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第六章 明かされた出自と失われた時間
46話 戦いの終わり
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目の前で起きている化物同士の戦いにぼく達が介入できる訳も無く、カエデ達に合流する為に逃走する事になったけど……
「ミュラッカ……、ヴォルフガングが使った【神器解放】って何?」
「五大国の王だけが使う事が出来る能力だって聞いた事はあるけど、それ以外は何も知らないわ」
「ミュラッカちゃん、聞いた事ってどんな内容なの?」
「えっと確か……、自分の身に宿した存在の力を自分の身に宿す変わりに確実に命を落とす禁断の技術としか」
確かマリステラが五大国の王の事を神々を封じる為の器だとか言っていた記憶があるけど、それが関係あるのかもしれない。
力を見に宿すという事は、自身の中にいる神の封印を解くという事だと思うから、もしかしたらヴォルフガングの身を乗っ取ってしまう可能性がある気がする。
もしそうなってしまったら彼女が姿を現して滅ぼしに来るのだろうか……、そう思って二人の姿を見るけど、全ての手に骨で作られた様々な武器を持った巨人が止まる事の無い嵐のような攻撃をガイストに当て続けているけど、その姿は本当に一方的だ。
「……それでこの一方的な戦い方か、でもガイストの心器の鏡にヴォルフガングの姿が映ってるから衝撃が反射させられてるんじゃ?」
「だと思うけど、反射させられて腕が飛んだ瞬間に新たな腕が生えてるから傷がついても直ぐに回復してるのかも?」
「……もしそうなら、どうすればガイストはこのままだと確実に負けるわね」
……そう話している間にもカエデ達の姿が見えて来たけど、何故かぼく達の方を見て『伏せろーっ!』と叫んでいる。
一体何がと思いながら皆で伏せると頭上を恐ろしい熱さを持った熱線が通り過ぎて行った。
そして暫くすると、何かが崩れるような轟音が後ろからして咄嗟に振り向くと
「ヴォルフガングの身体が……」
ヴォルフガングの右半身が抉られたようになっており、足元には大量の骨で生成された武器が落ちていて、徐々に砂のように魔力に戻り消えてしまう。
ただ左側の武器が残っているからか、まるで痛みを感じて無いかのように得物を持った左腕を叩きつけようとしているが……、ガイストが大きな口を開けて右半身に食らい付くと勢いに任せて上に持ち上げて地面へと叩きつけ、その衝撃がぼく達の方へと直接揺れとなって伝わり歩けなくなる。
「……レースさん、ダート義姉様、ミュラッカ様っ!早くこっちまで来てくださいっ!」
「分かってるけど揺れで上手く歩けないよっ!」
「しょうがない……、僕が行くから掴まってっ!」
「サリア様っ!?」
「戦えない以上は、それ以外で貢献しないとただのお荷物だからね、任せてよっ!」
サリアがそう言ってこっちに走って来るけど本当に大丈夫なのかと心配になるけど、こっちに近づいてくる間に身体が徐々に変わって行き、フクロウの頭に狼のような獣の手足、そして蛇の尾が生えた今迄見た事が無いような姿の異形へと姿を変える。
「そのまま動かないでくださいよーっ!ミュラッカ様ー!」
「分かったので早くして……、その姿を見てると正気を失いそうになるから本当に早くっ!」
「ミュラッカちゃんってもしかして蛇とか見るの苦手だったりする?」
「いや、苦手じゃないけど、いきなり姿が変わったかと思うとこうなる何て思ってもなくて……」
「確かに少しだけ驚いたけどあれはサリアでしょ?、助けてくれる人に対してそういう態度をするのは失礼だから止めた方がいいよ」
正直ぼくも驚かなかったと言ったら嘘になるけど、こっちを助けようという意志がある人に対して失礼な態度を取るのは間違えているだろう。
特にサリアは戦いたくないと言っているのにこうやって危険な所まで勇気を出して付いて来てくれてるのに、こうやって危険な所に出て来てくれた事に感謝するべきだ。
「えぇ、そのサリアごめんなさい」
「はいはーい、慣れてるので大丈夫ですからこのまま僕の背中に乗って下さいねー」
「……ありがとう」
四足歩行になった彼女がぼく達の隣に立ち器用に蛇の尾を使い背中に乗せてくれると、カエデ達の元に戻って行く。
