てんしとおコタ

環流 虹向

文字の大きさ
23 / 25
12/30

20:00

しおりを挟む
「嫌です。」

日向は瑠愛さんに何度頼まれても、僕との撮影に断固拒否する。

瑠愛「お願いだよー…。天ちゃんの腕が1番しっくりくる細さなんだよ…?」

日向「…ムダ毛あるし、…ちょっと傷あるし。」

ムダ毛なんか気にしなくてもいいのに。

その恥ずかしい気持ちって僕に少し好意があるからと思いたいけど、日向は照れる様子もなくとても嫌そうに断り続ける。

日向「…あの、ちょっと2人だけで話してもいいですか?」

と、しまいには日向は僕を部屋から追いだし、暇をしている悠さんの元へ追い払った。

悠「生ハム食べる?」

琥太郎「…ちょっと頂きます。」

僕は全部を拒否された気分になり、今唯一僕を受け入れてくれた悠さんの隣に座って静かな時間を過ごす。

悠「撮影どう?順調?」

琥太郎「ペースはいい方です。」

悠「よかった。せっかく撮ったならコンテストとか出したいもんね。」

琥太郎「まあ…、ウェブとかに流すと親に見つかっちゃうんで。」

悠「琥太くんの親御さんはあんまり応援してくれないんだ?」

と、悠さんはフォークで器用に生ハムを取り、クラッカーと一緒に食べる。

琥太郎「はい…。父親がTV業界で働いてるからかもしれないです…。」

悠「あー…、色々見ちゃってって感じかな。」

琥太郎「多分ですけど…。」

悠「理由は言ってくれないの?」

琥太郎「頭ごなしにダメって言うだけなので…。この間も衣装とPCを喧嘩になった時に壊されたけど謝りもしてくれませんでした。」

悠「ひどいね。PCは直りそう?」

琥太郎「買い替えっぽいんですよね…。データ、全部飛んでました。」

僕がそう正直に話すと悠さんは大きなため息をついて、持っていたフォークを置いた。

悠「自分のやりたいことを押さつけられるといずれ反動で自分のことも傷つけ始めるから、今みたいに内緒でもやりたいと思える限り続けていこうね。」

と、悠さんは少し僕のそばに寄って瑠愛さんがしてくれるように優しく抱きしめてくれた。

悠「親はただ自分を生んだ人なだけだから言うことを聞かなくったっていいよ。琥太くんの人生は琥太くんが思い描くように作ればいいよ。」

琥太郎「…ありがとうございます。」

悠「うん。だから元気出してね。」

悠さんは僕がいつもの調子ではないことを雰囲気で読み取っていたのか、僕を静かに励まして温もりと優しさをくれた。

こういう人が自分の母親としていてくれたらどんなに良かっただろうと僕は悠さんを抱きしめ返しながら考えていると、リビングの扉が開いた。

瑠愛「あー…、浮気だぁ…。」

と、瑠愛さんは僕たちを見て拗ねた顔をしながらオープンキッチンに向かう。

悠「琥太くん、いい匂いだから。」

そう言って悠さんは突然僕の首元に鼻を這わせて匂いを嗅ぐ。

琥太郎「ち、ちょっと…。」

悠「何の匂い?私も同じ石鹸使いたい。」

と、悠さんは匂いで答えを導き始めてくすぐったくて僕が変な声を出しそうになっていると、その隣に鼻をすする日向が座った。

日向「匂いなんてなくないですか?」

悠「あるよ。なんか甘い感じの。」

日向「本当ですか…?」

日向は僕を嫌ってるはずなのにも関わらず、僕の肩に鼻をつける寸前まで近づき匂いを嗅ぎ始める。

僕はそんな状況に耐えきれなくなり、無理矢理離れて冷蔵庫を漁っている瑠愛さんの元へ逃げた。

瑠愛「俺の悠ちゃん奪わないでください。」

琥太郎「そんなつもりないです…。」

瑠愛「分かってるよ。あの2人はマイペースだから気をつけようね。」

と、瑠愛さんは笑いながら僕を片手でハグして背中を軽く叩くとおつまみを渡してくる。

瑠愛「今日は一旦撮影終わり。あのシーンはもうちょっと後で撮ろう?」

琥太郎「え…、あ、はい。わかりました。」

思ってたより、日向は僕を拒否しているみたい。

やっぱり嫌いな奴と手なんか繋ぎたくないよなと思いながら僕は2人から離れたTV前で瑠愛さんと一緒に映画鑑賞をして芝居の勉強をした。


環流 虹向/てんしとおコタ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

処理中です...