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第十一章 盗賊王と機械の国
45話 屋敷の主が来る前に
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轟音と衝撃が室内を襲った後、呆れた顔をしたカーティスがこちらに近づいて頭に手を乗せて来ると……
「……マスカレイドの言っていた事が理解出来た気がするね」
と言葉にしながら、ぼくの身体を確認するかのように触り出す。
そして安心したかのように小さく息を吐くと
「とりあえず怪我が無いようで良かったよ」
「……まぁ、空間魔術を使って自分の身を守ったから大丈夫だよ」
「空間魔術だ何て難しいものを使う事が出来るんだね」
「ぼくの奥さんが得意だから、教えて貰ったんだよ」
厳密には心器の中に一時的に封じられていたダリアの能力で使えるようになったのだけれど……、ここまでできるようになったのはつい最近の事だったりする。
今までは空間収納くらいしか使えるものはなかったけれど、通信端末越しにダートと話している間、通話越しに空間魔術で自身の身を守る方法を教わり反復練習を繰り返したおかげだ。
「……なるほど、それで習得が難しい術を使えるようになったんだね、どうやらレース君は努力家なようだ」
「努力家というよりも、必要だったから覚えただけだよ」
「分かってないね、それが出来るのは本当に一握りの才能を持っている人だけだよ……大抵は、やらなきゃいけない、覚えなきゃいけないと思っていても、誰かがやってくれるだろう、他の出来る人に任せればいい、そんな甘えん坊な考えなって動かないからね」
「……それは分からないでも無いけど、そうやって後回しにしたら困るのは自分だと思うんだけど?」
「皆が皆、それを理解してる訳では無いし、後回しにしたら将来的に困った事になると分かっていてもやってしまうんだよ」
そう言いつつも何処か遠くを見るように眼を細める姿を見て、何て言葉を返せばいいのか分からなくなる。
「……さて、レース君、話すのはこれくらいにして取り合えずここから逃げようと思うのだけれど、どうする?」
「どうするって言われても」
「……いや、何を言ってるんだい?周囲を見てごらんよ、さすがにこれは俺でも屋敷の主に怒られる自身がある」
確かにカーティスの言う通り、この光景を屋敷の主が見たら間違いなく怒るだろう。
いや、怒るだけで済むのだろうか……、衝撃によってひび割れた天井や床に、砕け散った窓ガラス、そして室内に飾られていた絵画などの調度品は高温にさらされたせいで溶けて変形していたり、絵画に至っては変色してしまっている。
「……これ、逃げても見つかったらどっちにしろ怒られるんじゃ?」
「それに関しては大丈夫さ、機人族の皆には俺達がここにいる事を秘密にするようにお願いしているし、そもそも君は今ゼルクラーレと一緒に治癒術の研究をしている事になってるからね」
「……それってまさか」
「まさかも何も、俺達がここにいる事がバレたら、どうなるか分かるよね?怒られるどころか、下手したら首が飛ぶかもしれないよ」
「……最悪だ」
彼の話が本当だったなら、ここにいない筈の人がマリーヴェイパーの本体が封じられている部屋で暴れているわけで、見つかってしまったら首が飛ぶどころでは済まない可能性がある。
「という事で、俺の言いたい事は分かってくれたと思うから……今から一緒に逃げようか」
「事情は分かったけど、どうやって逃げるつもりなの?扉から出るわけにもいかないだろうし」
「だから、窓から飛び降りるんだよ……大丈夫、死にはしないさ、それに怪我をしたらレース君が治してくれるだろうしね」
「……何か凄い無茶な事を言われた気がするけど、確かに扉を使わないでここから出るには、それしかないよね」
「ふふ、物分かりが良くて助かるよ」
返事を聞いたカーティスが楽しそうに笑顔を浮かべると、割れた窓ガラスから外へと飛び出す。
それに続いてぼくも飛び降りると同時に、扉が勢いよく開いた音がして。
「……な、なんだこれは!マリーヴェイパー様の本体は無事なのか!?誰か、誰か来てくれ!」
という声が頭上を通り過ぎていくのを聞いて、少しだけ申し訳ない気持ちになるけれど、今は逃げる事を優先して、何時か謝罪をする機会があったらしっかりと謝ろうと考えながら地面に着地する。
「……カーティス、今の声」
「あぁ、まぁ……間一髪だったね」
「ちょっと、いや……かなり申し訳ない気持ちになるんだけど?」
「こればっかりはしょうがないと割り切るしかないさ」
笑顔を浮かべながらそう言葉にするカーティスを見て、何て無責任な事を言っているのだろうかと飽きれそうになるけれど、何ていうかもう、この人はこういう人なんだなって割り切ってしまった方がいい気がした。
「……何か残念な人を見るような顔をしているけれど、そういうのは出来れば表に出さないようにした方がいいんじゃないかな」
「こればっかりは幾ら直そうとしても直らなかったから諦めてるよ」
「……そっか、ならしょうがないね」
……そんなやり取りをしながら、カーティスに連れられて屋敷の裏口に向かうとそこにいた機人族に案内されて中に入る。
