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第十一章 盗賊王と機械の国
47話 神器顕現
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ついて来てと言われて、何処に行くのかと思ったら
『取り合えず、これからどうすればいいのか一度考えてみるから、今日は解散で』
という流れになり、次の日になったのはいいのだけれど、何だかカーティスの様子がおかしい。
戦闘訓練の時間だというのに、動きは今までとは違いまるで手を抜いてるかのように甘いし、ぼくでも対応できる動きばかりだ。
「……カーティス、もしかして調子が悪かったりする?」
「いや、調子が悪い訳じゃなくて、色々と忙しいだけだよ」
「それなら、今日の訓練はこれくらいでいいんじゃないかな、無理をしない方が……」
「いや、後少しで君の心器の最後の能力が発顕しそうなんだから、俺が付き合ってあげないとね」
カーティスの言うように、実父でありストラフィリアの前覇王ヴォルフガング・ストラフィリアから受け継いだ心器の大剣【スノーフレーク】、その最後の能力が発顕しそうになっている。
けれど、その条件が自分では分かってはいるのだけれど、難しいというか……。
「……正直、レース君のその能力を現状受け止める事が出来るのは、俺くらいだからね、気安値なくドーンっとぶつかっておいでよ」
「ぶつけるのは良いけど、この部屋でそんな事をしたら危ないんじゃないかな」
「それに関しては大丈夫だよ、屋敷の主から許可を得ているからね」
許可を得ているとはいえ、この能力は【ディザスティア】と【セラフナハシュ】、ぼくの中に封じられている神の力を使う事になる。
だから【マリーヴェイパー】の本体を封じている水槽が壊れてしまう可能性があるわけで、そうなってしまった場合、再び活動を再開してしまう可能性があるわけで……。
「……能力の効果は説明したよね?」
「勿論理解はしているよ、けどね……君がこれから先戦う事になる相手は、シャルネや六大天使の五人も含め、本物の神や天族を生み出した神から直接力を分けられた特別な存在達だよ?マリーヴェイパーの封印を解くくらいの事が出来なくてどうするんだい?」
「もし封印を解いて、ミオラームと接触する事があったらどうするの?彼女の中にはマリーヴェイパーの精神と力が封じられているから、完全に蘇ってしまうんじゃ?」
「……蘇る分には結構、むしろこの世界からしたら都合がいいと俺は考えてるよ」
そう言葉にするカーティスは何処か、ここでは無い何処かを見ているかのようで……。
「それってどういう?」
「俺の知る彼女は、かつてこの世界を支配した神の中でも幾分か物分かりが良いからね、対価さえ払えば味方になってくれるはずだよ」
「対価って……蘇らせたらミオラームが死んでしまうかもしれないのに?」
「……今はまで言えないけれど、その事に関しては勿論ちゃんと考えているし、サリアに全部伝えてあるから大丈夫さ」
「……何故サリアに?」
考えているのなら、それがどういうことかしっかりと説明してくれたらいいのにとは思うけど、どうして教えてくれないのだろうか。
「それはまぁ、俺が居なくなったら彼女が死絶傭兵団の新しい団長だからね、何かあった時の為に情報は伝えておかないといけないのさ」
「それは分かるけど、何て言うかまるで──」
「遺言みたい……かい?」
「うん、まるで自分が死ぬ事を理解しているように聞こえて、何か落ち着かないというか……」
「……ふふ、まだ死ぬ予定はないさ」
そうは言うけれど、徐々に顔色が悪くなって行っている気がする。
最初は血が通った肌の色をしていたのに、今は土気色をした死体のようになっていて今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
「さて、お話はこれくらいにして、訓練を再開しようか」
「……本当に大丈夫なの?」
「大丈夫さ、逆に今の俺は絶好調なくらいさ……ほら、使ってごらん?君の能力を君がどうなりたいのか、さぁいまここで」
「……分かった、そこまで言うのならやるよ、でも後悔はしないでね?」
「後悔なんて、遥か昔に何度も、何度も繰り返したさ、だから大丈夫……やりたいようにすればいい」
神の力をこの身に宿して、どうなりたいのか、それは簡単だ。
大切な人達を守れるような力が欲しい、ダートやカエデ、それに友人達に産まれてくる子供を守れるように、ヴォルフガングが最期に見せた誇り高い姿とまではいかない。
育ての母のカルディア、父であるマスカレイドのように強大な力はいらない。
けど、ぼくが見て来たこの世界は暖かいけれど同じ位に残酷で……だから、抑止力となる能力があれば、犠牲が少なくて済む筈だ。
そんな思いから生まれつつあるこの能力を使ったらどうなってしまうのか分からない。
けれど……カーティスが大丈夫だと言うのなら、後悔をしないというのなら躊躇う事無く使おう。
「……【神器顕現:ディザスティア】、【神器顕現:セラフナハシュ】!」
……手元に顕現させた二つの心器が溶けるかのように形を失う。
そして徐々に黒く脈動する禍々しい大剣に、二匹の蛇が絡みついた神々しい長杖に姿を変えると、意識を強く保たなければ自身の存在が侵食されなくなり、肉体が崩れて消えてしまいそうな程の苦痛に襲われる。
けど、治癒術師であるぼくなら耐えられる筈……肉体の苦痛は治癒術で治し、意識の浸食は思いの力で乗り越えればいい。
