S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず

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1章

決闘に向けて

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『ああ忘れてた。お前らの担任なら昨日王国軍に捕まったってんで来ないぜ』

「入学初日から担任が捕まるなんてどうなってんだ!!」

決闘に参加するメンバーが決まった時点でまだ担任の教師が教室に来ていないことを不審に思ったアレスたちは職員室へと向かったのだが、そこでなんと担任の教師になるはずだった人が王国軍の兵士に捕まっていたことを聞かされていたのだ。
その後代理の教師に教室に来て貰い今後の説明をして貰ったのだが、その後は入学早々自習ということになってしまっていた。

「ハズヴァルド学園は生徒の自主性を重んじて自分たちで学ぶ機会が多いとは聞いてたが、入学してから一発目でこれはないだろ」
「まあまあ。専門科目はそれぞれの教師から教われるからそれまでの辛抱ですよ」
「それに、今の私たちには自習の方がありがたいかもだしね」

アレスたちは決闘に向けた準備をしようと3人で集まり、明後日に潜ることになるホワル大洞窟の地図を学園の図書館から借りてきて眺めていた。
そしてそれに興味を持った他のクラスメイトの大半もアレスたちの周りに集まっている。

「なあ、今更なんだけどよ。なんでダンジョンに潜るのは3人じゃなきゃいけないんだ?」

その時声をあげたのはアレスの背後から決闘の決まりの書かれた用紙を眺めていたクラスメイトの一人であるマグナだった。

「なんでって、ダンジョン攻略規定に則るためって書いてあるだろ」
「いや、おいらそれが分かんなくてよ」
「えっと、実は私もあんまりよく分かってなくて」
「ダンジョン攻略規定。それは国が危険なダンジョンでの犠牲者を減らすために定めた決まりなんですよ」

マグナの質問に続きソシアもその答えを求めると、ジョージがすぐにその問いに対する答えを提示した。

「正確には『特別な資格を有する者でなければダンジョンに潜るためには3名以上の人数でなければならない』ですね」
「1人で挑むのは自分が動けなくなったらその時点でお陀仏だから論外だろ?2人でも動けなくなった一人をもう片方が助けようとすると付きっ切りになっちまって魔物に襲われてる場合とかは助からない」
「流石ですアレスさん。何らかの理由で一人が一時的に戦闘不能になっても、一人がそのカバーに入り、残された一人が魔物の注意を引き付ける。それが可能なのが三人以上って訳なんです」
「へぇ~、なるほどなぁ。でも2人が同時に戦闘不能になったらどうすんだ?」
「それを言い出したら何人いたって同じだろ。10人居ても一気に9人やられたら意味ないし。あくまで最低人数ってだけだ」
「はい。そもそも同時に2人以上やられるなら、それはそのダンジョンに挑む実力が足りていないってことですから。ちなみに3人編成の場合は可能であれば前衛二人に後衛一人の編成が推奨されていますね」
「そうなんだ。二人とも物知りで凄いね!」
「いやぁ。僕は小さい頃から情報を詰め込むが好きで。覚えることだけは得意なんです」

ジョージは地方の街の古い本屋で生まれ育ち、小さい頃からずっと本ばかり読んで育ってきた。
いつしか本だけでなくいろいろな知識を求めるようになり、知識を溜め込むことが何よりも好きになっていたのだ。
ちなみにアレスがこういった知識に詳しいのは王族時代に将来のためと王国軍に関係するような勉強をさせられていたからである。

「っていうか!こういうのは本来担任の教師が教えるものなんだってば!」
「いいだろ!自習ってなってんだから生徒だけで勉強するの」
「俺もこっちの方がいいな!授業は途中で退屈になってわかんなくなるから」

担任の教師の不在でこのクラスはどうなるのかと思われたが、バンドが持ち掛けてきた決闘のおかげでアレスたちは自然と学びを行うことが出来ていたのだ。
専門の教師を必要としない担当教師の基礎授業の内容はジョージが網羅していたことが幸いだった。

「そうですね。時間はたくさんありますから決闘の対策ではなくいろいろ学んでいきましょう」
「えっ?決闘の対策はいいの?」
「対策ったって、大した魔物もいなけりゃ正確な地図まであるおかげで迷うこともないんだ。もうこれ以上話し合うことはないよ」
(……やっぱり妙だよな。あの貴族様がこんなことに気付けないはずが無いし、何か意図があるに違いない)
「それではジョージさん。先ほど三人パーティーの編成は前衛二人に後衛一人が望ましいって言ってましたよね?それについて伺いたいのですが」
「もちろんいいですよ。それじゃあ一番少人数でダンジョン攻略を行う可能性が高い冒険者目線でパーティー編成について語りましょうか。ダンジョン攻略で欠かせない魔物との戦闘。その際で一番重要なのは魔物の攻撃をいなす前衛の存在で……」

再び今回の決闘に対するバンドの意図に疑問を持ったアレスだったのだが、そんなアレスをよそにジョージは他のクラスメイト達からの質問に次々答えていったのだ。

一方、アレスたちがそんな和やかな雰囲気で自習の時間を過ごしていたその時。
人気のない階段の踊り場で問題の貴族であるバンドとアレスの妹であるマリーシャが話をしていた。

「で、アンタ。あんな決闘の条件にして一体何のつもりよ」
「一度だけ注意してやるが、俺の家はお前の家よりも立場が上なんだからな?」
「……それで、バンド様は一体何をお考えなんですか?」
「ふふっ、簡単なことだよ」

バンドに対して敬語を使うことに若干不満そうなマリーシャに、バンドはあの不気味な笑顔で自身の考えを明かしたのだ。

「お前もあの男を殺したいほど憎んでるんだろう?」
「当然ですわ。アイツのせいで私の家は王族から転落することになったんですから」
「そうか。俺もだよ。アレスは俺に対し無礼な態度をとり、そしてあいつのせいで俺様の完璧な経歴に傷がついたんだ!!決闘でただボコすだけじゃ気が済まねえよな!」
「っ!?まさか……」
「ああ。学園内の決闘じゃあいつを殺すことは出来ないけど……魔物がいるダンジョン内ならあいつが行方不明になっても魔物のせいで片づけられるよな?」

バンドはねっとりとした殺意を放ちながら狂気に満ちた笑みを浮かべた。

「メンバーの一員にはお前を選んでやる。一緒にあいつへの恨みを晴らそうぜぇ?」

アレスの知らないところでバンドの黒いたくらみは蠢いていたのだった。
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