治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

文字の大きさ
272 / 600
第七章 変わりすぎた日常

22話 相談したい事と天魔 ダート視点

しおりを挟む
 フィリアさんが出て言った後、一人で家にいるのが怖くなって気付いたら家を出て外を歩いていた。
多分だけど、私はあの人に嫌われているんだと思う。
こっちを見る時に無意識なんだろうけど、見下すような視線を送って来たり、気付かない振りをしていたけど、ある程度の戦闘経験が無ければ分からない程に隠しつつも、私が少しでも隙を見せたら排除しようという意思を感じた。
最後にお義母様の話をした時何て、私があれ以上余計な言葉を口にしていたら、怒った彼女の手によって命を奪われていたかもしれない。

「……何処に行こうかな」

 雑貨屋に行ってもコーちゃんはいないし、服屋に行ってマローネさんに甘えようにもお客さんが沢山いるみたいで時間が取れそうになさそう。
なら私はこの都市で何処に行けばいいんだろうか、試しにレースがジラルドさん達と良く行っていたらしい飲食店に今度は一人で入ってみるのも?、でもそれはそれで昨日店員さんに失礼な態度を取ってしまったから気まずいな……。
じゃあ冒険者ギルドに行ってみるとかどうだろう、もしかしたらコーちゃんがいるかもしれない。

「居たら色々と相談してみようかな」

 取り合えず冒険者ギルドに向かう事にしたけど、暫く見ない間に本当に色々と変わった気がする。
少し離れるだけでもうそこは私の知らない風景になって凄い興味が湧いてしまう。
今度レースを連れて都市内を散歩して見ると面白いかもしれない、私の見た事無い事や知らない事があると思うとそれだけで楽しくなるし、出来ればその気持ちを彼と共有出来たらいいなぁ……、そういう意味では理由はどうであれ外に出て良かったかもしれない。

「あのぅ、すいません……、ちょっと道に迷ってしまったので助けて貰えませんか?」
「……え?」
「あれ?あなたどこかで会った事ありません?」

 後ろから声を掛けられて振り向くとそこには黄金色に輝く髪を持った儚げな少女がいた……。
何処かで会った事がありませんか?って、この人は覚えてないのかもしれないけど以前コーちゃんの家に行った時に不審者と間違えて襲い掛かり返り討ちにあった事があるから、私はしっかりと覚えてる。

「あぁ思い出した、一度この町で会った事ありましたよね?、ほらコルクさんの所で……」
「あ、あの時はごめんなさいっ!」
「え?、気にしてないですよー、私が強くてあなたが弱かったただそれだけでしょう?」

 Sランク冒険者【天魔】シャルネ・ヘイルーン、まさかこの都市で会う事になる何て思わなかった。
それに確かにあの時手も足もでずに負けたのは私が弱かったからだけど、正直に言われると傷つくものがある……

「あなたで良かったぁ、実はあなたにも会いたいと思っていたんですよねぇ」
「会いたいってなんでですか?」
「行商に来ている時にここの人から聞いたんですけど、あなた確かレースさんの所で働いてるんですよね?どういう関係なんですか?」
「彼とは近いうちに夫婦になる予定の関係ですが……」
「へぇ、そうなんですねぇ」

 この人は何を言いたいのかな、私達の関係を急に聞いてくるなんておかしいし、何よりも変なのは顔は笑ってるのに目は笑っていない。

「……あの、道に迷ったって言ってましたけど何処に行く予定だったのですか?」
「この町暫く見ない間に凄い大きくなってますし、いつの間にか冒険者ギルドまで出来てるみたいだから何か必要な物が無いかなって思って訪ねようと思ったら迷っちゃって、だから案内して欲しいなぁって」
「あぁっ!分かりますっ!確かに迷いますよね、私も最初迷いそうになっちゃって」
「へぇ……、ダートさんって面白い人ですね」
「面白い人ですか…?」

