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夢を見てないギャンブル王は素直にゲームを楽しみ、個人結果が最下位でもとても幸せそうにあのパイ生地の笑顔をしていた。
それを見た凛太郎さんも、最初は対抗意識満々だったけれど時間が経つにつれて自然な笑顔と自然な『稜にぃ』と言う言葉を出してくれた。
それに満足な私は個人結果1位だったけれど泣きの1回のじゃんけんでわざと後出しして負け、凛太郎さんにお兄さんと一緒に行くためのペアチケットをプレゼントした。
凛太郎「稜にぃと行くからお前らは自分で金払えよ。」
春馬「西宮は3倍の値段で行くことになるね。」
凛太郎「ざまあみろ!稜にぃの隣奪って1位も奪って調子乗ってるからだ!」
…大人げなぁ。
私は年下でも時音とは全く違う人種の凛太郎さんを見て、絶対的に好きにならない人種なんだろうと心の中で確信する。
稜平「一応、この会開いたのは俺だから金は出すよ?」
と、稜平さんがお財布を取りに行こうと立ち上がったのを私と凛太郎さんが咄嗟に掴んだ手で止める。
幸来未「いいの。私が勝手に用意した賞品だから。しかもペアチケットだし、持ち主が行きたい人を決めて2人で行くべきだよ。」
私はそう稜平さんに伝えて、凛太郎さんに目を合わせると凛太郎さんはすぐに私から稜平さんを見上げた。
凛太郎「……稜にぃと行きたい。」
稜平「なんで?ミウちゃんとかに…」
私は別の名前を出し始めた稜平さんの膝裏を強めに小突き、強制的に座らせる。
幸来未「“持ち主”が“一緒に行きたい人”を決めたの。だから絶対だよ。」
春馬「そうだよ。凛太郎が稜平と行きたいと思うなら一緒に行くべきだよ。」
と、春馬くんは私の強引さに少し驚きながらも私の意見を押してくれた。
稜平「まあ…、いいけど。俺、ジェットコースター乗れない。」
凛太郎「…そうなの?」
稜平「胃が浮くのがどうしても無理。凛太郎は乗れる?」
そう自然と話し始めた2人を置いて私は春馬くんと一緒に水につけていたお皿を洗う。
春馬「…これでよかったの?」
と、やっぱり意図が分かっていた春馬くんは私が洗ったお皿を少量の水で流しながら聞いてきた。
幸来未「うん。2人には仲直りしてほしかったから。」
春馬「そっか。じゃああのチケットも?」
幸来未「そう。元からあげるつもりだったよ。」
春馬「じゃんけん後出しはさすがにやり過ぎな気がしたけど、西宮が考えたプランで出来たならよかったよ。」
幸来未「うん。付き合ってくれてありがとう。お皿洗いのこと言われたの?」
彼女が出来たと今日報告してくれた春馬くんに資源の無駄遣いをしなくなった理由を聞いてみる。
春馬「俺、何でもかんでも流しっぱにするから怒られるんだ。だから流しっぱでも少量で済ませるようにしてる。」
幸来未「いい彼女さんだね。私は気づいても言えなかったよ。」
春馬「そんなに酷かった…?」
と、春馬くんは少し不安げにして聞いてきた。
幸来未「うん。シャワー10分以上垂れ流しはちょっと無理。」
春馬「無理って言ってんじゃん。」
私の話に笑ってくれる春馬くんは私よりもしっかり気持ちを伝えられる彼女が出来たみたい。
だから私がこれから1人になろうと、春馬くんと2人だけで会うことは今後ないだろう。
稜平「はあ…、ひと段落だね。」
と、稜平さんは飲み会の片付けを全て終えて達成感を感じているご満悦な笑顔をする。
幸来未「うん。みんな楽しそうでよかった。」
私は自分がずっと使っていたゲストルームに春馬くんと凛太郎さんが寝ているので、今日はおとなしくリビングのソファーで寝ようとブランケットと水を準備していると稜平さんも同じセットを持ってきて私の隣に座った。
稜平「今日の“呑み会”を1番にやりたかったんでしょ。」
と、稜平さんは不服そうな顔で唇を尖らす。
幸来未「当たり。なんでか分かる?」
稜平「分からないけど、凛太郎が俺のことを“兄さん”じゃなくて“稜にぃ”って呼んでたことを思い出させてくれてありがとう。」
