296 / 600
第七章 変わりすぎた日常
43話 探索と言語
しおりを挟む
気を失ったスイをフィリアに任せ、膝を痛めたらしいミオラームをぼくが背中に背負って帰ろうと思ったけど……
「帰る前に吹き飛んだ頭を探しに行く、もしかしたらマスカレイドが作った生物兵器について私だったら調べる事が出来るかもしれないから」
「なら一度三手に分かれて探してみない?」
確かに三手に分かれて探した方が見つかる可能性が高いと思うけど、ここは未開拓地域だからもし今、他のモンスターに遭遇して戦闘になったりしたらぼく一人では生き残れるのか分からない。
心器を再び顕現させるってなっても魔力が足りないせいで不可能だし、そうなったら肉体強化で戦うしかないけど、こういう時武器を空間収納の中にしまっていると不便だと思う。
そういう意味では次からは戦闘前に予め出しておいた方が良さそうだ。
「ならそうするけど、暫くしたら何も見つからなくてもここに全員集合で、後ミオは――」
「私はレース様と一緒に行きますわっ!だって足が痛くて動けませんものっ!」
「背負って歩くとなると何かあった時危ないんだけど……」
「それなら私が何とかするので大丈夫ですわ?と言う事なので、ダート様……レース様を暫くお借り致しますわね?」
「……レースの事だから大丈夫だと思うけど、ミオラーム様、宜しくお願い致します」
そうしてぼくはミオラームを背負って飛んで行ったであろう場所を探しているけど……、奥に進めば進む程異様な光景が目に映る。
あの生物兵器が食い荒らしたと思われる、原形を留めておらずどのような種族か分からないモンスターや、主に緑の肌を持つゴブリンに犬のような顔を持つコボルトの魔族の死体がそこかしろに投げ捨てられていて、彼等の表情は皆恐怖を張り付けた状態で死んでいた。
「これは……」
「酷いですわね……」
魔族達の死体を見ると狩りをしていたのだろうか、弓や槍等の武器を持っていたりするけど……、遭遇して襲われた時に生き残ろうと必死に戦ったのかもしれない。
でもあの硬い鱗に弾かれて槍で傷をつける事は出来なかったろうし、弓から放たれる矢だって刺さっても直ぐに傷が塞がってしまう。
それでも彼等が頑張ってくれたから、ぼく達が生き残る事が出来たのかもしれないと思うと出来れば丁寧に弔ってあげたい気持ちになるけど、今はそんな事をしている暇はないから諦めるしかない……
「ぼく達が今こうして生きてられたのは彼等の犠牲があったからかもしれないね」
「そうなんですの?」
「装備を見ると分かると思うんだけど、人の身体の背中に刺さっていた矢は彼等がやったんだと思う……」
「でも槍は鉄製じゃなくて石器だから傷をつけられなかったのではなくて?」
「そうだけど、必死に戦ってくれたのは確かだよ」
人の腕に刺さって折れていた武器はやはり、護衛に着いていた冒険者達の武器なのだろう。
それならこの近くに開拓に参加している人達の死体があのかもしれないけど……、出来れば人の食い荒らされた姿をミオラームには見せたくない。
「……あら?何か声が聞こえませんこと?」
「声?ぼくには聞こえないけどどこらへんか分かる?」
「えっと、多分なのですけれどあちらの方から聞こえますわ」
ミオラームが指差した方向に向かって進みながら耳を澄ますと、確かに声のような物が聞こえて来る。
もしかして生存者がいるのかもしれない、早足で向かうとそこには……
「11100110 10010000 10001101 11100101 10000010 10110111 11100100 10111111 10101110 11100101 10111110 10101001」
生物兵器の頭がそこに落ちていて、何やら呪文のような物を一定のリズムで唱えている。
意味が分かれば何を発動させようとしているのか分かるとは思うんだけど……
「……損傷修復って言ってますわね」
「ミオラーム、何を言っているのか分かるの?」
「えぇ……、レース様に分かりやすく説明致しますと、私達の言語を数字に変換して機械に命令を送り動いていると思って頂ければわかりやすいとは思うのですが……、遥か昔、まだマーシェンスが蒸気と機械の国だった頃に使われておりまして、今はもう王族以外では意味を理解出来る者はいなかった筈ですが、これはどうやら先王がマスカレイドに漏らしたとみて間違いないですわね」
