治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第十一章 盗賊王と機械の国

51話 賢神とイチゴウ

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 安全を保障して欲しいと言われても、ぼく達ではそれに対して答えを出す事が出来ない。
これはどうするべきか悩んでいると、屋敷の主の指示で様子を見に来たのか数人の機人族が部屋に入って来る。
そしてゆっくりと顔を動かしながら現状を確認すると、意識の無いフィリアとミオラームを抱き上げて二人が何処かへと行ってしまう。

「……マリーヴェイパー様のお目覚め、心よりお祝い申し上げます」
「あら、君は確か……何号ちゃんだっけ?」
「製造ナンバー1番でございます」
「あぁ、1番ね……確か、蒸気機関を使って馬を使わなくても走る事が出来る、無人馬車を作り出して、マリーに気に入られた結果、一番初めの機人になった子?」
「それで合っております、ですが無人馬車ではなく蒸気自動車でございます」

 いきなり二人で話を始められても反応に困る。
サリアもこっちを見て、何とかしてくれと言いそうな表情をしているけれど……そんな顔をされても、出来るような事は特にない。
とはいえ……一応、栄花騎士団と死絶傭兵団という異なる二つの組織をまとめる立場であり、北の大国【ストラフィリア】から元ストラフィリアの第一王子レースという立場の元、捜査官として派遣されている身だ。
ここで何もしないというのは良くないだろう。

「……えっと、マリーヴェイパーと機人族のイチゴウさん、ここで話すのは良いんだけど、イチゴウさんは屋敷の主人に言われてここに来たんじゃないの?」
「えぇ、その認識で問題ございません、封印の間にて何が起きたのか確認し、カーティス様が予め仰っていたように、【賢神】マリーヴェイパー様が眼を覚ましておりましたら、その場にいる者と共に我らが偉大なる神を主人の元に連れてくるようにと申しつけられております」
「あら、それでしたら早くいかないといけませんわね、ほらレース君に……虹色の髪のサリア君、行きますわよ?」
「……行くのは別にいいけど、イチゴウさん、その前にフィリアとミオラームが何処に運ばれたのか教えて貰ってもいいかな」
「……それでしたら、ゼルクラーレ様が滞在しておられる処置室の方に運ばせて頂きました、彼女に任せておけば問題は無いと思考の共有ストレージにて判断致しましたのでご安心ください」

 思考の共有ストレージが何かは分からないけれど、確かにクラーレに任せれば問題ないだろう。
同じ治癒術師として、彼女の研究して来た吸血鬼の血液を媒介にした技術は目を見張るものがある。
最初こそ否定してしまったけれど、共に研究をする中で学ぶ事や、ぼくなりの改良案が浮かぶ事があった。
これは仮定であって実際に出来るとは限らないけれど、過去に禁術指定された肉体の損傷を再生する事が出来る術と組み合わせる事が出来れば、寿命を削る事無く再生する事が出来るかもしれない。

「……ゼルクラーレの姉さんのところなら問題無いですね、それなら安心してコルネリアス閣下のところに行けますね」
「コルネリアス?」
「んー、この屋敷の主人のお名前ですね、何とその人は栄花騎士団最高幹部のシンさんの実の父親なんですよ!……まぁ、その事に関しては道中でお話しましょうかって事でイチゴウさん、案内の方よろしくお願いします」
「承知いたしました……マリーヴェイパー様、お待たせしてしまい申し訳ございません、これより移動を開始致します」
「マリーは優しいから、あなた達のやり取りくらい待てますわよ?ほら、案内をするって言うのならマリーを抱き上げなさい、それともこのマリーに歩かせるつもり?」

 歩かせるつもりも何も、マリーヴェイパーが目を覚ましてからずっと自分の脚で立ってないのに何を言っているのか。
陶器のように透き通った足を引きずるかのように、膝で立ち上がると抱っこをせがむ様に両腕を広げる。
そんな彼女にイチゴウが近づいて背負うと、部屋を出て歩き出す。

「レースさん、イチゴウさんに着いて行きましょうか」
「え?あぁ……うん」

 先に部屋を出て行ったイチゴウを小走りで追いかけると、マリーヴェイパーの様子がおかしい。
何やら意識が無いように首を後ろにそらして、力なく左右に頭を揺らしている。

「……マリーヴェイパー様は、久しぶりにお身体をお動かしになられたので、充電をしております」
「充電?」
「はい、本来でしたら戦闘義体に搭載されている蒸気タービンによる発電を利用して、演算用義体のエネルギーを確保しておりましたので……例えば戦闘義体で発電した電力から発生する電流を一度電磁波に変換し、その電磁波を受電側に当たる演算用義体に──」
「イチゴウさん、その説明をされても僕やレースさんには理解出来ないから、もっと分かりやすく簡単にして貰っていいですか?」
「……申し訳ございません、専門知識が無い方に説明する術を私は持ち合わせておりません、ですが……そう、ですね、思考共有ストレージから参照致しますと、ミオラーム様の中に封じられている戦闘義体から血液の提供されていたが現在はそれが不可能な為、我々機人族から血液の供給を受けているとお考えください」

……つまり今のマリーヴェイパーは輸血を受けている最中という事だろうか。
それだと何だか、説明の仕方がおかしいような気がするけど、知識の無いぼく達ではあれこれ指摘したところで、本当の意味で素人質問にしかならないから、話がこんがらがり面倒な事になるだけだ。
そう思いながらサリアを見ると、良く分かって無いようでいつもなら飄々した顔をして余裕そうな態度をしているだろう彼女も分から無さそうに頭を振りながらこちらを見て苦笑いを浮かべるのだった。
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