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厳かな雰囲気の中、紅白の垂れ幕と正装した園児たちの姿が眩しい。
「ただいまより、第三十六回、認定こども園にじいろ保育園の卒園式を始めます。まずは園長からのご挨拶を────」
いつも椅子に座る時はふざけたりダラけて猫背になってしまう子も多い中、雰囲気がそうさせているのか皆ピッと背筋が伸びていて本当にかっこいい。
園長先生の話と祝辞、そしてひまわりの担任三人で並んで、園児一人一人の名前を呼ぶ。
皆の名前を噛み締めるように呼ぶと、「はぁい!」という大きな声が帰ってくる。
そのまま呼ばれた園児はステージに上がり、園長先生から卒園証書を受け取った。
交代しながら三人で全員の名前を読み上げると、急に実感が湧いてきて涙がぶわりと溢れてきた。
何度経験しても、この瞬間は慣れない。
隣を見れば他の二人もすでに号泣していて顔を見合わせて笑った。
子どもたちはあんなに凛として頑張っているのに、保育士がこんなんじゃダメだ。
涙を拭ってからグッと顔に力を入れて、笑顔を作った。
式が終わった後、園児たちとの最後のクラス写真を撮影した。
お母さん方にも誘っていただき何枚かフレームインさせていただく。
卒園式が終わっても年度末まではこれからも子どもたちはほとんどが登園するため、結局月曜日からまた会えるのだけれど、やっぱり寂しくてつい泣いてしまった。
お母さん方から涙ながらにこの数年間の感謝を伝えられて、子どもたちから「せんせいありがとう!」と豪華な花束とひまわりの全員がそれぞれ描いてくれた似顔絵を紐で閉じたものをプレゼントされて、嬉しさのあまり堪えきれずに号泣した。
「聞いてないよこんなの~先生嬉しくて泣いちゃう」
「本当、こんなサプライズ嬉しすぎるー」
「皆ありがとう」
三人で園児たちを抱きしめて涙声でお礼を告げる。
『しずくせんせい、ありがとう。だいすきだよ ひまわりぐみのみんなより』
新たな宝物の表紙の文字にまた号泣して、園児とこれを用意してくれたであろうお母さん方に担任三人で深々と頭を下げた。
"あぁ、やっぱり保育士って素敵な仕事だな"
"保育士になって良かったな"
プレゼントを見て、改めて思う。
何度でもそう思うのだから、やはり私にはこの仕事が天職なのだろう。
由紀乃や他の保育士ともたくさん写真を撮り、片付けを職員全員でしてから私たちひまわりの保育士は解散。
三人でミーティングをして一年間の感謝を伝えてから、年度末まで頑張ろうと笑い合った。
この後いつものように由紀乃と飲みに行く約束をしているから、一度袴を脱ぐために再びタクシーで美容室へ向かい、自宅に袴と花束を置きに一度帰った。
泣き腫らした目をメイクで誤魔化して、今日は少し気分を変えてバルへ行く。
ジビエに力を入れているお店で、それに合うお酒も提供してくれるところだ。
「じゃあちょっと早いけど、卒園式と今年度も一年、お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様ー、かんぱーい」
由紀乃とビールジョッキを合わせてグイッと飲む。
感動の涙を流した後のお酒は美味しい。
由紀乃は今日は通常通り登園していた子どもたちの保育をしていたため、卒園式はほとんど見れていないはず。けれどなぜか私が式の途中で泣いていたのを知っていて、ビールが出てくるまで散々からかわれた。
「でも、卒園式って必ず泣いちゃうよね」
「うん。何度経験しても毎回泣いてる。今思い出しても泣ける」
「ははっ、わかる。私も去年の卒園式は号泣したなあ」
「そっか、由紀乃は昨年度はひまわりの担任だったもんね」
「そう。泣きすぎて式終わった後子どもたちに散々心配されてさ。お母さん方にもティッシュ渡されるし恥ずかしかった」
「ははっ、それはやばい」
「でしょー?なんかさ、子どもたちの成長した姿がね、いろんなこと思い出しちゃって泣けるよね」
「そうそう、入園した時はあんな小さくて喋れないし歩けなかったのにーって」
「抱っこするたびに散々泣かれたのに立派になって……!ってね」
「本当、子どもの成長早すぎだし一年があっという間すぎる」
「わかる」
入園した時はまだ喋られない赤ちゃんだった子が、いつしか歩くようになってせんせい!と呼んでくれるようになって、会えばたくさんお話ししてくれるようになって。
せんせいだいすき!なんて言われた日には嬉しすぎて先生も大好きー!なんて言って抱きしめた日もあった。
立派に成長して、最後に花束までくれるなんて。
「ははっ、また泣いてる」
「もうー……見なかったことにして!」
「はいはい、飲もう!」
そう言う由紀乃だって、目がうるうるとしていて今にも泣きそうになっていた。