その後ろでは右半身が抉られている状態で器用に武器を杖代わりにして立ち上がったヴォルフガングが雄たけびを上げながら殴りかかり、ガイストを頭から地面に倒すと数えきれない程の腕が一つに重なって行きその周囲を骨が覆ったかと思うと、姿を一本の巨大な斧に変え彼女に向かって勢いを付けて振り下ろす。
その姿まるで理性を失った獣のようで、瞳には既に知性の欠片すら感じる事が出来ない、そんな変わり果てた父を見て今迄ヴォルフガングが、彼がその身に封じて来た存在に対して恐怖を感じてしまう程だ。
「あれは……、ガイストの事をこのまま殺すつもりなのかな」
「分からないわ……、あれはもう私の知ってる父様じゃないもの」
「ねぇレース、私達がもっと強かったらこんな結末にならないで済んだのかな……」
「多分、変わらないと思う、だってガイストは確実に父親に復讐する為にこうやって力を付けて来たんだ、ぼく達個人が幾ら強くなっても組織的に動いてくる集団相手には無力だよ……、もしこの場にゴスペルにガイストと本気のグロウフェレス、そして反乱軍が揃っていたら、ぼく達はどうする事も出来ないで負けていたと思う」
「そうね、こればっかりはレース兄様の言う通りよ、今回はたまたま偶然が重なってこの場の敵がガイストだけになったけど、父様が先に到着していなかったら間違いなく全滅していたわ」
「冷静な判断が出来るのは良いと思うんですけど、そういう反省会は皆と合流して無事に生き延びた方が良いと僕は思うんですよねっ!」
……確かにサリアの言う通りだと思って黙ると、ヴォルフガングの振り下ろした斧がガイストの首を切り降ろす直前で砕けて消え、その態勢のまま身体が白く染まると徐々に粉が舞うように崩れて行き空気に溶けるように存在が消失する。
多分この場に居た誰もが理解出来たと思う覇王の命が尽きたのだと……、そしてガイストも限界が来たのだろう、ドラゴンの姿から縮んで行きその姿がぼく達から見えなくなってしまった。
あぁ、この戦いが終わったんだなと思っていると、ミュラッカが突然顔を覆って泣き出したかと思うと『父様は、歴代の覇王達はこんな化物を封じる為の人柱になっていたのね……、私の中に入って来て語り掛けて来るこれが武神』と言ってサリアの背中の上で動かなくなってしまうのだった。
「ミュラッカ……、ヴォルフガングが使った【神器解放】って何?」
「五大国の王だけが使う事が出来る能力だって聞いた事はあるけど、それ以外は何も知らないわ」
「ミュラッカちゃん、聞いた事ってどんな内容なの?」
「えっと確か……、自分の身に宿した存在の力を自分の身に宿す変わりに確実に命を落とす禁断の技術としか」
確かマリステラが五大国の王の事を神々を封じる為の器だとか言っていた記憶があるけど、それが関係あるのかもしれない。
力を見に宿すという事は、自身の中にいる神の封印を解くという事だと思うから、もしかしたらヴォルフガングの身を乗っ取ってしまう可能性がある気がする。
もしそうなってしまったら彼女が姿を現して滅ぼしに来るのだろうか……、そう思って二人の姿を見るけど、全ての手に骨で作られた様々な武器を持った巨人が止まる事の無い嵐のような攻撃をガイストに当て続けているけど、その姿は本当に一方的だ。
「……それでこの一方的な戦い方か、でもガイストの心器の鏡にヴォルフガングの姿が映ってるから衝撃が反射させられてるんじゃ?」
「だと思うけど、反射させられて腕が飛んだ瞬間に新たな腕が生えてるから傷がついても直ぐに回復してるのかも?」
「……もしそうなら、どうすればガイストはこのままだと確実に負けるわね」
……そう話している間にもカエデ達の姿が見えて来たけど、何故かぼく達の方を見て『伏せろーっ!』と叫んでいる。
一体何がと思いながら皆で伏せると頭上を恐ろしい熱さを持った熱線が通り過ぎて行った。
そして暫くすると、何かが崩れるような轟音が後ろからして咄嗟に振り向くと
「ヴォルフガングの身体が……」
ヴォルフガングの右半身が抉られたようになっており、足元には大量の骨で生成された武器が落ちていて、徐々に砂のように魔力に戻り消えてしまう。
