283 / 600
第七章 変わりすぎた日常
31話 朝食と侍女のお仕事
しおりを挟む
朝になって直ぐの事、ダリアが勢いよくぼく達の部屋のドアを開けると……
「ミュラッカはともかく、お前等も夜にうるさくなるのいい加減にしろっ!まともに寝れねぇじゃねぇかっ!」
と叩き起こされ、驚いて起きたぼく達は急いで着替えて部屋を出ると……キッチンの方から何やら美味しそうな匂いがする。
いったい何かと思いながらリビングへと入ると、頭を深く下げて頭を下げているサリッサの姿と美味しそうな朝食がテーブルの上に沢山並んでいた。
ストラフィリアの料理のように身体の芯から温まる様に作られた物ではなく、メセリーで良くある片手で持って食べやすい食事だ。
パンの間に肉や野菜を挟まれたそれは、魔術や治癒術を研究して新たな術を作り出す者達が好む物で、ぼくもダートに止められるまでは食べながら参考書を読んで徹夜しながら研究に励んでいたくらいに作りやすいし、そして何よりも食べやすい。
「レース様、ダート様おはようございます」
「サリッサ……?、この料理はどうしたの?」
「これですか?これからお世話になるのですから侍女の私が作るのは当然です、主人の身の回りの世話をするのも仕事の一つなので」
「ありがとう……、でも家事は今迄ぼくとダートが交代しながらやってたから毎日やらなくても大丈夫だよ?」
「……っ!?、そんな訳には行きませんっ!先程も申しましたが侍女は主人の身の回りの世話をし、時には手足となり雑用を行なうのが私の役目であり存在意義、私の仕事を取らないでくださいませっ!」
サリッサが真剣な顔をしてこっちを見る。
……これはぼくの方が折れないと、彼女のプライドを傷付けてしまうだろう。
「ならこれから身の回りの事をお願いするよ」
「はいっ!ありがとうございますっ!」
何ていうか本当に嬉しそうだ……、でもサリッサに身の回りの事を全て任せてしまうといつか自分では何も出来なくなる気がして正直不安でしかない。
でもそれを彼女に言うとまた同じやり取りが続きそうだから今は黙っていようと思う。
「サリッサさん、この料理の数作るの大変だったんじゃない?、次からは時間がある時に私も手伝うから言ってね?」
「ダート様、ありがとうございます、その時は宜しくお願い致しますね」
「あ、じゃあぼくも……」
「レース様は結構です、ストラフィリアでは家事は女性の戦場であり力を示す事が出来る唯一の場所と言われていますので、馴染みは無いとは思いますがご理解ください」
「え、あぁ……うん」
やっぱりあの国はおかしいこういうのは皆でやった方が良いと思うのに……、ミュラッカがそこも変えてくれる事に期待するしか無いか。
「ところでお二人はリビングでゆっくりとお話しをしていて大丈夫なのですか?、本日は朝から冒険者ギルドに行き大事な依頼の説明を受けると昨晩聞いていたので、歩きながら食べれる物をテーブルに用意したのですが……」
「あっ!?、ごめんサリッサっ!早く行かないと遅れるっ!」
「レース落ち着いて、今から出れば待ち合わせには間に合うから」
「でも、高ランクの冒険者は時間絶対に守るんで……んぐっ!?」
「その高ランク冒険者の私が大丈夫って言ってるの、だから食べながらゆっくり向かおう?ね?」
焦ったぼくを落ち着かせるように、テーブルの上に置かれていたパンを喋っている口の中に入れると、ダートも手に取って食べる。
正直驚いて味が分からないから、次は食べさせてくれるなら一言でもいいから言葉にしてからにして欲しい……。
「ん、おいしっ、サリッサさんありがとう、これすっごい美味しいっ!」
「ふふ、そう言って頂けるとメセリーの料理を王城内の書庫で調べておいて良かったです」
「今度作り方教えて?レースに作って食べさせてあげたいから」
「はい、それなら今度一緒に作りましょう」
「うん、約束だよサリッサ!」
……そういえばぼく達を起こしに行ったダリアの姿が見えないけど、どうしたのだろうか周囲を見るけど姿が見当たらない、これはもしかして何かあったのかと思って心配をしていると……
「ダリアちゃんも一緒に寝るのぉっ!」
「だぁっ!俺は起こしに来たんだって!抱き着いてベッドに引きずり込むのやめろぉっ!」
「時間になったらサリッサが起こしに来るのっ!」
「だぁもうっ!分かった!分かったからっ!」
どうやら三階に行ってルミィを起こそうとしてくれていたみたいだけど……、ベッドの中に引きずり込まれてしまったらしい。
取り合えず無事だったみたいだからいいか……
「ふふ、あの二人はストラフィリアにいる時からこうなんですよ?何て言いますか、実の姉妹みたいで微笑ましいです」
「ダリアに仲の良い家族が出来て良かったよ……、じゃあぼく達は行くから留守の方宜しくね」
「はい、レース様、ダート様いってらっしゃいませ……、冒険者のお仕事は大変だと思いますが無事に帰られますよう祈っておりますね」
「ありがとう、じゃあいってきます」
「サリッサさん、いってくるねっ!」
……そう言って家を出たぼく達は、外の階段を降りて診療所のようすを見ると……どうやら今日も師匠がソフィアを連れて手伝いに来てくれているようで、ぼく達に気付いた彼女がこっちに向かって手を振ってくれるけど……、眼に涙を浮かべて助けを求めていたように思えたのは気のせいだろうか。
