治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

文字の大きさ
497 / 600
第十章 魔導国学園騒動

40話 歴代の王族達

しおりを挟む
 起動した魔導兵器達が、拘束を解きゆっくりと歩いてくる。
その瞳には精気が無く、表情には感情が感じられない。
ただ機械的に、予め設定された行動を行うだけの兵器がそこにあって……

「……あれが、初代賢王様、私の祖先」
「ミオラーム、彼の事に対して何か知ってる?」
「マーシェンスの王城で歴代の王達に対する資料を読んでいる時に、見た事ならありますわ……確か初代賢王は蒸気機関の大蛇を操るとか」
「蒸気機関の大蛇……?あぁ、あれか」

 メイディでマスカレイドと交戦した時に見たけど、あの時初代賢王と戦ったのはSランク冒険者【滅尽】アナイス・アナイアレイトだったから、どんな戦い方をするのかまでは分からない。

「レース様、ご存じなんですの?」
「メイディで見た事あるだけかな……」
「なら簡単に説明致しますわ、あの大蛇に自身の属性を纏わせて攻撃をしてくるそうですの、それだけなら当たらなければ良いだけですが、問題は……耐久力ですわね、壊れても周囲の機械を取り込んで修復を繰り返すので、マーシェンスにいる限り核を壊さない限りは壊す事は不可能ですわ」
「不可能って……そんな化け物をどうやって倒せばいいのかな」
「動きを封じてさえ頂けたら、私が破壊しますわ!」

 それなら雪の魔術で動きを止めた後の事は、彼女に任せてしまった方がいいだろう。
そう思いながら心器の大剣を顕現させると【氷雪狼】を発動して、長杖と大剣を核に二匹の狼を生み出す。
同時に初代賢王ヴォルト・レネ・マーシェンスの背後に、周囲の機械を取り込みながら巨大な大蛇が生み出されると、身体の至る所から蒸気を吹き出し唸り声をあげる。

「ミオラーム、この狼達が大蛇の動きを止めるから、初代賢王の事お願い出来る?」
「や、やってみますけど……ちょっと不安ですわ」
「大丈夫、あの狼達はぼくよりも強いから……じゃあぼく達は、二代目の覇王と初代薬王の事はこっちが何とかするから」
「え、あっ!ちょっと待って……、あぁもうやってやりますわ!やってやりますわよ!」

 ミオラームはコートから複数の弾丸を取り出して宙にばら撒く。
そして身体から青白い雷を放ち、その場に停滞させると心器の銃を顕現させ……

「ミオラーム、心器を出して大丈夫なの?」
「こ、怖いけど大丈夫ですわ、だってあれを破壊するのに最も適した武器は、私の心器……レールガンしか無いですもの、だからほら、さっさと行ってくださいまし!確かこういう時は……こう言葉にすると良いのでしたわね、こほん、ここは私に任せて先に行け!ですわ!」
「……ん?なにそれ」
「知りませんわ!何だか脳裏に浮かんだだけですのよ!」

 何だか不吉な言葉をミオラームが口にしたけど、気にしない方がいい気がする。
何だか変に反応してしまったら悪い事が起きる気がするし、そういう時の勘は大抵当たるものだ。
だから返事をしないで狼達に指示を出すと、急いでソフィアとダリアと合流しようとすると、ミオラームとのやり取りをしている間に戦闘が始まっていたみたいで、魔術で生みだされた樹や氷が、二人に向かって襲い掛かっていた。
けど……途中でソフィアが生み出した霧に阻まれて溶け落ちてしまって、攻撃が届いていないようで……

「レースさん、あっちでミオラーム様と一緒に戦うんじゃなかったんですか?」
「いや、あっちは能力で生みだした狼に任せたら大丈夫そうだから、こっちに来た方がいいかなって」
「あー、確かに父さんよりも強いからなぁ……、じゃあ俺と父さんは二代目の覇王えっと、なんだっけ?」
「レティシアーナ・クー・ストラフィリアだね、でも改めて見ると変な感じがする、実父の前王ヴォルフガング・ストラフィリアはミドルネームが無かったのに、どうして昔の覇王にはあるんだろう」
「……レースさん、今そこ気にするところですか?、気になるのでしたら今度教えますから、今は戦う事に集中してください!」

 確かにソフィアの言う通りだ。
今は戦う事に集中した方がいい、空間収納から【不壊】の能力が付与された大剣と長杖を取り出すと、魔導兵器と化したレティシアーナに向かう。

「レースちゃん、私が知ってる限り二代目の覇王は魔術が得意ではない変わりに、近接戦闘を得意としていたから、気を付けるのよ」
「母さん……、助言は嬉しいけど出来れば休んでてほしいかな」
「あら、話すくらいなら疲れないから平気よ、取り合えずレースちゃんとダリアちゃんの成長を見させてもらうわね」

 大剣を鞘から抜いて義肢の左腕に持つ、長杖の先端に雪の塊を纏わせていく。
するとそれに合わせるかのように、レティシアーナの手元に雪で作られた大槌が生成されて行き……

「……え?大剣じゃないの?」
「大剣?あれは、私……使うの嫌い、だって殴った感覚が無い」
「……え!?しゃべ──」
「父さん!あぶねぇ!」

……大槌を構えたレティシアーナが、雪の魔術で床を凍らせてその上を滑るように移動してくる。
まさか魔導兵器が喋るとは思わなくて、驚きの余り動きが止まってしまっているぼくに向かい、勢いをのせた強烈な一撃が飛んでくるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...