 今のやり取りの何処に面白いところがあるのか私には分からないけど、シャルネさんの中ではそうだったのかもしれない。
何か変わった人なのかもって思うけど私の知ってるSランク冒険者の人ってマスカレイドは自己中心的だし、ゴスペルさんは個人的には悪い印象しかなくて、ミコトさんは何だか凄い偉そう。
まだこの中ではまだまともな人なのかもって思えるのはカーティスさんとお義母様位だし、Sランクってそう言う一般からズレた人の集まりなのかもしれない。

「ズレた人とは心外ですね、私の価値観はこの世界基準の中でも常識人ですよ?」
「……え?」
「ダートさん、心の声が口から漏れてましたから気を付けないといけませんよ?」
「え?あっ!ごめんなさいっ!」
「いいですよー、あなたはこの世界に来てまだ日が浅いでしょ?だからそういう事もありますよ」

 シャルネさんは何を言っているの?、『この世界に来てまだ日が浅い』って言葉の意味が分からずに思わず何も言えなくなってしまう。

「実はですね、私も異世界から来たんですよ……、気が遠くなる程に遠い時代に異世界から転生して来ましてね?」
「あの……、何を言ってるんですか?」
「気になる?気になりますよねっ!良かったら冒険者ギルドに案内して貰う道中でお話ししませんか?」

 この人やっぱりおかしい、それに異世界から来たっていうけどこの人何なの?。
助けを求める為に周りに目線を送るけど、まるで私達の存在に気付いてないみたいでそのまま歩いて行ってしまう。

「おねが……っ!?」

 『お願い誰か助けて』と大きな声を出そうとしたら急に声が出なくなってしまう。
そして意味が分からない事に何故か足が自分の意志とは違い、勝手に動き出して何処かへと向かって歩き出す。

「無駄だよ?、今は周囲の人達に私の姿は周りには見えてませんし、あなたもこのやり取りが終わったら何があったのか忘れてしまう、だから忘れてしまうあなたに良い事を教えてあげるね?、私の能力は【暴食と施し】、【精神汚染】そして最後が――」
「……っ!!」

 最期の能力の名前が私の知らない言語で言葉にされて理解が出来ない。
でもそれがとても悍ましい言葉だという事は雰囲気で分かるけど……、私はこの情報をレース達に伝える事が出来ないのかと思うと悔しくなる。

「今の言葉が分からないって事は今回も外れかなぁ……」
「ん、んーっ!」
「ごめんね?あなたがうるさいから喋れなくしちゃった、まず聞きたい事の一つなんだけどあなたは【ニィほん】って知ってる?、又はその髪色的に外国の人だよね、じゃあ【チィきゅう】は分かる?」
「……んー、んんー!」
「そっか、知らないかぁ……じゃあ聞きたい事は終わったから、このまま冒険者ギルドの前を通ってそのままこの都市を出よっか、私ね?あなたの事が欲しいの、特にその心器の能力が欲しいし、あなたを触媒にすれば利用価値の薄れたマスカレイドさんでもう少し遊べそうだし、それに……、私に傷をつけた責任を取ってね?」
 
 シャルネさんは立ち止まると上着を路上ではだけさせて肌を晒す。
言葉が喋れないから見守る事しか出来ないけど、彼女の身体には何かに切り付けられたのか大きな切り傷が出来ていた。

「……ストラフィリアでレースさんの身体を使ってた時に、あなたに付けられた傷、空間を越えて直接私に届いたから凄い痛かったんだよ?、だからこれは仕返し、あなたの命は今日で終わると思うけど今迄楽しかったし好きな人が出来て幸せだったでしょ?だから今度は私の番、私が楽しんで楽しむ番だから、っておや?」

……最後にレースの顔を見たかったなと思いながら、シャルネに身体を操られて都市の中を歩いていると私の体がいきなり横に引っ張られる。
驚いて自由に動く目で何が起きたのかと見ると、顔が視えない程に黒いフードを深くかぶった誰かに腕を掴まれていた。
そのまま強引に腕を引っ張って強引に走らされてシャルネさんから離れると、そのまま路地裏に連れ込まれるのだった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...