そんな事を思いながらぼく達は冒険者ギルドへと向かうのだった。
「ミュラッカはともかく、お前等も夜にうるさくなるのいい加減にしろっ!まともに寝れねぇじゃねぇかっ!」
と叩き起こされ、驚いて起きたぼく達は急いで着替えて部屋を出ると……キッチンの方から何やら美味しそうな匂いがする。
いったい何かと思いながらリビングへと入ると、頭を深く下げて頭を下げているサリッサの姿と美味しそうな朝食がテーブルの上に沢山並んでいた。
ストラフィリアの料理のように身体の芯から温まる様に作られた物ではなく、メセリーで良くある片手で持って食べやすい食事だ。
パンの間に肉や野菜を挟まれたそれは、魔術や治癒術を研究して新たな術を作り出す者達が好む物で、ぼくもダートに止められるまでは食べながら参考書を読んで徹夜しながら研究に励んでいたくらいに作りやすいし、そして何よりも食べやすい。
「レース様、ダート様おはようございます」
「サリッサ……?、この料理はどうしたの?」
「これですか?これからお世話になるのですから侍女の私が作るのは当然です、主人の身の回りの世話をするのも仕事の一つなので」
「ありがとう……、でも家事は今迄ぼくとダートが交代しながらやってたから毎日やらなくても大丈夫だよ?」
「……っ!?、そんな訳には行きませんっ!先程も申しましたが侍女は主人の身の回りの世話をし、時には手足となり雑用を行なうのが私の役目であり存在意義、私の仕事を取らないでくださいませっ!」
サリッサが真剣な顔をしてこっちを見る。
……これはぼくの方が折れないと、彼女のプライドを傷付けてしまうだろう。
「ならこれから身の回りの事をお願いするよ」
「はいっ!ありがとうございますっ!」
何ていうか本当に嬉しそうだ……、でもサリッサに身の回りの事を全て任せてしまうといつか自分では何も出来なくなる気がして正直不安でしかない。
でもそれを彼女に言うとまた同じやり取りが続きそうだから今は黙っていようと思う。
「サリッサさん、この料理の数作るの大変だったんじゃない?、次からは時間がある時に私も手伝うから言ってね?」
「ダート様、ありがとうございます、その時は宜しくお願い致しますね」
「あ、じゃあぼくも……」
「レース様は結構です、ストラフィリアでは家事は女性の戦場であり力を示す事が出来る唯一の場所と言われていますので、馴染みは無いとは思いますがご理解ください」
「え、あぁ……うん」
やっぱりあの国はおかしいこういうのは皆でやった方が良いと思うのに……、ミュラッカがそこも変えてくれる事に期待するしか無いか。
「ところでお二人はリビングでゆっくりとお話しをしていて大丈夫なのですか?、本日は朝から冒険者ギルドに行き大事な依頼の説明を受けると昨晩聞いていたので、歩きながら食べれる物をテーブルに用意したのですが……」
「あっ!?、ごめんサリッサっ!早く行かないと遅れるっ!」
「レース落ち着いて、今から出れば待ち合わせには間に合うから」
「でも、高ランクの冒険者は時間絶対に守るんで……んぐっ!?」
「その高ランク冒険者の私が大丈夫って言ってるの、だから食べながらゆっくり向かおう?ね?」
焦ったぼくを落ち着かせるように、テーブルの上に置かれていたパンを喋っている口の中に入れると、ダートも手に取って食べる。
正直驚いて味が分からないから、次は食べさせてくれるなら一言でもいいから言葉にしてからにして欲しい……。
「ん、おいしっ、サリッサさんありがとう、これすっごい美味しいっ!」
「ふふ、そう言って頂けるとメセリーの料理を王城内の書庫で調べておいて良かったです」
「今度作り方教えて?レースに作って食べさせてあげたいから」
「はい、それなら今度一緒に作りましょう」
「うん、約束だよサリッサ!」
……そういえばぼく達を起こしに行ったダリアの姿が見えないけど、どうしたのだろうか周囲を見るけど姿が見当たらない、これはもしかして何かあったのかと思って心配をしていると……
「ダリアちゃんも一緒に寝るのぉっ!」
「だぁっ!俺は起こしに来たんだって!抱き着いてベッドに引きずり込むのやめろぉっ!」
「時間になったらサリッサが起こしに来るのっ!」
「だぁもうっ!分かった!分かったからっ!」
どうやら三階に行ってルミィを起こそうとしてくれていたみたいだけど……、ベッドの中に引きずり込まれてしまったらしい。
取り合えず無事だったみたいだからいいか……
「ふふ、あの二人はストラフィリアにいる時からこうなんですよ?何て言いますか、実の姉妹みたいで微笑ましいです」
「ダリアに仲の良い家族が出来て良かったよ……、じゃあぼく達は行くから留守の方宜しくね」
「はい、レース様、ダート様いってらっしゃいませ……、冒険者のお仕事は大変だと思いますが無事に帰られますよう祈っておりますね」
「ありがとう、じゃあいってきます」
「サリッサさん、いってくるねっ!」
……そう言って家を出たぼく達は、外の階段を降りて診療所のようすを見ると……どうやら今日も師匠がソフィアを連れて手伝いに来てくれているようで、ぼく達に気付いた彼女がこっちに向かって手を振ってくれるけど……、眼に涙を浮かべて助けを求めていたように思えたのは気のせいだろうか。
そんな事を思いながらぼく達は冒険者ギルドへと向かうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる