治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第十章 魔導国学園騒動

37話 捕らえられた娘

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 音のした方に急いでソフィアと向かうと、何かの薬品で濡れたダリアが割れたガラスを踏みしめて荒い息を吐いている。

「あのクソが!ぜってぇに許さねぇからな!」

 人に聞かせられないような罵倒を口にしながら、周囲の液体に見たらされたガラスケースを蹴り続ける。
その姿を見て、何て言葉を掛ければいいのか分からず固まってしまう。

「レースさん、何をやってるんですか?ダリアさんの声を掛けないと」
「いや……あの状況で声を掛けるのは難しくない?」
「自分の娘が冷静さを失って暴れてるんですよ?こういう時にお父さんがちゃんとしないでどうするんですか」

 そうこうしている内に、ダリアが心器の剣を顕現させるとガラスケースに突き刺して、穴を空けると勢いよく液体が外に飛び出して……

「……あれはまさか」
「エスペランサさんに、スパルナさん!?」
「あ?なんだおめぇ等!見てんなら手を貸せよ!」
「……ダリアっ!そこを離れて!」

 液体が満たされていたケースの中から、見覚えのある生徒の姿が現れる。
意識が無いのかその場に倒れて動かない姿を見て、急いで近づくと心器の長杖を顕現させると、急いで駆け寄りながら【怪力】と治癒術を同時に使いながら左腕の義肢で殴りつけて穴を広げると、そのまま中に飛び込んで二人を助け出す。

「と、父さん!?」
「これはどういう事か説明して貰ってもいいかな」
「あー、えっと……何だ?言いづらいんだけど」
「言いづらくてもいいから、しっかりと説明して欲しいんだけど?」
「怒んなって、それにその顔怖いから止めてくれよ、話したくても話せねぇだろ?」

 怒るなと言われても、勝手な行動をして危険な目にあっているのを見て、怒るなという方が無理だ。
現にエスペランサとスパルナは、あの状態でどうやって生存していたか分からないけど、少しだけ苦し気に咳き込んで粘性の強い液体を吐き出した後、浅い呼吸を繰り返している。
脈も弱まっているし……、もしかしたら血液内に酸素が上手く回らずに脳に損傷を受けている可能性がある以上、直ぐに処置を施さないと危険だ。

「レースさん、落ち着いてください……今は怒るところではありませんよ」
「ソフィア……でも、エスペランサとスパルナの意識が」
「……あなたらしくないですね、ゆっくりと深呼吸を繰り返して心を落ち着かせなさい」
「……うん」

 ソフィアに言われた通り、ゆっくりと深呼吸を繰り返して精神状態を落ち着かせていく。
少しずつ頭に上っていた血が下がって、興奮がおさまると……

「レースさん、落ち着きましたか?」
「大分落ち着いたかな……」
「それなら再度二人の事を良く診てください、優秀な治癒術師であるあなたなら、魔力の波長を合わせれば分かる筈ですよ?」
「分かる筈って言われても、二人の状況を見るとどう見ても……ん?」

 魔力の波長を二人に合わせてみると、まるで麻酔で眠っている患者特有の反応が返ってくる。

「気付きましたか?」
「これはもしかして、麻酔?」
「えぇ、どうやらあの液体には麻酔と同じ成分が含まれているみたいですね……、そして彼女達が吐き出した粘性のある水は、体内に酸素を送る機能を持っていた可能性があります」
「そんな事って可能なの?」
「……周囲の機械を見る限り、マーシェンスの技術を最先端の技術を取り入れた研究室のようですからね、そこにマスカレイドの能力が合わされば可能だと考えた方がいいでしょう」

 ……確かにマスカレイドなら出来る可能性がある。
という事は……ここはもしかして、グロウフェレスから渡された地図が指し示していた、マスカレイドの拠点かもしれない。

「おい、二人して俺を放って話を進めてるんじゃねぇよ!取り合えず、エスペランサとスパルナは大丈夫なんだろ?」
「うん、取り合えず麻酔で意識が無いだけだから、暫くしたら目を覚ますよ」
「ならいいけどよ……」
「……取り合えず、二人が無事なのは分かったからもう一度聞くけど、どうしてダリア達はここにいるの?」
「え?あぁ……うん、そうだな──」

 ダリアが困ったような仕草をした後、どうしてこんなことになったのか話してくれる。
……大まかな流れは、ぼくが考えていた通りエスペランサが噂を確かめる為にダリアとスパルナを巻き込んで行動を始めた後、ロドリゲスの研究室に忍び込む。
そこまでは問題無かったらしいけど、スパルナが床に転がっていた瓶を踏んで体勢を崩して転んでしまう。
その際に運悪く、転移の魔法陣の上に乗ってしまい、この場所に飛ばされてしまったらしく。
スパルナを追って、同じく転移して来た、ダリアとエスペランサは……運悪くロドリゲスに遭遇してしまい捕まってしまい、先程の状況になってしまったらしい。

「契約してる精霊のおかげで、液体に浸けられても何とか逃げれらたけど、自分の事だけで精一杯で二人を助けるのが遅れちまって……」
「なるほど、けどこうやって助けられたし大丈夫、後はぼくとソフィア、後から合流する母さんで何とかするよ」
「おぅ、それなら俺は……」
「ダリアは、意識のない二人を安全な場所に運んで欲しい」
「……だな、なら父さん、後の事は頼んだぞ?」

……ダリアは意識のないエスペランサとスパルナをぼくから受け取ると、時空間魔術を使ったのか姿が一瞬で消えて、どうやって登ったのかガラスケースの上に現れる。
確かにあの高さなら意識をしてみようとしなければ、そこにいるって分からないし良い感じで安全な場所だと思う。
取り合えずここは彼女に任せておけば大丈夫だろう、ぼくとソフィアはお互いの顔を見て無言で頷くとロドリゲスを探して再び移動を始めるのだった。
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