえを倒せばいいだけの事だ」
ヴォルフガングの大剣が周囲の雪を巻き上げていくと数えられない程の狼へと姿を変えていく。
その狼達はガイストの心器からヴォルフガングを隠すように体を溶かしながら動くと、自身の身体を蒸気へと変えて鏡を曇らせて姿を移せなくしてしまう。
「……考えおったなヴォルフガングっ!じゃがのぅっ!幾ら能力の一部が封じられようと出来る事はまだあるのだっ!、我が奥の手で始末してくれるっ!」
「当然だろう、それにこれは俺とお前の戦いだ……、ミュラッカよ、俺の背中を見て学べ、これが覇王を継ぎ人柱になるという真の意味をな」
「……父様?」
「そしてガイストいやフランメよ、奥の手という物を使うのが遅かったな……、近づけさえすれば後は俺の間合いだ」
……ヴォルフガングが踏み込み大剣を横薙ぎにしてガイストを斬り付けるが、まるで金属同士を打ち付けたような音がして弾かれてしまう。
彼の顔が驚愕に眼が見開かれると同時に武器が当たった個所の周囲の炎が消え、彼女の姿が一部露わになる。
爬虫類特有の眼を紅く輝かせ、白く輝く鱗が顔の半分を覆い……、それが大剣が当たり破けた衣服の下にも生えていて人族ではない異形な姿なのだった。
ぼくにも出来る筈だと思ったけど、肝心の戦いながら魔力の糸を味方に繋げる方法が浮かばない、こういう時は師匠に教わった事を思い出せ、あの人は何といっていただろうか。
「確か魔術と治癒術は元は同じ技術……、という事は魔術に治癒術を乗せる事が出来れば?いやそれだとスイみたいに魔力の糸を繋げる方法とは違う、ならどうすれば?」
ならマスカレイドはぼくが子供の頃に何て言っていただろうか、確か魔力を細い線に変えて物質に刻み付ける事で回路を精製し、設定した動作を魔力を通す事で稼働させる……
『覚えて置け小僧、お前には魔術を扱う適正があり、ルディと俺の教えを受ける以上は戦いに向いて無かったとしても技術だけは覚えて貰う、単体の場合は音を鳴らす等の簡単な動作しか出来ないが、複数の回路とそれらを制御する為の動作と制御回路を作成する事でより複雑な魔導具を作る事が出来る、まだ未開発の魔導具になるのだが例えるなら遠くの誰かが見ている風景を映し出す事が出来るようになるだろうし、声を魔力に変換する事で遠方へと送り対話が出来るようにもなる筈だ、つまり魔導具とはそこに無限の可能性がある、魔力に触れ使い方を学ぶという事は発想を思考へと変換し、原理を持って事を成すという事だ、つまり思い付いた事を何でもやってみろ、決して失敗を恐れるな、様々な事を試し出た結果から新しい物を作り出せ』
当時言われた事を一言一句紙に纏めて何度も読み上げたから、思い出そうとすればいつでも二人の言っていた事は思い出せる。
当時は何を言いたいのか分からなかったけど、今になって思うと『取り合えず思いついたらやれ』と言いたかったのだろう。
なら失敗しても良い、魔力を直接皆に線のように飛ばして身体の一部に接続した後に線から糸へと魔力の質を変えれば治癒術をスイが使っていた時のように使える筈だ。
「皆っ!少しだけで良いからその場で止まって欲しいやりたい事があるんだっ!」
「止まってってレースいきなり何を……」
「レース兄様?」
「信じて止まれ、あれはお前たちの兄で旦那だろ」
「勿論私はレースを信じてる、いつだっていつまでも」
接近してガイストの攻撃を受け流していたダートと、ぼくの後ろに付いて来ていたミュラッカ達が走るのを止めた瞬間に自身の魔力を線のように伸ばす想像をして、更に魔術を相手に飛ばすのと同じ要領で皆に撃ち出す。
「兄様これは?」
「そのまま動かないで、上手く行けば皆の傷を癒せる筈だから」
「……筈って、でもこの傷が癒せるならお願いするわ」
思ったように出来たから後は線を糸に変えるだけだ、出来るだろうかという不安はあるけどここでやらなければやられるのはぼく達だ。
少しずつ細く線を弾力のある糸へ、相手が激しく動いても切れないような魔力へと……
「多分これでうまく行ったはず、皆もう動いて大丈夫っ!」
意識を集中させて治癒術を発動させると、ミュラッカ達の負った傷が癒えて行くけど思ったより効果が薄い。
何というか治癒術を使った後に少しだけ間を置いてから傷が塞がっているような気がするし、それに何よりも普段使うよりも魔力の消費が激しい。
「これなら確かに戦えるっ!ダート義姉様、私達が前線へ行くので下がって下さいっ!」
「分かったっ!私じゃ攻撃を防ぐ事しか出来なかったから、ミュラッカちゃんお願いっ!」
「……いやこれは、ミュラッカお前は俺の後ろにいて二人を守れ」
「そんな、父様何故っ!」
「この治癒術の効果に気付けて無いからだ、いいから俺の言うとおりにしろ」
そう言ってガイストへと向かって行く、ヴォルフガングは気付いたんだと思う傷の治りが緩やかだという事に、心器の能力である【高速詠唱】を使ってるのにこれだ。
多分だけど距離が離れた相手に対して治癒術のを使う経験が足りないから、効果があっても時間差が生じてしまっているんだと思う。
予想が間違いでなければぼくが治癒術を切っても暫くは効果がある筈だけど、この場でそれを試す事は出来ないし、この糸を切る訳には行かない以上どうする事も出来ない。
「いくら傷が癒えようと、体力は戻らんからのぅっ!徐々に我の炎で焼き尽くしてくれるわっ!」
「……そうだな、何れ力尽きるとは思うがそれまでの間にガイスト、おまえを倒せばいいだけの事だ」
ヴォルフガングの大剣が周囲の雪を巻き上げていくと数えられない程の狼へと姿を変えていく。
その狼達はガイストの心器からヴォルフガングを隠すように体を溶かしながら動くと、自身の身体を蒸気へと変えて鏡を曇らせて姿を移せなくしてしまう。
「……考えおったなヴォルフガングっ!じゃがのぅっ!幾ら能力の一部が封じられようと出来る事はまだあるのだっ!、我が奥の手で始末してくれるっ!」
「当然だろう、それにこれは俺とお前の戦いだ……、ミュラッカよ、俺の背中を見て学べ、これが覇王を継ぎ人柱になるという真の意味をな」
「……父様?」
「そしてガイストいやフランメよ、奥の手という物を使うのが遅かったな……、近づけさえすれば後は俺の間合いだ」
……ヴォルフガングが踏み込み大剣を横薙ぎにしてガイストを斬り付けるが、まるで金属同士を打ち付けたような音がして弾かれてしまう。
彼の顔が驚愕に眼が見開かれると同時に武器が当たった個所の周囲の炎が消え、彼女の姿が一部露わになる。
爬虫類特有の眼を紅く輝かせ、白く輝く鱗が顔の半分を覆い……、それが大剣が当たり破けた衣服の下にも生えていて人族ではない異形な姿なのだった。
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