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第七章 変わりすぎた日常

22話 相談したい事と天魔 ダート視点

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 フィリアさんが出て言った後、一人で家にいるのが怖くなって気付いたら家を出て外を歩いていた。
多分だけど、私はあの人に嫌われているんだと思う。
こっちを見る時に無意識なんだろうけど、見下すような視線を送って来たり、気付かない振りをしていたけど、ある程度の戦闘経験が無ければ分からない程に隠しつつも、私が少しでも隙を見せたら排除しようという意思を感じた。
最後にお義母様の話をした時何て、私があれ以上余計な言葉を口にしていたら、怒った彼女の手によって命を奪われていたかもしれない。

「……何処に行こうかな」

 雑貨屋に行ってもコーちゃんはいないし、服屋に行ってマローネさんに甘えようにもお客さんが沢山いるみたいで時間が取れそうになさそう。
なら私はこの都市で何処に行けばいいんだろうか、試しにレースがジラルドさん達と良く行っていたらしい飲食店に今度は一人で入ってみるのも?、でもそれはそれで昨日店員さんに失礼な態度を取ってしまったから気まずいな……。
じゃあ冒険者ギルドに行ってみるとかどうだろう、もしかしたらコーちゃんがいるかもしれない。

「居たら色々と相談してみようかな」

 取り合えず冒険者ギルドに向かう事にしたけど、暫く見ない間に本当に色々と変わった気がする。
少し離れるだけでもうそこは私の知らない風景になって凄い興味が湧いてしまう。
今度レースを連れて都市内を散歩して見ると面白いかもしれない、私の見た事無い事や知らない事があると思うとそれだけで楽しくなるし、出来ればその気持ちを彼と共有出来たらいいなぁ……、そういう意味では理由はどうであれ外に出て良かったかもしれない。

「あのぅ、すいません……、ちょっと道に迷ってしまったので助けて貰えませんか?」
「……え?」
「あれ?あなたどこかで会った事ありません?」

 後ろから声を掛けられて振り向くとそこには黄金色に輝く髪を持った儚げな少女がいた……。
何処かで会った事がありませんか?って、この人は覚えてないのかもしれないけど以前コーちゃんの家に行った時に不審者と間違えて襲い掛かり返り討ちにあった事があるから、私はしっかりと覚えてる。

「あぁ思い出した、一度この町で会った事ありましたよね?、ほらコルクさんの所で……」
「あ、あの時はごめんなさいっ!」
「え?、気にしてないですよー、私が強くてあなたが弱かったただそれだけでしょう?」

 Sランク冒険者【天魔】シャルネ・ヘイルーン、まさかこの都市で会う事になる何て思わなかった。
それに確かにあの時手も足もでずに負けたのは私が弱かったからだけど、正直に言われると傷つくものがある……

「あなたで良かったぁ、実はあなたにも会いたいと思っていたんですよねぇ」
「会いたいってなんでですか?」
「行商に来ている時にここの人から聞いたんですけど、あなた確かレースさんの所で働いてるんですよね?どういう関係なんですか?」
「彼とは近いうちに夫婦になる予定の関係ですが……」
「へぇ、そうなんですねぇ」

 この人は何を言いたいのかな、私達の関係を急に聞いてくるなんておかしいし、何よりも変なのは顔は笑ってるのに目は笑っていない。

「……あの、道に迷ったって言ってましたけど何処に行く予定だったのですか?」
「この町暫く見ない間に凄い大きくなってますし、いつの間にか冒険者ギルドまで出来てるみたいだから何か必要な物が無いかなって思って訪ねようと思ったら迷っちゃって、だから案内して欲しいなぁって」
「あぁっ!分かりますっ!確かに迷いますよね、私も最初迷いそうになっちゃって」
「へぇ……、ダートさんって面白い人ですね」
「面白い人ですか…?」