そして二柱の神の力を心器に宿し、人では制御すら難しい力を手にしたぼくはカーティスに向かって走り出すのだった。
『取り合えず、これからどうすればいいのか一度考えてみるから、今日は解散で』
という流れになり、次の日になったのはいいのだけれど、何だかカーティスの様子がおかしい。
戦闘訓練の時間だというのに、動きは今までとは違いまるで手を抜いてるかのように甘いし、ぼくでも対応できる動きばかりだ。
「……カーティス、もしかして調子が悪かったりする?」
「いや、調子が悪い訳じゃなくて、色々と忙しいだけだよ」
「それなら、今日の訓練はこれくらいでいいんじゃないかな、無理をしない方が……」
「いや、後少しで君の心器の最後の能力が発顕しそうなんだから、俺が付き合ってあげないとね」
カーティスの言うように、実父でありストラフィリアの前覇王ヴォルフガング・ストラフィリアから受け継いだ心器の大剣【スノーフレーク】、その最後の能力が発顕しそうになっている。
けれど、その条件が自分では分かってはいるのだけれど、難しいというか……。
「……正直、レース君のその能力を現状受け止める事が出来るのは、俺くらいだからね、気安値なくドーンっとぶつかっておいでよ」
「ぶつけるのは良いけど、この部屋でそんな事をしたら危ないんじゃないかな」
「それに関しては大丈夫だよ、屋敷の主から許可を得ているからね」
許可を得ているとはいえ、この能力は【ディザスティア】と【セラフナハシュ】、ぼくの中に封じられている神の力を使う事になる。
だから【マリーヴェイパー】の本体を封じている水槽が壊れてしまう可能性があるわけで、そうなってしまった場合、再び活動を再開してしまう可能性があるわけで……。
「……能力の効果は説明したよね?」
「勿論理解はしているよ、けどね……君がこれから先戦う事になる相手は、シャルネや六大天使の五人も含め、本物の神や天族を生み出した神から直接力を分けられた特別な存在達だよ?マリーヴェイパーの封印を解くくらいの事が出来なくてどうするんだい?」
「もし封印を解いて、ミオラームと接触する事があったらどうするの?彼女の中にはマリーヴェイパーの精神と力が封じられているから、完全に蘇ってしまうんじゃ?」
「……蘇る分には結構、むしろこの世界からしたら都合がいいと俺は考えてるよ」
そう言葉にするカーティスは何処か、ここでは無い何処かを見ているかのようで……。
「それってどういう?」
「俺の知る彼女は、かつてこの世界を支配した神の中でも幾分か物分かりが良いからね、対価さえ払えば味方になってくれるはずだよ」
「対価って……蘇らせたらミオラームが死んでしまうかもしれないのに?」
「……今はまで言えないけれど、その事に関しては勿論ちゃんと考えているし、サリアに全部伝えてあるから大丈夫さ」
「……何故サリアに?」
考えているのなら、それがどういうことかしっかりと説明してくれたらいいのにとは思うけど、どうして教えてくれないのだろうか。
「それはまぁ、俺が居なくなったら彼女が死絶傭兵団の新しい団長だからね、何かあった時の為に情報は伝えておかないといけないのさ」
「それは分かるけど、何て言うかまるで──」
「遺言みたい……かい?」
「うん、まるで自分が死ぬ事を理解しているように聞こえて、何か落ち着かないというか……」
「……ふふ、まだ死ぬ予定はないさ」
そうは言うけれど、徐々に顔色が悪くなって行っている気がする。
最初は血が通った肌の色をしていたのに、今は土気色をした死体のようになっていて今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
「さて、お話はこれくらいにして、訓練を再開しようか」
「……本当に大丈夫なの?」
「大丈夫さ、逆に今の俺は絶好調なくらいさ……ほら、使ってごらん?君の能力を君がどうなりたいのか、さぁいまここで」
「……分かった、そこまで言うのならやるよ、でも後悔はしないでね?」
「後悔なんて、遥か昔に何度も、何度も繰り返したさ、だから大丈夫……やりたいようにすればいい」
神の力をこの身に宿して、どうなりたいのか、それは簡単だ。
大切な人達を守れるような力が欲しい、ダートやカエデ、それに友人達に産まれてくる子供を守れるように、ヴォルフガングが最期に見せた誇り高い姿とまではいかない。
育ての母のカルディア、父であるマスカレイドのように強大な力はいらない。
けど、ぼくが見て来たこの世界は暖かいけれど同じ位に残酷で……だから、抑止力となる能力があれば、犠牲が少なくて済む筈だ。
そんな思いから生まれつつあるこの能力を使ったらどうなってしまうのか分からない。
けれど……カーティスが大丈夫だと言うのなら、後悔をしないというのなら躊躇う事無く使おう。
「……【神器顕現:ディザスティア】、【神器顕現:セラフナハシュ】!」
……手元に顕現させた二つの心器が溶けるかのように形を失う。
そして徐々に黒く脈動する禍々しい大剣に、二匹の蛇が絡みついた神々しい長杖に姿を変えると、意識を強く保たなければ自身の存在が侵食されなくなり、肉体が崩れて消えてしまいそうな程の苦痛に襲われる。
けど、治癒術師であるぼくなら耐えられる筈……肉体の苦痛は治癒術で治し、意識の浸食は思いの力で乗り越えればいい。
そして二柱の神の力を心器に宿し、人では制御すら難しい力を手にしたぼくはカーティスに向かって走り出すのだった。
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