治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第十一章 盗賊王と機械の国

16話 久しぶりの二人

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 サリアとの話し合いの後、栄花騎士団の最高幹部達が冒険者ギルドに着いたという連絡がカエデの通信端末に届いて皆で移動する事になった。
そして到着したぼく達は、ギルド内でやる事があるからここでいったん別れようというサリアをその場に残し、職員に案内されて会議室へと移動すると……

「久しぶりだね、レース君……元気していたかい?」
「ライさん……お久しぶりです……それに」

 カエデからは今回こちらに協力要請を受けて、マーシェンスに来るのは三人だと聞いていたけど二人しか会議室にいない。
しかも……その中の一人は、ぼくが栄花騎士団と関わりを持つきっかけになった。

「アキさんもお久りぶりです」
「えぇ、本当に久しぶりですね……、話しは常々皆さんから聞いてましたよ?」
「……話しってどういう?」
「まとめると見ていて飽きない人で、戦いになると予測も出来ないような突拍子の無い行動をしだすけれど、面白い印象って感じですね」
「……えっと?」

 用意された椅子に座りながら聞いているけど……見ていて飽きないって急に言われても、正直どういうところでそういう印象を与えたのかが分からない。
突拍子の無い行動をするって言うのは、アキラさんやジラルドからも言われたりはするから自覚はあるけど……、そこまで面白い印象はだろうか。
どちらかと言うと真面目が過ぎて面白くは無いと思う。

「……確かにレースさんは面白い人ですよね、一緒にいて驚かされたり振り回されるような時もありますけど、そのおかげで楽しい事も多いですし」
「カエデもそう思うの?」
「えぇ、そういうところも私は好ましく思ってますよ?」
「え?あぁ……うん」
「……見せつけてくれますね」

 アキが表情を変えずに言葉にすると、本を取り出してページをめくるような動きをしながら黙ってしまう。

「それよりもライさん、確認したい事があるのですけれど良いですか?」
「ん?カエデ姫、どうしたんだい?」
「……ハスさんとシンさんが来る筈だったのに、どうしてアキさんがいるんですか?」
「あぁ……その事か、ハスは今栄花で起きてる問題を解決するのに必要でね、だから事後報告になってしまって申し訳ないけれど、アキに来てもらう事になったんだよ」
「栄花で問題……ですか?」

 隣に座っているカエデが驚いた表情を浮かべると、ぼくの服の袖を力強く握る。

「えぇ、現在栄花付近に……Sランク冒険者【天魔】シャルネ・ヘイルーンの姿が確認されており、我々栄花騎士団最高幹部の判断のもと警戒態勢に入っています」
「……栄花最高幹部のって事は、団長は何をしているんですか?」
「団長キリサキ・ガイは、現状を把握して尚何もする気はないようで……」
「そのせいでシャルネの仲間を逃がしてしまったんだよ」
「私が栄花にいない間にそんな事に……」
 
 そして辛そうにつぶやくと俯いてしまう。
栄花騎士団の副団長としての立場を考えると、責任を感じているのだろうし。
何よりも父親のせいで問題が起きてしまった事に対してショックを受けているのかもしれない。

「……シャルネの仲間って確かアキラさんの?」
「レース君はアキラから聞いているのかい?」
「うん、メイディでライさん達に会う前にアキラさんから、家族がシャルネに協力してるって聞いた程度かな」
「なら詳細を詳しく説明しなくて済むかな、アキラの兄である【盗賊王】シュラ、【石翼】レイス、後は二つ名が無い二名セツナで双子の姉妹セツナ、セスカ、妹の【教皇】ミコトの五人を逃がしてしまったんだ」
「……ですが【教皇】ミコトに関して、アキラさんから私達と協力関係にある事を聞いていますので、何かしらの事情があると思われます」

 とりあえず話の内容は大まかには分かったけど、名前が似てる人物がいた事に関してちょっとだけ気になってしまった。
こんな状況でって言われたらそうなんだけど、名前を呼ばれた時間違えて反応しそうで何とも言えない気持ちになる。
けど今はそんな事を気にしてる状況では無いと思うから、カエデの事もあるしいったん他の方向に話題を切り替えた方がいいだろう。

「……それとハスが栄花に残った理由に何の関係があるの?それに彼に会いに行ったダリアは?」
「ハスは戦闘能力だけなら、俺達最高幹部の中でも上から数えた方が早いからね……もしシャルネが動き出した時に足止めが出来るであろう人員を配置したかったんだ」
「ダリアさんに関しては……その、何て言えばいいのか、多分ですけどお兄ちゃ……いえ、兄の事が心配で残る事を決めたようでして、危ないから私達と一緒にマーシェンスに戻るようにって話をしたのですけれど」
「ダリアは一度言い出したら曲げないところあるから……」
「まぁ、兄も満更ではなさそうなので別に構いませんけど……」

 アキの返答を聞いた後、二人して同時にため息を吐く。
そして目を合わせると……

「……レースさん、あなたも苦労してるんですね」
「アキさんもね」
「ふふ……、兄に幼い婚約者が出来た時はどうなのかと思いましたが、あなたのような方でしたら良き親戚付き合いが出来そうです」
「……ぼくもそう思うよ」

……そうして小さな声で笑い合う。
これで少しだけ雰囲気が和らいだかなと思うと、ぼくの服を強く握りしめているカエデの手を優しく撫でるのだった。
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