 今のやり取りの何処に面白いところがあるのか私には分からないけど、シャルネさんの中ではそうだったのかもしれない。
何か変わった人なのかもって思うけど私の知ってるSランク冒険者の人ってマスカレイドは自己中心的だし、ゴスペルさんは個人的には悪い印象しかなくて、ミコトさんは何だか凄い偉そう。
まだこの中ではまだまともな人なのかもって思えるのはカーティスさんとお義母様位だし、Sランクってそう言う一般からズレた人の集まりなのかもしれない。

「ズレた人とは心外ですね、私の価値観はこの世界基準の中でも常識人ですよ?」
「……え?」
「ダートさん、心の声が口から漏れてましたから気を付けないといけませんよ?」
「え?あっ!ごめんなさいっ!」
「いいですよー、あなたはこの世界に来てまだ日が浅いでしょ?だからそういう事もありますよ」

 シャルネさんは何を言っているの?、『この世界に来てまだ日が浅い』って言葉の意味が分からずに思わず何も言えなくなってしまう。

「実はですね、私も異世界から来たんですよ……、気が遠くなる程に遠い時代に異世界から転生して来ましてね?」
「あの……、何を言ってるんですか?」
「気になる?気になりますよねっ!良かったら冒険者ギルドに案内して貰う道中でお話ししませんか?」

 この人やっぱりおかしい、それに異世界から来たっていうけどこの人何なの?。
助けを求める為に周りに目線を送るけど、まるで私達の存在に気付いてないみたいでそのまま歩いて行ってしまう。

「おねが……っ!?」

 『お願い誰か助けて』と大きな声を出そうとしたら急に声が出なくなってしまう。
そして意味が分からない事に何故か足が自分の意志とは違い、勝手に動き出して何処かへと向かって歩き出す。

「無駄だよ?、今は周囲の人達に私の姿は周りには見えてませんし、あなたもこのやり取りが終わったら何があったのか忘れてしまう、だから忘れてしまうあなたに良い事を教えてあげるね?、私の能力は【暴食と施し】、【精神汚染】そして最後が――」
「……っ!!」

 最期の能力の名前が私の知らない言語で言葉にされて理解が出来ない。
でもそれがとても悍ましい言葉だという事は雰囲気で分かるけど……、私はこの情報をレース達に伝える事が出来ないのかと思うと悔しくなる。

「今の言葉が分からないって事は今回も外れかなぁ……」
「ん、んーっ!」
「ごめんね?あなたがうるさいから喋れなくしちゃった、まず聞きたい事の一つなんだけどあなたは【ニィほん】って知ってる?、又はその髪色的に外国の人だよね、じゃあ【チィきゅう】は分かる?」
「……んー、んんー!」
「そっか、知らないかぁ……じゃあ聞きたい事は終わったから、このまま冒険者ギルドの前を通ってそのままこの都市を出よっか、私ね?あなたの事が欲しいの、特にその心器の能力が欲しいし、あなたを触媒にすれば利用価値の薄れたマスカレイドさんでもう少し遊べそうだし、それに……、私に傷をつけた責任を取ってね?」
 
 シャルネさんは立ち止まると上着を路上ではだけさせて肌を晒す。
言葉が喋れないから見守る事しか出来ないけど、彼女の身体には何かに切り付けられたのか大きな切り傷が出来ていた。

「……ストラフィリアでレースさんの身体を使ってた時に、あなたに付けられた傷、空間を越えて直接私に届いたから凄い痛かったんだよ?、だからこれは仕返し、あなたの命は今日で終わると思うけど今迄楽しかったし好きな人が出来て幸せだったでしょ?だから今度は私の番、私が楽しんで楽しむ番だから、っておや?」

……最後にレースの顔を見たかったなと思いながら、シャルネに身体を操られて都市の中を歩いていると私の体がいきなり横に引っ張られる。
驚いて自由に動く目で何が起きたのかと見ると、顔が視えない程に黒いフードを深くかぶった誰かに腕を掴まれていた。
そのまま強引に腕を引っ張って強引に走らされてシャルネさんから離れると、そのまま路地裏に連れ込まれるのだった。



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