「それをぼくに言って大丈夫?」
「別に構いませんわ?この言語が漏れた所で理解出来るのは現状、私とマスカレイドしか居ないですもの……、それに兄や姉達は自分で物を考える事を止めてマスカレイドに心酔してしまった人達でしたから、何も分からないと思いますわ」
話を聞いていて思ったけど、そんな状態になっていたからこそ彼からしたらあの国は居心地が良かったのかもしれない。
王族の面倒を見る事で後は何をしても許されると言うのは凄い環境だと思うけど……、ミオラームがそうならないで良かった。
「ならいいけど、どうして今は使われてないのかな……」
「それは簡単な事ですわよ?、この世界には魔力がありますし、科学と魔術を組み合わせて生まれた魔科学が発展したせいですわね……、魔力に方向性を与える事で言語を通さずに機械を動かす事が出来るようになったのが大きいですけれど、詳しくお話しすると専門的な事になるので止めておきますわ、聞いても分からないと思いますし」
「何となくそういう流れがあったんだなって事だけ分かったから大丈夫だよ、ありがとう」
「ふふ、どういたしましてですわぁっ!レース様にお礼を言われるのは嬉しいですのよっ!」
「なら良かったよ……、取り合えず見つけたから合流場所に戻ろうか」
……ぼく達が戻ると、大分前に二人も戻って来ていたようで出迎えてくれる。
こっちに頭部があった事を伝えた後にフィリアとダートが向かった先には何があったのか聞いて見ると……、フィリアの方は護衛の冒険者と開拓に参加している領民だと思われる人達の無惨な死体以外には特に何も無かったらしい。
ダートの方も同じような感じだったらしいけど、その中に一人折れた槍を二本持った男性の亡骸があったらしく……、人型部分の腕に刺さっていた物は彼の物だろうという話になった。
一応身元が分かるものとして冒険者ギルドのカードが破損せずに残っていたらしく後で戻った際に職員に渡すそうだ。
そんなやり取りをした後、皆で頭部がある場所に行くとそこにあった筈の頭部が無くなっていたのだった。
「帰る前に吹き飛んだ頭を探しに行く、もしかしたらマスカレイドが作った生物兵器について私だったら調べる事が出来るかもしれないから」
「なら一度三手に分かれて探してみない?」
確かに三手に分かれて探した方が見つかる可能性が高いと思うけど、ここは未開拓地域だからもし今、他のモンスターに遭遇して戦闘になったりしたらぼく一人では生き残れるのか分からない。
心器を再び顕現させるってなっても魔力が足りないせいで不可能だし、そうなったら肉体強化で戦うしかないけど、こういう時武器を空間収納の中にしまっていると不便だと思う。
そういう意味では次からは戦闘前に予め出しておいた方が良さそうだ。
「ならそうするけど、暫くしたら何も見つからなくてもここに全員集合で、後ミオは――」
「私はレース様と一緒に行きますわっ!だって足が痛くて動けませんものっ!」
「背負って歩くとなると何かあった時危ないんだけど……」
「それなら私が何とかするので大丈夫ですわ?と言う事なので、ダート様……レース様を暫くお借り致しますわね?」
「……レースの事だから大丈夫だと思うけど、ミオラーム様、宜しくお願い致します」
そうしてぼくはミオラームを背負って飛んで行ったであろう場所を探しているけど……、奥に進めば進む程異様な光景が目に映る。
あの生物兵器が食い荒らしたと思われる、原形を留めておらずどのような種族か分からないモンスターや、主に緑の肌を持つゴブリンに犬のような顔を持つコボルトの魔族の死体がそこかしろに投げ捨てられていて、彼等の表情は皆恐怖を張り付けた状態で死んでいた。
「これは……」
「酷いですわね……」
魔族達の死体を見ると狩りをしていたのだろうか、弓や槍等の武器を持っていたりするけど……、遭遇して襲われた時に生き残ろうと必死に戦ったのかもしれない。
でもあの硬い鱗に弾かれて槍で傷をつける事は出来なかったろうし、弓から放たれる矢だって刺さっても直ぐに傷が塞がってしまう。
