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第九章 戦いの中で……
9話 ランが来た理由
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会議室に戻るとそこには困ったような顔をしているライとお行儀よく椅子に座っているランの姿がある。
これは
……それにしても同じラから始まる名前の人が二人いるって名前を呼ぼうとしたら二人が反応しそうでちょっと気まずい。
「あぁ、おかえりレース君……訓練場の方で凄い音がしていたけど大丈夫だったかい?」
「んー、武器の性能確認でトキさんと訓練してただけだから大丈夫だよ」
「……彼女は誰かの専用武器を作ると必ずやるからね」
「おかげで訓練場で凄い事になっちゃったけどね……、治してから栄花に戻るって言ってたけど材料とかに悩んでるみたいだよ」
「……凄い事って抽象的で良く分からないけど、まぁトキが責任を持って治すならギルド長に謝罪にしに行かなくていいかな」
あぁ、困ったような顔していた理由は訓練場の出来事に関してだったのかもしれない。
現に今は安心したような顔をしてゆっくりと椅子に腰を下ろしている。
「トキはいつも乱暴なの、腕が良いのは知ってるから信用してるのに態々確認する必要は無いの」
「……ラン、君の気持ちは分からないでもないけどね、職人というのは拘る物なんだよ……俺の空間魔術が使えるようになる短剣や君の属性を制御する為のネックレスも、彼女の力があってこそだからね」
「でも私は特性で自分の属性を制御できるから……」
「それも確実ではないだろ?君の特性は感情が高まると制御が弱まる、その時の為に二重の保険を掛けておくのは大事だよ」
ランの属性……、闇属性の中でも非常に珍しい【核】という特殊な物でこの世に生を受けた瞬間に周囲に被害をもたらしてしまうという危険な物だ。
ただ奇跡的に噛み合った魔力特性【制御】を持っていた事で生きている事が出来たらしいけど……、髪と瞳が常に淡い発光をして青白く輝いているのを見ると凄い綺麗だと思う。
それが本来なら危険な物だと分かっていても、人を惹きつける魅力があるのは不思議な気がする。
「レース?あなたにはカエデちゃんとダートがいるの、そんな顔を見られても困る」
急に頬を染めて意味の分からない事を言うけど、ぼくはいったいどんな顔をしているのだろうか。
「まぁ……でも?猫の獣人族は強い男は沢山の妻を持つの、だからレースがどうして持って言うのならカエデちゃんと一緒に嫁入りしてあげてもいいけ──」
「いや、ぼくには二人いれば充分だよ、三人になってしまったらこの両腕では抱えきれないし」
「……ちょっと何を言ってるのか分からないけど、二人いれば充分なのは分かったなの」
「えっとラン?、君はカエデ姫の護衛としてここに来たのに何の話をしているんだい?」
「……あ、ライごめんなさい、何だか私この人を見るとつい本能が疼いてしまうの」
本能が疼くの意味が分からないけど、以前狼の獣人族であるクロウに他の獣人達の特徴を聞いた事がある。
確か……猫の獣人族の女性は種を残す為に一度に複数の子を産むらしい、少なくて一人、多くて八人でしかも発情期という時期でしか子供を増やせない特徴があるそうだ。
多分ランも同じ感じだろうけど、本能が疼くという事はたぶんその時期が近くて年齢的に異性を求めやすいのかもしれない。
「……何を考えてるの?」
「ぼくは君の旦那さんにはなってあげられないけど、良い人を探す手伝いなら今度しようか?」
「っ!?私はその為にここに来たんじゃないの!頼まれて、カエデちゃんとダートの護衛に来たのにふざけないでなの!」
「……二人の仲が良いのは分かったけど喧嘩は後にして欲しいな、俺の胃に穴が開く前に」
「あっ……すいません」
ライさんが再び眉間に皺を寄せてお腹を抑えている。
このままだと本当にストレスで胃に穴が開いてしまうかもしれない……、一応治癒術で治せない訳ではないけど無理をさせるのは違う。
「分かってくれたならいいよ……、最近は【薬姫】メイメイから貰った薬のおかげで調子は良いけど限度があるからね」
「……私も気を付けるの、でもライの胃が調子良いって事はストレスの行先が今度は髪の毛に来そうなの」
「それは言わないでくれ……、ここ最近抜け毛が増えて来てるんだまだ20代なのにウィッグの検討何てしたくない」
「えっと……その時は髪の毛が生えるようになる新術を何とか作ってみるよ」
「悪いねレースくん、出来れば早急に頼むよ」
早急にって……確かにメセリーでも毛髪が無くなってしまった人達が必死に作ろうとしてるけど、そこまで気にするものだろうか。
以前辺境都市クイストで開拓の護衛隊隊長をしていたグランツ、彼も亡くなる前は頭の毛が無かったけど堂々としていたし、むしろその頭部を利用して威厳を出していたから同じようにしてみたらいいのに……。
「すまない話が逸れてしまったね……、とりあえず用事が済んだのなら暗くなる前に首都に戻ろうか」
「それがいいの、私も直ぐにカエデちゃんに会いたいし」
「ぼくもダートの様子が気になるかな」
「今から戻れば日が暮れる前には着くだろうし……、レース君は早くダートさんの所に行って安心させてあげないとね」
……そう言って二人は立ち上がると会議室を出て行く。
ぼくもそれに続いて行くと何やら訓練場の方で、年老いた老人の声で『場所を貸したがここまで壊すとは何事じゃ!いくら騎士団の最高幹部とはいえ完璧に直すまで帰さんからな!』という怒鳴り声が聞こえる。
