魔女との世界の歩き方

第四章 【アンデットの悲劇】

第十節 【成れの果て】

美しい女性であるというより美しい女性であった、そう言ったほうが正しいのでは無いだろうか。
その顔は窶れ体はやせ細っている、髪はボサボサで着ている外套もボロボロになってしまっていて見ているほうも辛くなってしまうような惨状だ。

「本当にこの子が影の魔女なのか？」

ルーンはにわかには信じたくなかった。
そう思うまでに彼女の姿は痛々しく、それを世界を創造した魔女の一人だと考えることが出来なかったのだ。
それに対してアイリスは冷静に、

「はい、以前の彼女とは程遠くなってしまいましたが一応長年の付き合いでしたからね。彼女は六人の中で一番容姿が幼かったので末っ子的な立場に居ました、なので昔は人懐っこくて可愛い良い子だったんですけど魔力の暴走が悪化していく度心を閉ざしていくようになっていなくなる直前の彼女はもう誰とも話さなくなってしまっていました」

それほど魔力の暴走は酷い物だとルーンは実感してしまった。
アイリスの話の通り彼女の顔には生気が無く無表情だったので、ルーンの第一印象は綺麗な少女ではなく【怖い】という感情のほうが強かったのだろう。

そして、暴走する前は他の五人の魔女に抑えられていた魔力も今では暴走し放題になってしまっている。
アイリスはそんな状態の彼女に対して悲しみを多く抱いていたがそれでも彼女は呼びかけた。

「レイ！聞こえているなら返事をして下さい！」

魔力に完全に支配されてしまっている彼女に声は届かない、その事実はアイリスも理解しているのだがそれを認めることは出来なかった。
アイリスはそれだけ自分の妹みたいな存在である影の魔女のことを大切に思っているのだ。

そしてやはりその言葉は届くはずも無く、影の魔女 レイは攻撃を仕掛けてきた。
いきなりレイの周りが紫に光りだし、近くにあった岩などが空中へと浮いていく。
それをアイリスに向けて打ち出したのだ。

「アイリス危ない！」

岩が近づいてくることに当のアイリスは気づくことが出来ていなかった。
咄嗟にルーンはアイリスを守るために矢を数本放ちその威力で飛んでくる岩を破壊した。

「アイリス、気を抜いちゃだめだよ。六人の魔女の一人だからとはいえ今は暴走している状態なんだから」

「申し訳ありません、でもどうすれば言いのでしょうか」

アイリスの言う通り、現状暴走を止める手段はルーンたちにはない。

「どうすればいいんだ」

ルーンはそう呟くことしか出来なかった。