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夢歩き
しおりを挟むようこそいらっしゃいました。夢の世界へ。
案内人は私でございます。
名前ですか? 名前などありませんよ。
それでは目の前にある質素な木の扉を開けて中へ入りましょう。
最初の世界は迷路。あなたは何を悩んでるんでしょうね。とにかくお進みください。
・・・おや、おやおや? 出口が分からない? 仕方ありませんね。ズルをしましょうか。
ほーら、上から見たら迷路なんて簡単・・・ふふ、あなたの悩みは随分と深刻なようで・・・。
迷路はこれで終わりです。次の扉を通りましょう。
二つ目の世界は嘔吐。そんなに吐き出したいことがあるんですか。それとも、ただ酔いたいだけ?
吐いてる人が沢山いますね。私も吐いてしまいそう。あなたはどうです? 吐かない・・・そう。
気になることでもありました? ああ、あなたの親ですか。盛大に吐いてますね。
背中をさするのですか。お優しい。吐きたくて吐いてるだけなのに・・・。
気は済んだでしょう。さぁさぁ、次の扉を通りましょう。
三つ目の世界は死体。色々な死体がありますね。これなんてどうです、芸術的なクシ刺し。
……良くない? 私の知る方法なら天にも昇る気分になれるんですがね。
何を探してるんです? 花……ですか。お人好しですね。そういうの、嫌いじゃないです。
どうぞ、花です。この花は何かって? 慈悲の意味を持つ花、とだけ答えておきましょう。
……随分と時間を取りました。お次の扉を通りましょう。
四つ目の世界は団地。よく分からない人たちが住んでいます。えっ、挨拶するの?
ははは、だから言ったでしょう。よく分からない人がいると。追われるなんてツイてないですね。
まだ続けますか。あっ、いい人に出会えましたね。それはあなた自身です。良くない?
何もその場で殺さなくてもいいと思いますがね。まぁ、過ぎたことです。え? 花はいらない?
そう言わずに、サービスですから。では次の扉を通りましょう。
五つ目の世界は電車。ガタンゴトン、ガタンゴトン、イイリズムです。怖いですか?
何処に行こうというのですか? 動く電車に出口なんてありませんよ。
周りにいる影は何かって、電車と言えば目的地に運ぶ乗り物ですしね。推して知るべし。
すぐに降りたいのですか……と言いまして、次の目的地までもう止まりませんよ?
いいから出して、と。わかりました。仕方ないので次の扉を通りましょう。
六つ目の世界は絵画。素晴らしい絵が飾られていますね。この絵なんて傑作だと思いませんか?
……見ないで、ねぇ。まるで見せているかのようなのに、勿体ないじゃないですか。
ふふ、どんなにしたって外れも壊せもしないですよ。それは――痛いですね。
耳も目も塞いだところで、絵は逃げないし動きはしませんよ。
ここにいても仕方がありませんからね。次の扉に通りますか。
七つ目の世界はリアル。いい街並みですね。人が全くいないということを除けば。
あらあら、見つけてしまいましたか。行っていいですよ。確かめたいのでしょう?
あー、見てしまいましたか。そうですよ、これはあなたです。これも殺すのですか……。
いやはや、あなたは随分と面白い。それで両親には花を添えたいと。いいですよ、どうぞ。
花言葉は自由です。ではでは次の扉を通りましょう。
八つ目の世界はお腹。何の、誰のお腹だなんて、言う必要はありますか?
母親ではないですよ。人間かどうかも怪しいですね。え? じゃあ自分は何なのかって?
大丈夫です。あなたは人間です。でなければ、私がいるわけないじゃないですか。
答えを求めても、答えは見つかりはしませんよ。私に問い掛けても、私が答えるわけがない。
ヒントならあげましょう。長い道の先にありますよ。最後の扉を通りましょう。
九つ目の世界は時計。チクタク、チクタク、ゴーンゴーン。回る時計は戻らない。
チッチッチッチッ、ピピピッピピピッ。起きる時間だ急いでね。出口はあちらだ、さぁどうぞ。
私はここに、あなたはあちらへ、悩んでいる時間はございません。気にせず進め、振り向くな。
走って走ってもうすぐさ。回る世界は止まらない。君の明日に祝福を。私の明日に後悔を。
夢の中なら会えますよ。またのご来場、お待ちしております。
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