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二章
演目18 早過ぎる襲撃
しおりを挟むストリートマジックに満足して翌日。
スマホの目覚ましよりも早く起きてしまった俺は、それなりに慣れ始めた女性のトイレを済ませ、冷蔵庫を開けた。
「……あぁ、そういえば無いんだった」
中身はすっからかんだ。
引っ越してすぐは最低限の物しか買っておらず、少し前はマイカとブロンドさんの家に泊まっていて、碌に買い物をしていないせいだ。
今から買い物に行ったとしても、コンビニくらいしか開いていないだろう。
「仕方ない。ダブルドナルドで済ませるか」
シャワーを浴び、髪を整えてから制服を着て身支度完了。
「行って来ます」
誰も居ない部屋に向かって言い、俺は玄関ドアを閉めて鍵を掛ける。魔法で修復したドアノブを優しく動かして鍵が掛かったことを確認し、マンションを出た。
爽やかな朝の中でスマホを取り出して近くのダブルドナルドの位置を確認。通学路からちょっと遠回りする場所にある店に入り、朝ドナルド――略して朝ドナの専用メニューからセットを一つ注文した。
出来上がった物を持ってテーブルに置き、手を合わせる。
「いただきます」
俺が頼んだのは食べ応えのあるダブルマフィン。
甘くない平らなパン生地に合い挽き肉のパティが二枚と、目玉焼きとチーズが挟まっている。野菜が無いのでビタミンと食物繊維的に栄養バランスは少し悪いが、それはセットで頼んだサイドメニューで補える。
そのサイドメニューはスティック野菜。契約した農家から早朝に送られてくる野菜を使用したものであり、付属のマヨネーズで美味しく食べられる。
飲み物は幾つか選べる中から野菜ジュースにした。健康食品会社と提携したもので、普通に美味しい。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
食べ終えて手を合わせて言い、片づけをして店を出る。
通勤を始めた社会人や登校を始めた同じ学校の生徒が歩いており、スマホを確認すれば登校するのに丁度良い時間となっていた。
学校に到着して屋上へ真っ直ぐ向かえば、既にマイカとブロンドさんがいた。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはよう。待っていたよ」
挨拶をすれば挨拶が返され、俺は学生鞄を隅に置いて二人の傍に来た。
「ブロンドさん、今日は何を?」
「昨日言ったけれど、午前中は基礎訓練。午後からは模擬戦をする」
「ん、それでどの基礎から始めるんです?」
「魔力操作からだ」
「なら、これを出そう」
指パッチン。
この前と同じように人数分のマットを出した。
それからブロンドさんがスマホで一時間のタイマーをセットし、三人座って瞑想を始める。
体の内側で魔力を素早く丁寧に循環させ、慣れて来たら速度を速めて量も増やす。
ピピピ、ピピピ、ピピピ……。
タイマーの音が鳴った。目を開ける。
「よし、魔力操作終わり!」
ブロンドさんが告げ、アラームが消される。
「次は探知魔法だ。精度を高めれば、潜んでいるナイトメアを見つけ出すことが出来る」
アラームが十分で再度セットされて始まる。ブロンドさんとマイカの探知の膜が広がり、遅れて俺も探知魔法を使う。
対象をナイトメアだけに絞って薄く広く……んんっ!?
感じ取れたのは、街中に点在する大量のナイトメアの気配。幾つかは纏まっていて夢境が発生しているように思える。
……魔法間違えた?
それとも、絞り込みが甘かったかな?
「あの、ブロンドさん」
「三人とも、緊急事態だ!」
目を開けた俺が聞こうとした瞬間、ココンが焦ったように声を掛けてきた。
それにブロンドさんとマイカはすぐに目を開けた。
「どうしたココン?」
「何かあったの?」
「突如として、街に大量のナイトメアが、同時に発生したんだ!」
「馬鹿な……早過ぎる!」
「でも、警報は鳴って――」
マイカが言おうとした瞬間、遅れてナイトメア発生の警報がそれぞれのスマホから鳴り響いた。
同時に、街中でもナイトメア発生の警報が鳴り始める。
「既にマコトが、発生した夢境の対処に当たっている。引退した魔法少女や周辺エリアの魔法少女にも緊急出動の要請を出した。三人も動いてほしい」
「…………」
「先輩?」
眉間に皺を寄せて黙っているブロンドさんにマイカが声を掛けた。
恐らく突然のナイトメア大量発生に疑問を抱き、罠じゃないかと警戒して悩んでいるのだろう。
俺は新人でどう動けばいいかまだ分からないので、彼女の判断に従うつもりだ。
「ブロンド、もたもたしていたら被害が広がってしまうよ!」
「……待機だ」
その判断に沈黙が流れる。
呆気に取られていたココンは俺の方に向いたので小さく首を振ってやる。マイカにも顔を向けるが、同じく首を横に振られた。
「……そっか。何か考えがあるんだね。君たちの判断を尊重するよ」
「すまないココン。街が一斉に襲われているのに、学校に何も起きないという状況はあまりにも不自然なんだ」
「なるほど。それは確かに不自然だ。でも、こうは考えられないかな? 鉄壁を誇るブロンドがいるからこそ、相手は何も出来ないって」
「買い被り過ぎだ」
「そうかい? 僕は君をとても高く評価してるんだけどね」
「邪魔だと思うくらいに」
ココンが幻のように消え、ショッピングモールで聞いたあの女の声が間近で聞こえた。振り向けば目深くフードを被った漆黒のコートの女――恐らく夢野マホロだろう者が立っていて、ブロンドさんに向けて右手に持つ水の球体を力強くぶつけたところだった。
咄嗟にブロンドさんは変身して黄金の鎧を身に付けたが回避が間に合わず、パァンッ! と弾ける音共に球体から質量以上の水飛沫が散らばり、衝撃によって遥か彼方まで吹っ飛ばされてしまった。
「先輩っ!」
「……」
気付けなかった!
それにマズい、分断された!
「始めようか。出来ればあなたたちは、仲間になってくれると嬉しいな♪」
彼女は余裕綽々そうに言うと自身の体から大量の白い霧を噴出し、姿を消した。辺りは一瞬にして濃霧に包まれ数メートル先も見えなくなる。
同時に、学校全体が変な力に覆われているのを感じ、ナイトメアの気配が複数現れた。
遅れて校舎の中から多くの悲鳴が上がった。
「ネロ、私たちだけで対処するわよ!」
「ああ!」
弱気でいられない。救援なんて待っていられない。
俺とマイカは変身して魔法少女衣装を身に着け、屋上から屋内へと移動した。
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