「ただいまより、第三十六回、認定こども園にじいろ保育園の卒園式を始めます。まずは園長からのご挨拶を────」
いつも椅子に座る時はふざけたりダラけて猫背になってしまう子も多い中、雰囲気がそうさせているのか皆ピッと背筋が伸びていて本当にかっこいい。
園長先生の話と祝辞、そしてひまわりの担任三人で並んで、園児一人一人の名前を呼ぶ。
皆の名前を噛み締めるように呼ぶと、「はぁい!」という大きな声が帰ってくる。
そのまま呼ばれた園児はステージに上がり、園長先生から卒園証書を受け取った。
交代しながら三人で全員の名前を読み上げると、急に実感が湧いてきて涙がぶわりと溢れてきた。
何度経験しても、この瞬間は慣れない。
隣を見れば他の二人もすでに号泣していて顔を見合わせて笑った。
子どもたちはあんなに凛として頑張っているのに、保育士がこんなんじゃダメだ。
涙を拭ってからグッと顔に力を入れて、笑顔を作った。
式が終わった後、園児たちとの最後のクラス写真を撮影した。
お母さん方にも誘っていただき何枚かフレームインさせていただく。
卒園式が終わっても年度末まではこれからも子どもたちはほとんどが登園するため、結局月曜日からまた会えるのだけれど、やっぱり寂しくてつい泣いてしまった。
お母さん方から涙ながらにこの数年間の感謝を伝えられて、子どもたちから「せんせいありがとう!」と豪華な花束とひまわりの全員がそれぞれ描いてくれた似顔絵を紐で閉じたものをプレゼントされて、嬉しさのあまり堪えきれずに号泣した。
「聞いてないよこんなの~先生嬉しくて泣いちゃう」
「本当、こんなサプライズ嬉しすぎるー」
「皆ありがとう」
三人で園児たちを抱きしめて涙声でお礼を告げる。
『しずくせんせい、ありがとう。だいすきだよ ひまわりぐみのみんなより』
新たな宝物の表紙の文字にまた号泣して、園児とこれを用意してくれたであろうお母さん方に担任三人で深々と頭を下げた。
"あぁ、やっぱり保育士って素敵な仕事だな"
"保育士になって良かったな"
プレゼントを見て、改めて思う。
何度でもそう思うのだから、やはり私にはこの仕事が天職なのだろう。
由紀乃や他の保育士ともたくさん写真を撮り、片付けを職員全員でしてから私たちひまわりの保育士は解散。
三人でミーティングをして一年間の感謝を伝えてから、年度末まで頑張ろうと笑い合った。
この後いつものように由紀乃と飲みに行く約束をしているから、一度袴を脱ぐために再びタクシーで美容室へ向かい、自宅に袴と花束を置きに一度帰った。
泣き腫らした目をメイクで誤魔化して、今日は少し気分を変えてバルへ行く。
ジビエに力を入れているお店で、それに合うお酒も提供してくれるところだ。
「じゃあちょっと早いけど、卒園式と今年度も一年、お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様ー、かんぱーい」
由紀乃とビールジョッキを合わせてグイッと飲む。
感動の涙を流した後のお酒は美味しい。
由紀乃は今日は通常通り登園していた子どもたちの保育をしていたため、卒園式はほとんど見れていないはず。けれどなぜか私が式の途中で泣いていたのを知っていて、ビールが出てくるまで散々からかわれた。
「でも、卒園式って必ず泣いちゃうよね」
「うん。何度経験しても毎回泣いてる。今思い出しても泣ける」
「ははっ、わかる。私も去年の卒園式は号泣したなあ」
「そっか、由紀乃は昨年度はひまわりの担任だったもんね」
「そう。泣きすぎて式終わった後子どもたちに散々心配されてさ。お母さん方にもティッシュ渡されるし恥ずかしかった」
「ははっ、それはやばい」
「でしょー?なんかさ、子どもたちの成長した姿がね、いろんなこと思い出しちゃって泣けるよね」
「そうそう、入園した時はあんな小さくて喋れないし歩けなかったのにーって」
「抱っこするたびに散々泣かれたのに立派になって……!ってね」
「本当、子どもの成長早すぎだし一年があっという間すぎる」
「わかる」
入園した時はまだ喋られない赤ちゃんだった子が、いつしか歩くようになってせんせい!と呼んでくれるようになって、会えばたくさんお話ししてくれるようになって。
せんせいだいすき!なんて言われた日には嬉しすぎて先生も大好きー!なんて言って抱きしめた日もあった。
立派に成長して、最後に花束までくれるなんて。
「ははっ、また泣いてる」
「もうー……見なかったことにして!」
「はいはい、飲もう!」
そう言う由紀乃だって、目がうるうるとしていて今にも泣きそうになっていた。
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