ただ左側の武器が残っているからか、まるで痛みを感じて無いかのように得物を持った左腕を叩きつけようとしているが……、ガイストが大きな口を開けて右半身に食らい付くと勢いに任せて上に持ち上げて地面へと叩きつけ、その衝撃がぼく達の方へと直接揺れとなって伝わり歩けなくなる。
「……レースさん、ダート義姉様、ミュラッカ様っ!早くこっちまで来てくださいっ!」
「分かってるけど揺れで上手く歩けないよっ!」
「しょうがない……、僕が行くから掴まってっ!」
「サリア様っ!?」
「戦えない以上は、それ以外で貢献しないとただのお荷物だからね、任せてよっ!」
サリアがそう言ってこっちに走って来るけど本当に大丈夫なのかと心配になるけど、こっちに近づいてくる間に身体が徐々に変わって行き、フクロウの頭に狼のような獣の手足、そして蛇の尾が生えた今迄見た事が無いような姿の異形へと姿を変える。
「そのまま動かないでくださいよーっ!ミュラッカ様ー!」
「分かったので早くして……、その姿を見てると正気を失いそうになるから本当に早くっ!」
「ミュラッカちゃんってもしかして蛇とか見るの苦手だったりする?」
「いや、苦手じゃないけど、いきなり姿が変わったかと思うとこうなる何て思ってもなくて……」
「確かに少しだけ驚いたけどあれはサリアでしょ?、助けてくれる人に対してそういう態度をするのは失礼だから止めた方がいいよ」
正直ぼくも驚かなかったと言ったら嘘になるけど、こっちを助けようという意志がある人に対して失礼な態度を取るのは間違えているだろう。
特にサリアは戦いたくないと言っているのにこうやって危険な所まで勇気を出して付いて来てくれてるのに、こうやって危険な所に出て来てくれた事に感謝するべきだ。
「えぇ、そのサリアごめんなさい」
「はいはーい、慣れてるので大丈夫ですからこのまま僕の背中に乗って下さいねー」
「……ありがとう」
四足歩行になった彼女がぼく達の隣に立ち器用に蛇の尾を使い背中に乗せてくれると、カエデ達の元に戻って行く。
その後ろでは右半身が抉られている状態で器用に武器を杖代わりにして立ち上がったヴォルフガングが雄たけびを上げながら殴りかかり、ガイストを頭から地面に倒すと数えきれない程の腕が一つに重なって行きその周囲を骨が覆ったかと思うと、姿を一本の巨大な斧に変え彼女に向かって勢いを付けて振り下ろす。
その姿まるで理性を失った獣のようで、瞳には既に知性の欠片すら感じる事が出来ない、そんな変わり果てた父を見て今迄ヴォルフガングが、彼がその身に封じて来た存在に対して恐怖を感じてしまう程だ。
「あれは……、ガイストの事をこのまま殺すつもりなのかな」
「分からないわ……、あれはもう私の知ってる父様じゃないもの」
「ねぇレース、私達がもっと強かったらこんな結末にならないで済んだのかな……」
「多分、変わらないと思う、だってガイストは確実に父親に復讐する為にこうやって力を付けて来たんだ、ぼく達個人が幾ら強くなっても組織的に動いてくる集団相手には無力だよ……、もしこの場にゴスペルにガイストと本気のグロウフェレス、そして反乱軍が揃っていたら、ぼく達はどうする事も出来ないで負けていたと思う」
「そうね、こればっかりはレース兄様の言う通りよ、今回はたまたま偶然が重なってこの場の敵がガイストだけになったけど、父様が先に到着していなかったら間違いなく全滅していたわ」
「冷静な判断が出来るのは良いと思うんですけど、そういう反省会は皆と合流して無事に生き延びた方が良いと僕は思うんですよねっ!」
……確かにサリアの言う通りだと思って黙ると、ヴォルフガングの振り下ろした斧がガイストの首を切り降ろす直前で砕けて消え、その態勢のまま身体が白く染まると徐々に粉が舞うように崩れて行き空気に溶けるように存在が消失する。
多分この場に居た誰もが理解出来たと思う覇王の命が尽きたのだと……、そしてガイストも限界が来たのだろう、ドラゴンの姿から縮んで行きその姿がぼく達から見えなくなってしまった。
あぁ、この戦いが終わったんだなと思っていると、ミュラッカが突然顔を覆って泣き出したかと思うと『父様は、歴代の覇王達はこんな化物を封じる為の人柱になっていたのね……、私の中に入って来て語り掛けて来るこれが武神』と言ってサリアの背中の上で動かなくなってしまうのだった。
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