そして暫く廊下を二人で歩くと、途中で『じゃあ、俺は何も知らない振りして屋敷の主人と会って来るから、君はゼルクラーレの事を頼むよ』とまるで玩具で遊ぶ子供のような笑みを浮かべ、小走りに去って行くのだった。
「……マスカレイドの言っていた事が理解出来た気がするね」
と言葉にしながら、ぼくの身体を確認するかのように触り出す。
そして安心したかのように小さく息を吐くと
「とりあえず怪我が無いようで良かったよ」
「……まぁ、空間魔術を使って自分の身を守ったから大丈夫だよ」
「空間魔術だ何て難しいものを使う事が出来るんだね」
「ぼくの奥さんが得意だから、教えて貰ったんだよ」
厳密には心器の中に一時的に封じられていたダリアの能力で使えるようになったのだけれど……、ここまでできるようになったのはつい最近の事だったりする。
今までは空間収納くらいしか使えるものはなかったけれど、通信端末越しにダートと話している間、通話越しに空間魔術で自身の身を守る方法を教わり反復練習を繰り返したおかげだ。
「……なるほど、それで習得が難しい術を使えるようになったんだね、どうやらレース君は努力家なようだ」
「努力家というよりも、必要だったから覚えただけだよ」
「分かってないね、それが出来るのは本当に一握りの才能を持っている人だけだよ……大抵は、やらなきゃいけない、覚えなきゃいけないと思っていても、誰かがやってくれるだろう、他の出来る人に任せればいい、そんな甘えん坊な考えなって動かないからね」
「……それは分からないでも無いけど、そうやって後回しにしたら困るのは自分だと思うんだけど?」
「皆が皆、それを理解してる訳では無いし、後回しにしたら将来的に困った事になると分かっていてもやってしまうんだよ」
そう言いつつも何処か遠くを見るように眼を細める姿を見て、何て言葉を返せばいいのか分からなくなる。
「……さて、レース君、話すのはこれくらいにして取り合えずここから逃げようと思うのだけれど、どうする?」
「どうするって言われても」
「……いや、何を言ってるんだい?周囲を見てごらんよ、さすがにこれは俺でも屋敷の主に怒られる自身がある」
確かにカーティスの言う通り、この光景を屋敷の主が見たら間違いなく怒るだろう。
いや、怒るだけで済むのだろうか……、衝撃によってひび割れた天井や床に、砕け散った窓ガラス、そして室内に飾られていた絵画などの調度品は高温にさらされたせいで溶けて変形していたり、絵画に至っては変色してしまっている。
「……これ、逃げても見つかったらどっちにしろ怒られるんじゃ?」
「それに関しては大丈夫さ、機人族の皆には俺達がここにいる事を秘密にするようにお願いしているし、そもそも君は今ゼルクラーレと一緒に治癒術の研究をしている事になってるからね」
「……それってまさか」
「まさかも何も、俺達がここにいる事がバレたら、どうなるか分かるよね?怒られるどころか、下手したら首が飛ぶかもしれないよ」
「……最悪だ」
彼の話が本当だったなら、ここにいない筈の人がマリーヴェイパーの本体が封じられている部屋で暴れているわけで、見つかってしまったら首が飛ぶどころでは済まない可能性がある。
「という事で、俺の言いたい事は分かってくれたと思うから……今から一緒に逃げようか」
「事情は分かったけど、どうやって逃げるつもりなの?扉から出るわけにもいかないだろうし」
「だから、窓から飛び降りるんだよ……大丈夫、死にはしないさ、それに怪我をしたらレース君が治してくれるだろうしね」
「……何か凄い無茶な事を言われた気がするけど、確かに扉を使わないでここから出るには、それしかないよね」
「ふふ、物分かりが良くて助かるよ」
返事を聞いたカーティスが楽しそうに笑顔を浮かべると、割れた窓ガラスから外へと飛び出す。
それに続いてぼくも飛び降りると同時に、扉が勢いよく開いた音がして。
「……な、なんだこれは!マリーヴェイパー様の本体は無事なのか!?誰か、誰か来てくれ!」
という声が頭上を通り過ぎていくのを聞いて、少しだけ申し訳ない気持ちになるけれど、今は逃げる事を優先して、何時か謝罪をする機会があったらしっかりと謝ろうと考えながら地面に着地する。
「……カーティス、今の声」
「あぁ、まぁ……間一髪だったね」
「ちょっと、いや……かなり申し訳ない気持ちになるんだけど?」
「こればっかりはしょうがないと割り切るしかないさ」
笑顔を浮かべながらそう言葉にするカーティスを見て、何て無責任な事を言っているのだろうかと飽きれそうになるけれど、何ていうかもう、この人はこういう人なんだなって割り切ってしまった方がいい気がした。
「……何か残念な人を見るような顔をしているけれど、そういうのは出来れば表に出さないようにした方がいいんじゃないかな」
「こればっかりは幾ら直そうとしても直らなかったから諦めてるよ」
「……そっか、ならしょうがないね」
……そんなやり取りをしながら、カーティスに連れられて屋敷の裏口に向かうとそこにいた機人族に案内されて中に入る。
そして暫く廊下を二人で歩くと、途中で『じゃあ、俺は何も知らない振りして屋敷の主人と会って来るから、君はゼルクラーレの事を頼むよ』とまるで玩具で遊ぶ子供のような笑みを浮かべ、小走りに去って行くのだった。
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