治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第九章 戦いの中で……

2話 メイディ首都の冒険者ギルド

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 冒険者ギルドに到着したけど、周囲には建物が一つと様々な薬草が植えられている畑があるだけの寂しい雰囲気の場所で、外には職員らしい人達がやることが無いのか暇そうな顔をしながら手入れをしている。

「冒険者ギルドなのに……凄い暇そうだね」
「首都に行っても基本的に冒険者達に出来る事が無いからね、あっても首都の警護か……たまに来る【薬姫】メイメイの試薬のテスターしか依頼が来ないのが問題でね」
「あぁ……ぼくに渡した薬を改良するとかで人族の冒険者を募集してたね」
「そういえば出てたね、彼女が出すのはランク関係無く受けられる高額依頼だから、この国では肩身の狭い人族からしたらありがたかったんじゃないかな」

 肩身が狭いって……この国に人族が少ないせいだろうか。
国民の中にも少しはいるみたいだし、それに外の国からも冒険者が入って来るらしいからそんな事は無いと思うんだけど……もしかして他に理由があるのかもしれない。

「肩身が狭いってどうして?」
「……レース君は知らないんだね、メイディにはエルフ族や獣人族と言う人よりも長命な種が多い事で有名だけどね、この国に拠点を置く犯罪組織の殆どが人族や小人族と言う短命の種族が多くてね」
「……小人族?」
「知らないのは無理は無い……彼らはマーシェンスにいる種族だけど基本的に他の種族の役に立つことに生きがいを感じる人達でね、それが犯罪であろうと関係なく協力してしまうんだ、詳しくはメセリーに戻った時に【賢王】ミオラームに聞いてみると良いかもしれないね」

 確かにミオラームに聞いた方が色々と分かる事が多いと思うけど、小人族に関してはそこまで興味が無いから覚えてたら聞いた方がいいだろう。
とはいえ何時かはマスカレイドと決着を付けるために行くだろうから、正直聞くのを忘れていたとしても何れ出会う気がする。

「他には君も知っているヴァンパイアと呼ばれるモンスター、いや亜人と言った方が分かりやすいかな、そういう危険な種族もいるけど彼らは基本自身が領地として定めた場所から出てこないから敵に回さなければ安全だよ……、さて外でいつまでも長話をするよりもギルドの中に入ろうか、トキが既に来ているかもしれないからね」

 ライさんがそういうと冒険者ギルドの扉を開けて先に入るようにと促す。
彼にお礼を言いながら扉を通ると、見覚えのあるいつも通りの内装が見えて安心するけど……、中には冒険者らしき人達は誰もいなくて受付にいる獣を耳を持つ獣人の女性は寝てしまっているのか机に顔を伏せている。

「良かった……どうやらまだトキは来てないようだね」
「みたいだけど、何ていうか凄い暇そうだね」
「仕事が無いとこうなるのさ……、とはいえ常駐依頼以外は仕事が入らないせいで収益の発生もしてないせいで、実際の所残しているだけ赤字になるのだけれど色々と事情があって残さざる負えないのが問題だね」
「残さざる負えない?」
「これはギルド職員と栄花騎士団の幹部以外は知らされていないから、誰にも言わないで欲しいのだけれど……首都の地下からここに直接繋がっていてね、何かあった時はここの地下室に特別に用意された転移の魔法陣を利用して安全な場所へと避難できるようになっているからそれが理由だね」
「と言う事は、もしかしてここの職員の人達って凄い強かったりするのかな」

 首都から逃げてくるという事は……、ぼくがここ数日の間に見たみならい騎士の人や現役の騎士の人達を見ると戦い馴れてないのか正直言ってぼくよりも弱い。
魔術と治癒術の使い方においてなら、ぼくの方が秀でているのはしょうがないと思うけど武器の扱いまでどうしようもないのは余りにも情けないと思う。

「レース君の言うように、このギルドにいる職員達は皆元Aランク冒険者と言う高ランクの中でも選りすぐりの精鋭ばかりだね、……ここにメイディの騎士がいないとはいえ大きな声で言えないけど、お世辞にも彼らは強いとは言えない……とはいえ一般人よりは遥かに強いのけどね」
「……それでこの国を守れるの?」
「それはさすがにここで言えないからギルドの奥で話そうか、えっとそこの寝たふりしてる猫の獣人族の……確かキャシー君だったね、ギルド長から話は通ってると思うけど奥にある会議室と訓練場を使わせてもらうよ?」
「……んもう、どうして寝たふりしてるのに声かけますかねぇ、あのやり取りを聞いてませんよーってふりしてたのに、まぁいいですけど……金髪碧眼で紳士服を着た栄花騎士団の最高幹部が来るって話を聞いてますので、安心してとそのままお通りください」
「声をかけて欲しくなかったら次からは耳をぴくぴくと動かして反応しないようにしないとね……、まぁギルド長【杖鉈】のカフスさんから情報収集を頼まれてるのは分かるけど、露骨過ぎるのは良くないから次から気を付けるようにね」

……二つ名がついてるって事はその人も元Aランク冒険者なのだろうか、そう思いながらライさんと一緒に冒険者ギルドの奥にある会議室に入ると『……遅かったなの、トキが遅いって怒ってるから早く訓練場に行くの』と見覚えのある猫耳の少女が困った顔をしてぼくたちを出迎えるのだった。 
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