フィクションですか?いえ、ノンフィクションです。

みーくん

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漫画のような現実

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「それでは。確かにお預かりいたしました。お疲れ様です。」
「うん。本当に疲れた。もう帰っていい?」
「愛斗君、顔色悪いですよ。ご飯食べてます?」
「うん。これから食べるよ。松永さんありがとうございます。」


 ふぅ~。今日は快晴だな。よしよし。
 俺は青い空が大好きだ。

 十七の時から漫画家になって現在二十歳。三年が経った今は雑誌の連載と単行本あとは短編集に掲載したり、漫画だけで食べていけるようになった。漫画キャラのグッズとかも出ている。

 高校一年生の時に両親を亡くし、一人取り残された寂しさから逃れるため狂ったように漫画を描いていた。その時は別に漫画家になりたかったわけではない。ただ絵が好きで自分の妄想の世界が漫画として形になっていくのが面白かったからだ。特に誰に見せる訳でもなく自己満足の世界で楽しむだけのもの。

 家族仲はとても良好だった。両親もとても愛してくれていたし俺も両親の事が大好きだった。どこにでも在るような幸せな家庭に楽しい毎日。そんな日常は一台の車によって、いとも簡単に壊された。

 兄弟もおらず十六歳になったばかりで独りになった。親戚は皆遠くに住んでいて今まで頻繁に交流があった訳でもない。頑張って入った好きな高校を転校したくないという意思を尊重してくれた父さんのお兄さんが、戸籍上養子には入らなかったが保護者になってくれた。

 それからは、寂しさを紛らわすように漫画を描きまくった。学校から帰ったら宿題を済ませ慣れない家事をして部屋に籠り描きまくった。そうでもしないと静まり返った家の中で孤独に潰されそうだったから。

 でも、ある時ふと思ったんだ。このままでいいのかなって。金銭面では親が残してくれたものや保険金があるから心配はないもののバイトもしてない。マンションもワンルームに引っ越した方が家賃も安い。ゲームを買ったり遊びに行くお小遣いくらいは自分で稼がなくちゃ。それからは両親に恥じない生き方をしたいと思うようになり自分でも驚くほどに前向きになれた。

 そこで、ほんの少しの好奇心で今まで描いた漫画を出版社に送ったんだ。別に漫画家になりたいわけではなかったから切り捨てられても別にいいや。そんな軽い気持ちで。


 その行動が自分の将来を大きく左右するとは知らずに・・・。


 俺も今では立派に漫画家として生計を立てている。

 松永さんは最初から担当についてくれている人で二十七歳の独身男性。メガネを掛けた優しいお兄さん的な存在だが、作品に対しては的確な指摘をしてくれるのでとても頼もしい。

 松永さんと話し合い、当時高校生だった事やその他諸々を考慮して「正体不明の謎の漫画家」という事で売り出した。所謂顔出ししません。表に出ません。イベント開催しません。素性は秘密ですよってやつだ。性別すら隠してある。こんなに人気が出るとは思っていなかったけれど、今となっては正体不明バンザイである。正体不明でミステリアスっていう所も皆の興味を引く一つの要素らしい。
 
 俺はリア充していた。友達もそれなりに居るし遊びに出る事も多い(今は忙しくて行けないけど)。外を出歩くのも自由。誰に会っても自由。それこそAV借りるのも堂々としていられる・・・借りないけどね。注目されるのは窮屈だし、プライベートの時まで漫画家を演じないといけないとなると疲れる。色々と詮索されて両親の事で同情されるかもしれないし騒がれるかもしれない。

 そんな同情はされたくない。だって俺は前向きに生きているんだ。

 大学も行くか迷ったけど、自分で稼がないといけない状況だし予想以上に漫画の人気が出たので学業と両立できる自信がなかったから仕事に集中するため進学は辞めた。

 俺の本名は『蒼井あおい 愛斗まなと

 そして漫画家名は『あお

 理由は単純 「蒼井」だから「蒼」 本当に単純だろ。

 俺は基本的に様々なジャンルの漫画を描いている。冒険・異世界・動物・恋愛。その中でも一番の売れ筋は恋愛漫画で所謂「少女漫画」に分類されるものだ。若者、特に女性に人気があるらしい。

 本当に不思議だ。自分で言うのも可笑しな話なんだけど、俺自身あまり恋愛をしたことがない。もちろん付き合っていた人も二人はいるし、一応は中三で脱童貞はしている。でも何となくしっくりこなくて長くは続かなかった。

 それで気付いちゃったんだ。もしかしたら男の人が好きかも。

 男の人にドキドキしたり友達に彼女が出来ると嫉妬してしまった事もある。その友達の事を恋愛的な意味で好きだったんだと思う。高校の時に一人だけ本当に好きな先輩がいたんだ。でも俺は見る目が無かった。恋は盲目とでもいえばよいのか・・・。

 今は恋人も好きな人もいない。人恋しくなったりもするけどさ。好きな人くらい欲しいなって思うときもあるけど・・・とは思うが!仕事が忙しくて出会いも無くて。

 家族も恋人もいない孤独感は多少あるけど人生には満足しているし楽しんでるつもりだ。自分の境遇を不幸だなんて思ってはいない。好きな事を仕事に出来ているし、周りの人にも恵まれている。家も高校時代に住んでいたワンルームアパートから、セキュリティのしっかりとした良いマンションに住めるくらいにお金も稼げている。これは、担当の松永さんからのお願いでもあった。一応売れてる漫画家だしね。このマンションですれ違う他の住人からは、何でこんな若造がこんなに良い所に住んでるんだ?と思われてると思う。服装も大抵はパーカーにジーパンとかだし。

 因みに、仕事場は別にマンション借りている。仕事とプライベートはきっちり分けたいから。



「はぁ~疲れた。夕飯の買い物して帰らなきゃ。」

 基本的に自炊をする俺は、あまり手間のかかる料理をしたくなくて鍋の材料を買い自宅に帰った。
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