治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第九章 戦いの中で……

49話 再び壊れた訓練場

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 ガルシアが止めてくれたおかげで、ネフィーラがやろうとしていた事は不発で終わったみたいだけど……あのまま続いていたらどうなっていたのだろうか。
予想できる範疇では、広範囲に毒の魔術が付与された毛がまき散らされたという事は、少しでも触れたりしたら皮膚が炎症起こし焼け爛れてしまうだろう。

「……悪いな乱入して、あいつがやろうとした事を止めなかったら被害がヤバすぎてな」
「いや、止めてくれて良かったよ……、個人的には治癒術の発展に使えそうだから何が起きるのか気になるけど」
「……勘弁してくれ、依頼を受けてないのに好き勝手やり過ぎたら俺がカーティスの旦那とサリア嬢に怒られちまう、旦那はまだ放任主義だからいいけどサリア嬢は怒らせたらやべぇんだ」
「結構面白い子だったと思うけど?」
「面白い?あれが……?」

 サリアがそんなに怖そうなイメージは無い。
むしろ争いが嫌いな女性だし……幾ら強かったとしても、ネフィーラやガルシアの方が見た目的に強そうに感じる。

「それに片手が義肢なのは気になるけど、そこ意外は心優しい人だと思うよ?」
「おまえ、サリア嬢が何でそうなったのか知らないのか?」
「え?知らないけど……」
「カーティスの旦那が傭兵団に勧誘した際に、あの時はまだ血の気が多かったサリア嬢が、いきなり出て来て父親面するのが気に入らないからとやり合ったんだよ……最初は旦那も軽くあしらうつもりだったんだが、途中で何も無い所からおまえみたいに武器を出現させたと思ったら、いきなり動きが良くなったと思ったら深手を負わせてよ、それで本気になった旦那が反撃したら片腕吹っ飛んじまったんだよ」
「へぇ……」

 別に興味は無かったし、サリアが強いのはストラフィリアでカエデに鑑定魔術を使って貰った時に数値で確認したから知ってる。
ただその実力がSランク冒険者に深手を負わせる程だとは思わなかったから、そこは凄いと思うけど……何も無い所から武器を出したという事は【心器】が使えるのだろう。
……確かに以前ぼく達が使うのを見ても驚きはしなかった気がするから、使えてもおかしくはないだろうけど、今の話を聞いた限りだと……Sランク冒険者と同じ実力があったとしてもおかしくはない。
大分うろ覚えだけど前にカエデが、傭兵団の中にはSランク冒険者に匹敵する能力者がいる的な事を言ってた気がするし……。

「興味なさそうだな、まぁ別にいいけどよ……で?レースの旦那、あんたが戦いに勝ったんだから俺達【死絶傭兵団】は力を貸すぞ?まずは何をしたらいい」
「……冒険者の緊急依頼に参加して欲しいかな、後は」
「後は?」
「……訓練場の所々が飛び散った毛が燃えたせいで焦げたり、戦闘を行ったせいで床が壊れたりしてるから、一緒にカフスさんに謝って欲しいかな、それと……ネフィーラは人族に良い印象を持ってないみたいだから、仕事に関係した話に関してはガルシアを通して全体に伝えて欲しいんだけどそれでいい?」
「え?……あぁ、確かにネフィーラに任せるのは良くないな、分かった……あんたは力を示したからあいつも文句は言わないと思うし、俺が言わせねぇ、ただ……カフスに関してはそうだな、俺も謝罪には協力するけ……ど……?ん?」

 訓練場の外から何からドスドスと重い音を響かせながら、こちらへ向かってくる音がする。
思わず二人して身構えると……大鉈を肩に担いだカフスが扉を蹴破って勢いよく中に入って来た。

「……レースさん、死絶傭兵団とお話をすると言ってましたがこれはどういう事ですか?」
「えっと……これは」
「悪いカフスの旦那!、これはレースの旦那の話を聞いた俺達が依頼主の実力を確かめたくて、ここに無理矢理連れて来てやりあったんだ!」
「……冒険者ギルドの許可無しに訓練場を無断使用するのは頂けませんね、この落とし前はどうつけて頂けるので?」
「それならぼくが責任を取って、ここの修理に必要な費用を出すよ……それじゃダメかな」

 ガルシアがかばってくれたのは嬉しいけど、今回の件はぼくに責任があると思うから……壊してしまった以上はしっかりと弁償するべきだと思う。

「カ、カフスさん……先に行かないでください」

 すると小走りで訓練場にカエデが入って来る。
そして周囲の光景を見渡すと……

「まったく……レースさんは本当にしょうがない人ですね」
「え?」
「ここまで冒険者ギルドの施設をボロボロにしてしまうのはどうかとは思いますが……必要な事だったんですよね?」
「まぁ……そうしないといけない状況にはあったけど……」
「ならカフスさん、これに関しては栄花騎士団の任務に必要だった事だと判断出来ますので諸々の修理費用に関しては私が持ちます」

 カエデはいったい何を言っているのだろうか。
今回の件についてはどう見てもぼくが責任を取るべきなのに……

「レースさん、言いたい事は分かりますが……今のあなたは栄花騎士団の応援に来ているだけで、立場上は何の責任もありませんし……何か問題が起きた場合責任を取るのは栄花騎士団です」
「でも……」
「でもじゃないです、それにレースさんは私の婚約者ですよ?あなたの立場を私に守らせてください」

……守らせて欲しいと言われると何と言葉を返していいのか分からなくて、思わず言葉に詰まってしまう。
取り合えずどうしようかと思っていると『……分かりました、では訓練場の修繕が終わり次第請求書を栄花騎士団にお送りいたします』と話が進んでしまうのであった。
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