それでも彼等が頑張ってくれたから、ぼく達が生き残る事が出来たのかもしれないと思うと出来れば丁寧に弔ってあげたい気持ちになるけど、今はそんな事をしている暇はないから諦めるしかない……
「ぼく達が今こうして生きてられたのは彼等の犠牲があったからかもしれないね」
「そうなんですの?」
「装備を見ると分かると思うんだけど、人の身体の背中に刺さっていた矢は彼等がやったんだと思う……」
「でも槍は鉄製じゃなくて石器だから傷をつけられなかったのではなくて?」
「そうだけど、必死に戦ってくれたのは確かだよ」
人の腕に刺さって折れていた武器はやはり、護衛に着いていた冒険者達の武器なのだろう。
それならこの近くに開拓に参加している人達の死体があのかもしれないけど……、出来れば人の食い荒らされた姿をミオラームには見せたくない。
「……あら?何か声が聞こえませんこと?」
「声?ぼくには聞こえないけどどこらへんか分かる?」
「えっと、多分なのですけれどあちらの方から聞こえますわ」
ミオラームが指差した方向に向かって進みながら耳を澄ますと、確かに声のような物が聞こえて来る。
もしかして生存者がいるのかもしれない、早足で向かうとそこには……
「11100110 10010000 10001101 11100101 10000010 10110111 11100100 10111111 10101110 11100101 10111110 10101001」
生物兵器の頭がそこに落ちていて、何やら呪文のような物を一定のリズムで唱えている。
意味が分かれば何を発動させようとしているのか分かるとは思うんだけど……
「……損傷修復って言ってますわね」
「ミオラーム、何を言っているのか分かるの?」
「えぇ……、レース様に分かりやすく説明致しますと、私達の言語を数字に変換して機械に命令を送り動いていると思って頂ければわかりやすいとは思うのですが……、遥か昔、まだマーシェンスが蒸気と機械の国だった頃に使われておりまして、今はもう王族以外では意味を理解出来る者はいなかった筈ですが、これはどうやら先王がマスカレイドに漏らしたとみて間違いないですわね」
「それをぼくに言って大丈夫?」
「別に構いませんわ?この言語が漏れた所で理解出来るのは現状、私とマスカレイドしか居ないですもの……、それに兄や姉達は自分で物を考える事を止めてマスカレイドに心酔してしまった人達でしたから、何も分からないと思いますわ」
話を聞いていて思ったけど、そんな状態になっていたからこそ彼からしたらあの国は居心地が良かったのかもしれない。
王族の面倒を見る事で後は何をしても許されると言うのは凄い環境だと思うけど……、ミオラームがそうならないで良かった。
「ならいいけど、どうして今は使われてないのかな……」
「それは簡単な事ですわよ?、この世界には魔力がありますし、科学と魔術を組み合わせて生まれた魔科学が発展したせいですわね……、魔力に方向性を与える事で言語を通さずに機械を動かす事が出来るようになったのが大きいですけれど、詳しくお話しすると専門的な事になるので止めておきますわ、聞いても分からないと思いますし」
「何となくそういう流れがあったんだなって事だけ分かったから大丈夫だよ、ありがとう」
「ふふ、どういたしましてですわぁっ!レース様にお礼を言われるのは嬉しいですのよっ!」
「なら良かったよ……、取り合えず見つけたから合流場所に戻ろうか」
……ぼく達が戻ると、大分前に二人も戻って来ていたようで出迎えてくれる。
こっちに頭部があった事を伝えた後にフィリアとダートが向かった先には何があったのか聞いて見ると……、フィリアの方は護衛の冒険者と開拓に参加している領民だと思われる人達の無惨な死体以外には特に何も無かったらしい。
ダートの方も同じような感じだったらしいけど、その中に一人折れた槍を二本持った男性の亡骸があったらしく……、人型部分の腕に刺さっていた物は彼の物だろうという話になった。
一応身元が分かるものとして冒険者ギルドのカードが破損せずに残っていたらしく後で戻った際に職員に渡すそうだ。
そんなやり取りをした後、皆で頭部がある場所に行くとそこにあった筈の頭部が無くなっていたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる