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第十章 魔導国学園騒動
50話 異形の化け物
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足音が近づいてくるけど、グロウフェレスの治療に集中しているせいで誰がこっちいに向かって来ているのか分からない。
ロドリゲスだった場合、彼にセイランとキューが捕まったか殺害された可能性がある。
彼はこの国においても指折りの魔術師だから、戦闘力の面においても高水準であることは間違いないと思う。
だけど……戦闘能力においてなら、Sランク冒険者に匹敵する程の力を持つグロウフェレスをここまで一方的に倒せるのかと言われたらそれは難しい筈。
「レイド、あなたその姿は」
「あれが【黎明】マスカレイド?これはあまりにも……」
母さんとソフィアからは、こちらに近づいてくる人物が見えるようで、それぞれが言葉を失ってしまっている。
治療に集中しながらも、状況を確認する為に二人の方を見ると……理解できない何かを見てしまったかのような表情を浮かべており、その場にくぎ付けにされたかのように固まっていた。
「ダリア、ぼくは治療に専念しなくちゃいけないから、マスカレイドの姿が見えない……だから確認して貰ってもいいかな」
「確認して貰ってもって……、あの二人の表情を見る限りどう見ても化け物がそこにいると思うから嫌なんだけど」
「そうかもしれないけど、確認しないと精確な判断が出来ないから……お願い」
「だぁもう……しゃーねぇなぁ!見てやるよ!」
ダリアが大声を上げながら、ぼくの変わりにマスカレイドの様子を変わりに見ようと、グロウフェレスの身体に隠れながら覗き込むような仕草をする。
そして、表情が引き攣ったかと思うと焦ったような表情を浮かべて急いで戻って来て……
「……ダリア、どうだった?」
「化け物どころじゃねぇ!顔はマスカレイドだけど、身体は何て言うか、モンスターと機械がくっ付いたような気持ち悪いもんが歩いて来てやがる!なんだよあれ、ほんとなんなんだよ!気持ちわりぃ!」
「……ちょっと気になるんだけど、治療しながら確認する方法あるかな」
「そこまで言うなら俺の心器の能力で繋いで見せてやるけど、後悔しても知らねぇぞ?」
ダリアが手元に心器の黒い刀身を持つ禍々しい剣を顕現させると、何もない空間を切り裂く。
すると向こう側の景色が映し出されて、そこにあったのは……背中から無数の太い管が背中のいたるところから生えて蒸気のようなものが噴き出し、胸に埋め込まれているのは何かの魔導具だろうか。
以前ミオラームから教わった、マーシェンスの王族のみが知る特殊な言語が凄い速度で左から右に流れている。
それだけならまだ、異常種のモンスターだと判断出来なくはない、けど……ケイスニルが心器で顕現させていたものとそっくりな蠍の尾を下半身に生やし、四肢はマンティコアのものが使われていて、赤い液体のような物が床を接続部から流れ床を汚しながらゆっくりとした足取りで歩いていた。
「……何あれ」
「いや、何あれと言われても俺が知りてぇよ」
「見なければ良かったかも」
「いや……だから、後悔しても知らねぇぞって先に言ったろうが」
「それはそうだけど、ここまで正気を失いそうな化け物にマスカレイドがなってるなんて思わないよ」
思わず治癒術を使う為の集中力が切れてしまったけど、既にある程度は身体の作り直しが終わっているから、後は獣人特有の体力と治癒力の高さで何とかなるだろう。
本来なら失った血液を輸血して補う等、もっとやる事があるけれど……今の状況でそこまで本格的な治療をする余裕は無いと思う。
それ以前に余りにも短期間で多くの血液を失ってしまった以上、治療が終わっても二度と眼が覚めない確率の方が大きい筈だ。
「……ぐ、ぅ」
「……え?」
「わた……しは、生き……ているのですか?」
「おいおい、あの重傷で目を覚ますとかまじかよ」
治療が途中で終わってしまったのもあるけど、本来なら意識を取り戻す事すら奇跡のようなものなのにグロウフェレスの眼がゆっくりと開くと、ぼく達の方を見ると脚を震わせながらゆっくりと立ち上がろうとする。
けど、体力を消耗し過ぎたせいで身体を支える事が出来ないのか、再び倒れてしまう。
「この痛み……どうやら、ここは天国や地獄では無いようですね」
「グロウフェレス、今は動かないで安静にしてた方がいいよ」
「なら……そうさ、せて……いただきま、すがその前に、いい、です……か?」
「いいけどどうしたの?」
「セイラ……んと、キュー、およ……び、どうちゅうで、みつけ……た、生徒は、保護し……がくえ、におくり……」
……言葉の途中でグロウフェレスの意識が再び途切れて静かになる。
それと同時に、マスカレイドの口が大きく開いたかと思うと周囲から白と黒の光を吸い込みながら電流を全身に走らせたかと思うと、背中の管が白く発光して……先ほど見た白い閃光、いや、彼の切り札【カタストロフ】がぼく達を巻き込んでグロウフェレスに止めを差そうと襲い掛かるのだった。