そう言って稜平さんは何もない手のひらを握って大きく振ると、手の中に小さな箱を出した。
幸来未「…稜平ってマジシャンなの?」
稜平「元々は魔法使いになりたかった。」
と言って、稜平さんは私の動悸を強める箱をそっと開けて中身を見せた。
稜平「婚約指輪だと思った?」
そう意地悪げに笑う稜平さんの顔を見て私は自分の感情が全て稜平さんに持ってかれてしまっても構わないかもと思ってしまった。
稜平「1週間、楽しかったよ。ありがとう。」
と言って稜平さんは私の口に真っ赤なハートのチョコを入れて、少し目を潤ませながら微笑んだ。
稜平「きっと幸来未はキープくんがいるから俺と結婚しないと思った。そういうことをしないのは悠雪との別れ方で分かってたよ。」
幸来未「…悠雪から聞いたの?」
私は稜平さんのアイデアを忠実にやったとだけ伝えたけれど、真実は筒抜けだったみたい。
稜平「うん。紀莉哉からも春馬からも聞いた。なんで嘘ついたの?」
幸来未「稜平からのアドバイス、ちゃんと最後まで出来なかったから…。」
稜平「俺のアドバイスは嫌われるためのアドバイス。けど、幸来未は嫌われも好きでい続けさせることもさせないことを言って別れたんだから俺より頭いいね。」
そう言って稜平さんは笑うけど、私はどうせなら嫌われて忘れられるくらいでちょうどいいと思ってしまう。
稜平「そういう幸来未が惚れた男のこと知りたいけど、ダメだよね?」
幸来未「…ダメ。言えない。」
稜平「まあそうだよね。俺が悠雪みたいなやつだったら後が怖いしね。」
幸来未「そういうことじゃなくて…」
稜平「俺が幸来未を忘れられない間はあの約束続くから、寂しかったら俺と結婚してね。」
と、稜平さんは温かい声でとても寂しいことを言ってそのままソファーに寝そべって寝始めてしまった。
現実に1人取り残されてしまった私はいつものブログ更新ではなく、次会える日を確実に聞いてそれまでに気持ちを固めることにした。
環流 虹向/23:48
それを見た凛太郎さんも、最初は対抗意識満々だったけれど時間が経つにつれて自然な笑顔と自然な『稜にぃ』と言う言葉を出してくれた。
それに満足な私は個人結果1位だったけれど泣きの1回のじゃんけんでわざと後出しして負け、凛太郎さんにお兄さんと一緒に行くためのペアチケットをプレゼントした。
凛太郎「稜にぃと行くからお前らは自分で金払えよ。」
春馬「西宮は3倍の値段で行くことになるね。」
凛太郎「ざまあみろ!稜にぃの隣奪って1位も奪って調子乗ってるからだ!」
…大人げなぁ。
私は年下でも時音とは全く違う人種の凛太郎さんを見て、絶対的に好きにならない人種なんだろうと心の中で確信する。
稜平「一応、この会開いたのは俺だから金は出すよ?」
と、稜平さんがお財布を取りに行こうと立ち上がったのを私と凛太郎さんが咄嗟に掴んだ手で止める。
幸来未「いいの。私が勝手に用意した賞品だから。しかもペアチケットだし、持ち主が行きたい人を決めて2人で行くべきだよ。」
私はそう稜平さんに伝えて、凛太郎さんに目を合わせると凛太郎さんはすぐに私から稜平さんを見上げた。
凛太郎「……稜にぃと行きたい。」
稜平「なんで?ミウちゃんとかに…」
私は別の名前を出し始めた稜平さんの膝裏を強めに小突き、強制的に座らせる。
幸来未「“持ち主”が“一緒に行きたい人”を決めたの。だから絶対だよ。」
春馬「そうだよ。凛太郎が稜平と行きたいと思うなら一緒に行くべきだよ。」
と、春馬くんは私の強引さに少し驚きながらも私の意見を押してくれた。
稜平「まあ…、いいけど。俺、ジェットコースター乗れない。」
凛太郎「…そうなの?」
稜平「胃が浮くのがどうしても無理。凛太郎は乗れる?」
そう自然と話し始めた2人を置いて私は春馬くんと一緒に水につけていたお皿を洗う。
春馬「…これでよかったの?」
と、やっぱり意図が分かっていた春馬くんは私が洗ったお皿を少量の水で流しながら聞いてきた。