それを聞いて申し訳ない気持ちになったけど『……レース君、ギルド長に見つかる前に急いでここを出よう、ここの長は普段は温厚だけど怒ったら凄い怖いんだ』とライさんが足早に言葉にするのだった。
これは
……それにしても同じラから始まる名前の人が二人いるって名前を呼ぼうとしたら二人が反応しそうでちょっと気まずい。
「あぁ、おかえりレース君……訓練場の方で凄い音がしていたけど大丈夫だったかい?」
「んー、武器の性能確認でトキさんと訓練してただけだから大丈夫だよ」
「……彼女は誰かの専用武器を作ると必ずやるからね」
「おかげで訓練場で凄い事になっちゃったけどね……、治してから栄花に戻るって言ってたけど材料とかに悩んでるみたいだよ」
「……凄い事って抽象的で良く分からないけど、まぁトキが責任を持って治すならギルド長に謝罪にしに行かなくていいかな」
あぁ、困ったような顔していた理由は訓練場の出来事に関してだったのかもしれない。
現に今は安心したような顔をしてゆっくりと椅子に腰を下ろしている。
「トキはいつも乱暴なの、腕が良いのは知ってるから信用してるのに態々確認する必要は無いの」
「……ラン、君の気持ちは分からないでもないけどね、職人というのは拘る物なんだよ……俺の空間魔術が使えるようになる短剣や君の属性を制御する為のネックレスも、彼女の力があってこそだからね」
「でも私は特性で自分の属性を制御できるから……」
「それも確実ではないだろ?君の特性は感情が高まると制御が弱まる、その時の為に二重の保険を掛けておくのは大事だよ」
ランの属性……、闇属性の中でも非常に珍しい【核】という特殊な物でこの世に生を受けた瞬間に周囲に被害をもたらしてしまうという危険な物だ。
ただ奇跡的に噛み合った魔力特性【制御】を持っていた事で生きている事が出来たらしいけど……、髪と瞳が常に淡い発光をして青白く輝いているのを見ると凄い綺麗だと思う。
それが本来なら危険な物だと分かっていても、人を惹きつける魅力があるのは不思議な気がする。
「レース?あなたにはカエデちゃんとダートがいるの、そんな顔を見られても困る」
急に頬を染めて意味の分からない事を言うけど、ぼくはいったいどんな顔をしているのだろうか。
「まぁ……でも?猫の獣人族は強い男は沢山の妻を持つの、だからレースがどうして持って言うのならカエデちゃんと一緒に嫁入りしてあげてもいいけ──」
「いや、ぼくには二人いれば充分だよ、三人になってしまったらこの両腕では抱えきれないし」
「……ちょっと何を言ってるのか分からないけど、二人いれば充分なのは分かったなの」
「えっとラン?、君はカエデ姫の護衛としてここに来たのに何の話をしているんだい?」
「……あ、ライごめんなさい、何だか私この人を見るとつい本能が疼いてしまうの」
本能が疼くの意味が分からないけど、以前狼の獣人族であるクロウに他の獣人達の特徴を聞いた事がある。
確か……猫の獣人族の女性は種を残す為に一度に複数の子を産むらしい、少なくて一人、多くて八人でしかも発情期という時期でしか子供を増やせない特徴があるそうだ。
多分ランも同じ感じだろうけど、本能が疼くという事はたぶんその時期が近くて年齢的に異性を求めやすいのかもしれない。
「……何を考えてるの?」
「ぼくは君の旦那さんにはなってあげられないけど、良い人を探す手伝いなら今度しようか?」
「っ!?私はその為にここに来たんじゃないの!頼まれて、カエデちゃんとダートの護衛に来たのにふざけないでなの!」
「……二人の仲が良いのは分かったけど喧嘩は後にして欲しいな、俺の胃に穴が開く前に」
「あっ……すいません」
ライさんが再び眉間に皺を寄せてお腹を抑えている。
このままだと本当にストレスで胃に穴が開いてしまうかもしれない……、一応治癒術で治せない訳ではないけど無理をさせるのは違う。
「分かってくれたならいいよ……、最近は【薬姫】メイメイから貰った薬のおかげで調子は良いけど限度があるからね」
「……私も気を付けるの、でもライの胃が調子良いって事はストレスの行先が今度は髪の毛に来そうなの」
「それは言わないでくれ……、ここ最近抜け毛が増えて来てるんだまだ20代なのにウィッグの検討何てしたくない」
「えっと……その時は髪の毛が生えるようになる新術を何とか作ってみるよ」
「悪いねレースくん、出来れば早急に頼むよ」
早急にって……確かにメセリーでも毛髪が無くなってしまった人達が必死に作ろうとしてるけど、そこまで気にするものだろうか。
以前辺境都市クイストで開拓の護衛隊隊長をしていたグランツ、彼も亡くなる前は頭の毛が無かったけど堂々としていたし、むしろその頭部を利用して威厳を出していたから同じようにしてみたらいいのに……。
「すまない話が逸れてしまったね……、とりあえず用事が済んだのなら暗くなる前に首都に戻ろうか」
「それがいいの、私も直ぐにカエデちゃんに会いたいし」
「ぼくもダートの様子が気になるかな」
「今から戻れば日が暮れる前には着くだろうし……、レース君は早くダートさんの所に行って安心させてあげないとね」
……そう言って二人は立ち上がると会議室を出て行く。
ぼくもそれに続いて行くと何やら訓練場の方で、年老いた老人の声で『場所を貸したがここまで壊すとは何事じゃ!いくら騎士団の最高幹部とはいえ完璧に直すまで帰さんからな!』という怒鳴り声が聞こえる。
それを聞いて申し訳ない気持ちになったけど『……レース君、ギルド長に見つかる前に急いでここを出よう、ここの長は普段は温厚だけど怒ったら凄い怖いんだ』とライさんが足早に言葉にするのだった。
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