ロドリゲスだった場合、彼にセイランとキューが捕まったか殺害された可能性がある。
彼はこの国においても指折りの魔術師だから、戦闘力の面においても高水準であることは間違いないと思う。
だけど……戦闘能力においてなら、Sランク冒険者に匹敵する程の力を持つグロウフェレスをここまで一方的に倒せるのかと言われたらそれは難しい筈。
「レイド、あなたその姿は」
「あれが【黎明】マスカレイド?これはあまりにも……」
母さんとソフィアからは、こちらに近づいてくる人物が見えるようで、それぞれが言葉を失ってしまっている。
治療に集中しながらも、状況を確認する為に二人の方を見ると……理解できない何かを見てしまったかのような表情を浮かべており、その場にくぎ付けにされたかのように固まっていた。
「ダリア、ぼくは治療に専念しなくちゃいけないから、マスカレイドの姿が見えない……だから確認して貰ってもいいかな」
「確認して貰ってもって……、あの二人の表情を見る限りどう見ても化け物がそこにいると思うから嫌なんだけど」
「そうかもしれないけど、確認しないと精確な判断が出来ないから……お願い」
「だぁもう……しゃーねぇなぁ!見てやるよ!」
ダリアが大声を上げながら、ぼくの変わりにマスカレイドの様子を変わりに見ようと、グロウフェレスの身体に隠れながら覗き込むような仕草をする。
そして、表情が引き攣ったかと思うと焦ったような表情を浮かべて急いで戻って来て……
「……ダリア、どうだった?」
「化け物どころじゃねぇ!顔はマスカレイドだけど、身体は何て言うか、モンスターと機械がくっ付いたような気持ち悪いもんが歩いて来てやがる!なんだよあれ、ほんとなんなんだよ!気持ちわりぃ!」
「……ちょっと気になるんだけど、治療しながら確認する方法あるかな」
「そこまで言うなら俺の心器の能力で繋いで見せてやるけど、後悔しても知らねぇぞ?」
ダリアが手元に心器の黒い刀身を持つ禍々しい剣を顕現させると、何もない空間を切り裂く。
すると向こう側の景色が映し出されて、そこにあったのは……背中から無数の太い管が背中のいたるところから生えて蒸気のようなものが噴き出し、胸に埋め込まれているのは何かの魔導具だろうか。
以前ミオラームから教わった、マーシェンスの王族のみが知る特殊な言語が凄い速度で左から右に流れている。
それだけならまだ、異常種のモンスターだと判断出来なくはない、けど……ケイスニルが心器で顕現させていたものとそっくりな蠍の尾を下半身に生やし、四肢はマンティコアのものが使われていて、赤い液体のような物が床を接続部から流れ床を汚しながらゆっくりとした足取りで歩いていた。
「……何あれ」
「いや、何あれと言われても俺が知りてぇよ」
「見なければ良かったかも」
「いや……だから、後悔しても知らねぇぞって先に言ったろうが」
「それはそうだけど、ここまで正気を失いそうな化け物にマスカレイドがなってるなんて思わないよ」
思わず治癒術を使う為の集中力が切れてしまったけど、既にある程度は身体の作り直しが終わっているから、後は獣人特有の体力と治癒力の高さで何とかなるだろう。
本来なら失った血液を輸血して補う等、もっとやる事があるけれど……今の状況でそこまで本格的な治療をする余裕は無いと思う。
それ以前に余りにも短期間で多くの血液を失ってしまった以上、治療が終わっても二度と眼が覚めない確率の方が大きい筈だ。
「……ぐ、ぅ」
「……え?」
「わた……しは、生き……ているのですか?」
「おいおい、あの重傷で目を覚ますとかまじかよ」
治療が途中で終わってしまったのもあるけど、本来なら意識を取り戻す事すら奇跡のようなものなのにグロウフェレスの眼がゆっくりと開くと、ぼく達の方を見ると脚を震わせながらゆっくりと立ち上がろうとする。
けど、体力を消耗し過ぎたせいで身体を支える事が出来ないのか、再び倒れてしまう。
「この痛み……どうやら、ここは天国や地獄では無いようですね」
「グロウフェレス、今は動かないで安静にしてた方がいいよ」
「なら……そうさ、せて……いただきま、すがその前に、いい、です……か?」
「いいけどどうしたの?」
「セイラ……んと、キュー、およ……び、どうちゅうで、みつけ……た、生徒は、保護し……がくえ、におくり……」
……言葉の途中でグロウフェレスの意識が再び途切れて静かになる。
それと同時に、マスカレイドの口が大きく開いたかと思うと周囲から白と黒の光を吸い込みながら電流を全身に走らせたかと思うと、背中の管が白く発光して……先ほど見た白い閃光、いや、彼の切り札【カタストロフ】がぼく達を巻き込んでグロウフェレスに止めを差そうと襲い掛かるのだった。
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