幸来未「うん。2人には仲直りしてほしかったから。」
春馬「そっか。じゃああのチケットも?」
幸来未「そう。元からあげるつもりだったよ。」
春馬「じゃんけん後出しはさすがにやり過ぎな気がしたけど、西宮が考えたプランで出来たならよかったよ。」
幸来未「うん。付き合ってくれてありがとう。お皿洗いのこと言われたの?」
彼女が出来たと今日報告してくれた春馬くんに資源の無駄遣いをしなくなった理由を聞いてみる。
春馬「俺、何でもかんでも流しっぱにするから怒られるんだ。だから流しっぱでも少量で済ませるようにしてる。」
幸来未「いい彼女さんだね。私は気づいても言えなかったよ。」
春馬「そんなに酷かった…?」
と、春馬くんは少し不安げにして聞いてきた。
幸来未「うん。シャワー10分以上垂れ流しはちょっと無理。」
春馬「無理って言ってんじゃん。」
私の話に笑ってくれる春馬くんは私よりもしっかり気持ちを伝えられる彼女が出来たみたい。
だから私がこれから1人になろうと、春馬くんと2人だけで会うことは今後ないだろう。
稜平「はあ…、ひと段落だね。」
と、稜平さんは飲み会の片付けを全て終えて達成感を感じているご満悦な笑顔をする。
幸来未「うん。みんな楽しそうでよかった。」
私は自分がずっと使っていたゲストルームに春馬くんと凛太郎さんが寝ているので、今日はおとなしくリビングのソファーで寝ようとブランケットと水を準備していると稜平さんも同じセットを持ってきて私の隣に座った。
稜平「今日の“呑み会”を1番にやりたかったんでしょ。」
と、稜平さんは不服そうな顔で唇を尖らす。
幸来未「当たり。なんでか分かる?」
稜平「分からないけど、凛太郎が俺のことを“兄さん”じゃなくて“稜にぃ”って呼んでたことを思い出させてくれてありがとう。」
そう言って稜平さんは何もない手のひらを握って大きく振ると、手の中に小さな箱を出した。
幸来未「…稜平ってマジシャンなの?」
稜平「元々は魔法使いになりたかった。」
と言って、稜平さんは私の動悸を強める箱をそっと開けて中身を見せた。
稜平「婚約指輪だと思った?」
そう意地悪げに笑う稜平さんの顔を見て私は自分の感情が全て稜平さんに持ってかれてしまっても構わないかもと思ってしまった。
稜平「1週間、楽しかったよ。ありがとう。」
と言って稜平さんは私の口に真っ赤なハートのチョコを入れて、少し目を潤ませながら微笑んだ。
稜平「きっと幸来未はキープくんがいるから俺と結婚しないと思った。そういうことをしないのは悠雪との別れ方で分かってたよ。」
幸来未「…悠雪から聞いたの?」
私は稜平さんのアイデアを忠実にやったとだけ伝えたけれど、真実は筒抜けだったみたい。
稜平「うん。紀莉哉からも春馬からも聞いた。なんで嘘ついたの?」
幸来未「稜平からのアドバイス、ちゃんと最後まで出来なかったから…。」
稜平「俺のアドバイスは嫌われるためのアドバイス。けど、幸来未は嫌われも好きでい続けさせることもさせないことを言って別れたんだから俺より頭いいね。」
そう言って稜平さんは笑うけど、私はどうせなら嫌われて忘れられるくらいでちょうどいいと思ってしまう。
稜平「そういう幸来未が惚れた男のこと知りたいけど、ダメだよね?」
幸来未「…ダメ。言えない。」
稜平「まあそうだよね。俺が悠雪みたいなやつだったら後が怖いしね。」
幸来未「そういうことじゃなくて…」
稜平「俺が幸来未を忘れられない間はあの約束続くから、寂しかったら俺と結婚してね。」
と、稜平さんは温かい声でとても寂しいことを言ってそのままソファーに寝そべって寝始めてしまった。
現実に1人取り残されてしまった私はいつものブログ更新ではなく、次会える日を確実に聞いてそれまでに気持ちを固めることにした。
環流 虹向/23:48
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